雨上がりのクリスマス
ポツポツと雨が降っている。
せっかくのクリスマス、天気予報ではホワイトクリスマスだと言っていたのに生憎の天気だ。
融通が効かない雨だと思いながら曇ったガラス越しに空を見る。
「あれ?おかしいな…窓は閉まっているはずなのに。」ポツリ、ポツリと私の瞳から雨が零れ落ちた。
街は私の心を知ることなどなく、キラキラとイルミネーションが輝き、恋人達の幸せな時間を照らしていた。
去年は彼がいたのに、今年はたった一人でこの日を迎えた。
去年はあんなに楽しかったのに、今年はこの夜がとても長く感じる。
恋人達への光はもう私を照らしてはくれない。
「せめてこの心くらい、優しく照らしてくれれば良いのに。」そう言って窓ガラスに写る自分の顔を見た。
零れた水滴も、曇ったガラスは隠してくれていた。
ガラスの先の歪んだ自分の顔を見て、
「変な顔。」と笑った。
去年のこの日、街を歩いた幸せだった少女と同一人物には見えないほどに、私の顔はクシャクシャだった。
どうせ明かりも当たらないし、せっかくこうして空が許してくれるんだ。
今日は泣こう、聖夜に泣こう、私は泣いた、一人で泣いた。
どれくらい泣いたのだろうか?
心の中にあった感情の雨は降りきってしまったようで、私の心を知ってか、空も雨が止んでいた。
恋人達は傘をしまって、空いた手で手を繋ぎあった。
私は流れた涙をしまって、聖夜の街へと足を踏み出した。
晴れた空の月明かりは紛れもなく、私のことも照らしていた。