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怪奇討伐部Ⅱ  作者: グラニュー糖*
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最後で最強の魔王軍

第十三話 魔王軍



「魔王軍だと?!」


 オレは我が耳を疑った。

 魔王軍は数年前に無くなったはず。全滅したらしいからだ。なのになぜこいつが?まさか生き残りがいたとでもいうのか。こいつが魔王が全力をあげて探し出そうとしたが見つからなかったメンバーなのか?

 もしそうだとしたらあの三班副隊長は凶悪という噂がある。あの笑顔の裏にはどす黒い殺意があるらしい。彼は飴と鞭を巧みに使い分けるらしい。

 下手したら殺される。オレの中で渦巻く純粋な恐怖。死の恐怖。今までコルマーでいろんな人を殺してきたのに、どうして自分が対象になったらこんなに怖いのか。心臓の音がとても大きく聞こえる。オレもスクーレもヘラも殺されてしまうのか。あの凶悪な魔王軍に。そんなことはさせない。


 オレは転がっていた二本の剣を手に取った。


「よく逃げずに剣を取ったな。褒めてやるよ」

「……っ」

「そんな怖い顔しないでくれよ」

「……覚悟はできている。勝負だ、カリビア!」

「あぁ、せいぜい楽しませてくれよ」


 オレたちは同時に走り出した。スクーレとヘラはオレを見て呆然としている。当たり前だ。こんな強敵に一人で立ち向かっているんだから。


 オレは細い剣に氷の魔法を。大剣に炎の魔法を込めた。いつものスタイル。殺人鬼として生きていたときと同じ魔法。呪術師らしからぬ魔法だが、これが一番扱いやすい。

 カリビアはいつの間にか剣に持ち変えていた。マントをはためかせ、こちらに向かってくる。ついに剣を交わえる時が来た。こちらは魔法で強化しているので力負けすることはないと思っていた。しかし魔法で強化していないのに一撃がとても重い。そりゃそうだ。オレでも認めるスクーレのあの強力な斧はカリビアが強化したものらしいからだ。自分の剣はもちろん強化済みというわけだ。そんな剣に魔法なんかかけられてみろ。オレの剣が折れてしまうかもしれない。


「君の心に迷いが見える」

「え?」


 力で勝っていたカリビアが自ら後方へ下がっていった。そして二言目を口にした。


「今のお前じゃオレに勝てない。出直してこい」

「な、なんだと!?」

「ちゃんと気持ちを整理してから再戦しよう」

「チッ、ナメられたもんだな」

「君の安全を考えただけだ。行きなさい、いつでも待ってるから」


 カリビアは優しく微笑んだ。そんなカリビアにオレは指を差して叫んだ。


「……わかった。覚悟しとけよ!ぜってーお前より強くなってやるからな!行くぞ、二人とも!」

「れ、レイン!待ってよ!」


 オレとスクーレが走り去ったあと、ヘラはカリビアの方を向いた。


「……カリビアさん」

「……ヘラくん、彼は……強くなりそうだ」

「そう、ですか」

「ハレティはどこに行ったんだ?」

「霊界に戻りました」

「そう……ま、頑張りなよ」

「はい。ではまた」


 ヘラは一礼をして飛び去った。

 一人残されたカリビアは元の姿に戻り、神殿の奥に祀られているスフィアを見て呟いた。


「これでいいんだよな」



__________



 魔王軍。前魔王が支配していたときにあった組織だ。しかし波のように増減する幽霊、妖怪のせいで壊滅したとされている。その魔王も幽霊、妖怪に倒されたと言われている。

 なぜ増減するのか。それは霊界の王、霊王……つまりハレティにあった。常に結界を張っているといつか疲れてしまう。なので休憩を取る必要があった。その数日間に霊たちが魔界に放出されてしまい、魔王軍が倒さなければならないということだった。


 しかし、長く続いた戦いで疲弊した魔王軍にさらに追い討ちをかけるように幽霊たちが襲いかかってきた。そしてついに魔王軍が幽霊たちによって討伐されてしまったのだという。最後に残ったと言われているのは『第三班』。全六班あるというが、ここまで残れたのは隊長よりしっかり者の副隊長がいたからとされている。


 その副隊長を残し、みんな倒されてしまったのだ。なぜ彼だけが残されたのかは不明。戦いがあった地域の住民から副隊長を見たという情報があったので、次期魔王……ライルが捜索命令を出したが、見つからなかった。



__________



「……って言われてるんだ」


 私たちはクノリティアにある宿でレインによって強制的に泊まらされた。

 レイン似の敵が出てきたり、ヘラと喧嘩したり、ヘッジさんが無事だと聞かされたり、カリビアさんと戦わされたり……。とにかく今日はいろいろあった。

 何と言ってもまさかカリビアさんが魔王軍にいたということが私にとって最大の驚きだ。レインがあの時殺気を剥き出しにしたのもわかる。今日の戦いの時、レインは何を思ったのかはわからない。でもあんなに気圧されていたレインは初めて見た。


「じゃあカリビアさんとハレティは関係があったってこと?」

「そういうことになるな」


 私は首にかけているペンダントを見て呟いた。


__ハレティは今どうしているのだろう?力は戻ったのかな?それともどんどん力を失っているのかな?


 不安になってきたのでペンダントから手を離した。ハレティがいないと何もできない。それどころかヘラと喧嘩してしまった。本来は護るために連れてきたのに。


 チラリとヘラの方を見る。彼は武器の手入れをしていた。


「……何?」

「え、あ、あの……何でもない」

「そ」


 彼はまた武器に向き合ってしまった。

 武器といえばカリビアさんだよね……。でも今は戦うべき相手。試験官のような事をしてくれているだけだが。でも今はヘラと仲直りすることだけを考えないと。私は彼のベッドに腰かけた。


「……ねぇ、ヘラ」

「用が無いんじゃなかったのか?」

「それは……」

「今日は早く寝ろ。特訓するからな」


 ヘラは私の頭に手を置いた。そしてそのままぐしゃぐしゃとかき回した。ちょっと、さっき乾かしたところなのに。


「あー、お熱いこと」

「「レイン!」」

「お、息もピッタリ」


 おどけたあと部屋を出ていくレイン。彼によって二人きりにされてしまった。変な空気になる部屋。この静寂に耐えきれず、私はヘラの武器を見て言った。


「……ヘラの剣ってすごい形ね。まるで鋭い歯みたい」

「これか?ヨジャメーヌって名前なんだ。名前もおかしいだろう?」

「そんなことない」

「?」

「ヘラがいるから安心して戦えるもん」

「……そうか」


 急に下を向いたヘラ。彼の顔は少し赤みを帯びていた。

どうも、グラニュー糖*です!


カリビアかっこいい。

でもこの人年齢不詳なんだよね。

なんでかなぁ。


では、また!

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