エンカウント
第十八話 カリビアの弱点
光が収まったとき、私はベッドに横たわっていた。
「……スクーレ!大丈夫か?」
「ヘラ……」
朦朧とする意識の中で、ヘラは心配そうな顔で私の顔を覗き込むのが見えた。そして落ち着いた私は、あの謎の空間であったことをヘラに話した。
「……急に遊んでくれなくなったのはリメルアのせいだったのか……」
「いや、どちらかというとアンタのせいだと思うけど……」
下を向いて反省し始めたヘラを差し置いて、私は他のページも開いてみた。すると『カリビアさんとの修行』と書かれたページがあった。
「なになに?……『今日の修行も武器だった。昨日は剣のテスト、今日は槍の使い方。死神は魔力が多いから魔法が得意なのに武器なんて必要なのかな?もしかしてカリビアさんって魔法が苦手なのかな?あまり見たことないし、接近戦しかできないのかも』……ってこれ、カリビアさんの弱点?」
「え?どれどれ?」
立ち直りが早いヘラは日記を覗き込んだ。すると、何かを思い出したかのように虚空から赤い本を取り出した。
「何それ?」
「『魔王軍の歴史』って本。この前魔王城に行ったとき、ライルさんに『本好きって聞いてるからあげるわ』って言われて貰ったんだ」
「へー……。でもなんでそれ取り出したの?」
「だってカリビアさんは魔王軍だったんだし」
そう言いながらヘラは本を捲り始めた。さすが本好きと言われるだけあって、慣れた手つきだ。
「あった。『カリビア・プルト』……『武器使いの副隊長』?」
「そういえばレインと戦ってたときいろんな武器使ってたわね」
「『カリビアが得意な武器は、剣、槍、斧……いずれも接近戦に用いられる武器ばかりであった。また、彼は戦士族であり、魔力は極めて少ないとされている。現在、彼の消息は不明である。』……って、やっぱりまだ見つかってないんだな。あんなわかりやすいところにいるのに」
接近戦を得意とする相手には魔法が一番効く。ということは魔法を一番使うレインを呼び戻さなければならない。
「魔法ならレインよね」
「ったく、いつもめんどくさいことしてくれるな。あいつは」
「いいじゃない。さ、探しましょ」
「くそぅ」
そうして私たちはレインを探すことになった。しかしどこにいるのか全く検討もついていないが……。
__________
クノリティアの奥にある崖の下の森。そこでレインは特訓をしていた。
「……どうしたらいいんだ……?!あのスピードとパワーを……」
何やらブツブツと考えながら細い方の剣を振るうレインの元に、一人の人影が近づいた。
「誰だ?!」
空いた右手に炎を灯し、警戒する彼に親しげに話しかける声があった。
「そんなに警戒しなくてもいいのに」
「お前は……!」
ソフト帽を被り、灰色の着物を着て現れたのはサーカスで出会ったリストだった。
「どうしてこんなところにいるんだ?まさかつけてきたのか?」
「いや。俺は邪魔をするだけだ」
人魔だというのに純粋な悪魔のオレに怯まないとは。
もう少し聞いてみようじゃないか。
「……何でそんなことをするんだ?」
「前も言っただろ?人間を憎んでいるってことを。……お前にも聞きたい。どうして人間と共に行動している?」
「それは……」
オレは答えに行き詰まった。例えば「殺人鬼としての自分を償わせるため」と答えれば、悪魔なのに?と馬鹿にされるだろう。では、どうすればいいのだろう?
「……昔、人間と一緒にいたから」
オレは思わず口を塞いだ。
昔?誰かといた?誰とだ?
無意識で答えた言葉を訂正しようと必死で頭をフル回転させるが、言葉が出てこない。それどころか、リストはそれを鵜呑みにした。
「……オレも人間だったが、お前から見た人間はどうだったんだ?」
「オレから見た人間……?」
そんなこと、考えたこともなかった。果たして、どうだろうか?違和感が無く、普通に話せる相手とでも言っておこうか?
いや、もっと的確な答えがあるじゃないか。
「オレは人間のことを非力で自分勝手だと思っている」
「……そうか」
「でも!気さくで優しい人たちだとも思える」
欠点があっても必ずどこかに良いところがある。それが人間だとオレは思っている。
「でもオレのような元人間もいるんだぞ?」
「お前は例外だろう?ほら、早くどっか行け」
「行くわけにはいかない」
オレとリストのにらみ合いが始まった。しかしそれはすぐに終わることになる。
「……気づいたか?」
「……人魔でも感知できるんだな」
「「幽霊の力を!」」
オレらは各々の武器を片手に気配を感じた方へ駆け出した。
どうも、グラニュー糖*です!
そろそろ春休みが終わりますね!
終わる前にゲーム三昧しとこ……
では、また!




