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怪奇討伐部Ⅱ  作者: グラニュー糖*
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勇者少女の門出

プロローグ



星暦1308年。第32代目勇者スクーレ神託、出発。

これは勇者スクーレの冒険を記したものである。


大昔、魔界には大勢の人間が暮らしていた。しかし、一匹の魔物が闇から生まれ、人々は為す術も無く殺されていき、その人間の三分の二が魔物に転生してしまった。

そこに現れたのは勇者アルメト。彼女は『ユグドラシル王国』のお姫様だ。その傍らにいるのが執事ハレティ。彼女らは王国に昔から伝わる秘宝で魔物を浄化していった。

ある日彼女らが酒場である『コルマー』に赴いたとき、何者かによってハレティが殺される。その後、悲しみに明け暮れたアルメト姫は名も無き辺境で亡くなった。

……これが初代勇者の伝説だ。


「何を書いているのですか?」

「うわぁ?!」


出発の準備をしているはずの私の相棒、ハレティが声をかけてきた。彼は白い大きなタートルネックに身を包んでいる。幽霊なので足はない。彼曰く、「霊体なので何も要りません」だそうだ。うむむ、騙しやがって……。


「こうやって何でも書いてたら魔物の弱点とかも書くことになるでしょ?習慣付け!これは……『冒険の書』よ!!」

「ウワー、如何ニモ勇者ッポイデスネー」

「片言やめてくれる?!」


私は手帳を白い服のポケットに入れ、白いブーツを履き、黒いギザギザのシュシュで纏めた長いピンクのツインテールを揺らしながら家の外へ出た。


「そういえば私の服って真っ白ね」

「『白百合の騎士』のイメージカラーですからね。その重そうな鎧。その金色は白百合の雄しべと雌しべを表しています。他は花弁です」

「へー……鎧以外は気に入ってるわ」

「鎧を付けとかないと死にますよ」

「む……それぐらい知ってるわよ」


私は不満と共に故郷アメルを旅立った。



__________


第一話 スフィア



「まず、私の力が分散してしまいましたので、スフィアを集めましょう」


ハレティは朝一番こう言ってきた。

これは私の冒険なのにどうしてこいつの力を取り戻しに出掛けなければならないのか。その答えは伝説にあった。


__執事ハレティが亡くなったあと、その地から五つの光が空へ舞った。

白、黄、赤、緑、青の五色だ。

それらはハレティの力が珠になって現れたもので、空へ舞ったのはハレティの体には力が残っていないことを表している。


……ということだ。スクーレのサポートをするためには集めなければならないらしい。運良く霊界には行っておらず、この魔界に留まっているようなのでついでに拾っていくことにした。


「ここから一番近いのは『バノン』です。赤レンガが有名な街です。そこの『ルディビレ』という美術館に展示されているらしいですよ」

「ご丁寧にどうも。で、そこに行けと」

「えぇ」

「嫌と言ったら?」

「そのペンダントに戻って抗えない熱に焼かれてもらいます」

「行きます!!」


ハレティはいつも首から下げているペンダントに自ら封印されに行っている。封印するときと出るときは毎回熱を帯びるが、ハレティの力で少し抑えてもらっているのでいつも最高潮のカイロレベルの温かさになる。


しばらく森を歩いていると赤い街が見えてきた。あれがバノンのようだ。


「さ、まずは情報収集です」

「あれ?さっきだいぶ知ってなかった?」

「旅の基本は情報収集です。行ってらっしゃい」

「え?!行ってらっしゃいって……戻るなー!」


ハレティは言うだけ言って、ペンダントに戻ってしまった。まったく、自由人め。同じ(元)人間とは思えない。

こんな調子で大丈夫なのか?と思いながらも私はバノンへ走っていった。



__________



第二話 鍛冶屋と黄のスフィア



旅を始めて早三日。


やっと隣町であるバノンへ到着した。


私は神託があるまではごく普通の村娘で、あまり村から出なかったので距離感がわからなかったのだ。まさかこんなに遠かったなんて……。


私は赤レンガ製のホテルでチェックインを済ませ、情報収集に向かった。もちろんハレティはペンダントに封印されているため、他人には存在が知られることがない。つまり、一人分の値段でいいわけだ。


「情報収集なんて初めてだからできるかな?」

「ファイトです」


隣に浮いているハレティに向かって呆れた表情を向けた。


「いつの間に出てたの……」

「ペンダントを置いてるときですよ。多分テーブルは焦げてます」

「うわ……」

「成長のためにも一人で行かせましょうか」

「ダメ!今戻ったら熱い」

「……そこで見てますから行ってらっしゃい」

「はーい」


こうして結局私は一人で行動することになった。



「……なー、また壊れた」

「また?見せてごらん」


どこかから話し声が聞こえる。そしてすぐに『カーン!カーン!』と何かを打ち付ける音が聞こえてきた。あの人達に聞いてみよう。


まずは修理を依頼した黒髪のポニーテールの男に聞いてみた。悪魔の中では黒髪は珍しい。人間の私でもピンクなのに。

彼は白い長袖の肘より上の方に茶色のゴムをつけている。首にはロケットペンダントをつけていた。そして黒いローブを腰に巻き、黒の短パンを履いている。靴はスリッポンだ。寒くないのかな。


「あの……」

「ん?どうした、お嬢さん」

「この街に『ルディビレ』という美術館はありませんか?」

「あるけど……どうしたんだ?」

「私、黄のスフィアを探しているんです」

「黄のスフィアだって?!」

「きゃっ?!」


突然、鎌を修理していた男が大声を上げた。彼は黄色いバンダナを首に巻き、頭には青いヘアバンド。なぜかボロボロの白い半袖に黒い短パン。そして青いサンダルを履き、腕には包帯と白黒のバンドを付けていた。この人なら何か知っているかもしれない。


「黄のスフィアは幻影の力が込められているアイテムだ」

「そうですか……」


__ハレティから飛び出した力の塊なんだけど……ま、アイテムか。


「もしよければオレもついてっていいか?」

「へ?」

「美術館に展示されたのは最近なんだ。しかも、展示されてから入るための条件ができてしまって……お願い!」


__お願いしてるのはこっちなんですけど……多い方がいいか。


「で、その条件というのは?」

「……カップル限定ということ」

「は?」


意味がわからなかった。



赤レンガで囲まれた街にひときわ目立つ白い建物……美術館『ルディビレ』。確かに出入りする人はカップルしかいない。しかし、女性一人の客もいた。


「一人でもいいみたいよ」

「いや、見てみろ。オレら二人は男しかいないだろ?だから入れなかった」

「た、確かにあなたたちがカップルとして入るのは大問題ですね」

「いや、一回だけ入ったことあるぞ」

「ヘッジ!!やめて!!」


ここで爆弾発言ですか。先程カリビアと名乗った鍛冶屋の店主は顔を真っ赤にして大慌てしている。冗談じゃなかったんだ……。


「じゃ、女だけで行けるならスクーレ一人で行けるよな?」

「はい。いざとなったら相棒が出てくるようなので……」

「相棒?」

「ハレティです」

「ハレティ……」


急にヘッジの表情が固くなった。な、何か癪に障ること言っちゃった?しかしすぐに笑顔に戻った。


「そう。行ってらっしゃい」


私はハレティと共に美術館に乗り込んだ。……客として。



「え、えっと……」

「お嬢ちゃんが今期の勇者か?」

「は、はい!黄のスフィアを戴きに参りました」

「うーむ……タダでとは言わないぞ」


考え込んでいるこのおじさんは館長のオルディアルさん。見た目からして変な人っぽい……いろんな意味で。


「では、ここで一日働いてもらおう。メイドとして、な」

「……えっ?」


ハレティが言うには、このペンダントで私と意志疎通出来るらしい。ちなみに聞こえるのは私だけだという。

この時、ペンダントから聞こえてきたのは私と同じ感想だった。


__何ふざけたこと言ってるの、このオッサン……。


それはハレティから聞いたことがなかったタメ語だった。

そしてペンダントが熱くなり、ハレティが出てきた。


「オッサン。黙って聞いてりゃ何だ?ここで働けだ?この変態が!こっちは旅をしてんだから、スフィアを貰ったらすぐ違う地方へ向かわないといけないんだ!わかったか!!」


果たしてこれが本当にハレティなのか。あの礼儀正しいハレティがこんなことになるほどこの人が変人だったということで……いっか。

私たちはオルディアルにお礼を言い、展示室を後にした。


「せっかくだし、展示物でも見とく?」

「いいですね!二階は絵画、三階はその他らしいですよ」

「あ、アルメト様の画だ!ハレティも載ってるわよ」


私は一枚の絵に指をさした。


「もう、ちゃんと話は聞いてましたか?」

「聞いてるわよー」


美術館に初めて訪れた少女を見て思わず親心が出てしまったハレティ。

勇者にしなければこんなことは無かっただろう。逆に勇者にしてしまったから危ない目に遭わせてしまうかもしれないという不安あった。



「お、お帰り」


美術館を出ると、ヘッジさんが一人で待っていた。


「あれ?カリビアさんは?」

「帰ってるよ。この時間は客が多いから」

「そうですか……」

『スクーレ。ヘッジさんと話していいですか?』

「……あ、あのっ……」

「何だい?」

「ハレティがあなたとお話がしたいと言っています」


私たちは一旦カリビアさんのお店へ戻り、彼の自室へ案内してもらい、二人は店の裏で話すことになった。

しばらくして戻ってきた二人を見ると、どことなく暗い雰囲気が漂っていた。


「ヘッジさん……?」

「……気にすんな」


気にすんなと言っておきながらも、ヘッジの表情は隠しきれない悲しみに満ち溢れていた。


「ちょっとハレティ、ヘッジさんに何を話したの?」

「何って……霊界に残っている彼の弟の話ですよ」

「霊界?二年前の騒動のこと?」

「えぇ……二年前の、ね」


二年前、幽霊や妖怪がこの魔界に溢れ出した。それを解決しようとした二人の悪魔。彼らは今どこにいるのかわからないが、一人はこの魔界にいるという噂だ。そしてもう一人は行方不明だが、話から考えると霊界にいるようだ。でも、どうして霊界に残ったりなんかしたのだろう。


「訳ありなんですよ。さぁ、次のスフィアを探しに行きましょう」

「もう行くのか?少し休んでいけばいいのに」

「ふふ、早く弟を返してほしくないのですか?」

「ぐ……」


ハレティ……誘拐紛いのことしてるの……恐ろしい人だ。人間が悪魔を誘拐だなんて聞いたことないんだけど。

とにかく、スフィアは一つゲットした。残りは四つ。まだまだ先は長い。

隣町からもうこんな事が起きてしまうなんて……先が思いやられます。

どうも、グラニュー糖*です!

二期が始まりましたね!

一期を読んだ方、驚きました?

なんせハレティが仲間になっているんですからね……!

そして二人の新キャラが増えました。

カリビアとヘッジです。

カリビアは気に入ってるキャラですから、サイドストーリーも二つ用意しています。

ヘッジも一つだけあります。


……そうです。ヘッジの弟とはムジナのことです。

一期の最後の方でちょっと出てましたよね。

ムジナが捕まって二年も経ってたなんて……。


では、また!

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