いつも君を・・・
僕は長い間、彼女と同棲している。
もうすぐ9時。
そろそろかな??
ガチャ
「ただいま〜〜」
「おかえりなさい!!!!」
扉が開いた瞬間に、猛ダッシュで玄関に向かい、思いっきり抱きつきながらお出迎え。
「お〜も〜い〜〜〜〜」
彼女はクスクス笑いながら、頭をぽんぽんとなでてくれる。
これがいつもの習慣。
彼女はきちっと着ていたスーツを着替えて、夕食の準備を始める。
台所にいる間は、リビングでその様子を眺める。
そして、一緒に食事。
たまに、一緒にお風呂に入ったり、抱きしめられながら寝たりもする。
今日は、お風呂あがりの彼女の愚痴を聞いてあげる。
「今時、女子社員はお茶くみなんて、決まりはないよね?」
「―――他の人も、事務を押し付けてくれちゃって!あたしは、雑用係じゃない!!!」
彼女は缶チューハイをグビグビ飲みながら、ヒートアップしていく。
そして、アルコールに弱い彼女は、1缶で深い眠りに落ちていった。
僕は寝室から布団を引き摺ってきて、彼女にかけてあげる。
彼女は内気で、お願いされたら嫌といえないから、自分の仕事をこなしつつ頼まれたこともやっているため、残業になることが多い。
そして、不満をいつも溜め込んでしまい、こうやって家で吐き出すしかないのだ。
「本当に、頑張りすぎだよ・・・」
溜息を吐きながら、同じ布団の中に潜り込む。
「誠司さん。。。」
僕を抱きしめながら、彼女がぽつりと寝言を言う。
これは僕の名前じゃない。
“誠司”とは、彼女の同僚で、内気な彼女のフォローをしてくれたり、他愛もない話をしたりと、彼女を助けてくれる人だ。
彼女はその人物に対して、自然と好意を抱くようになった。
そして最近になって、その人物に告白され、付き合うようになったようだ。
彼女はそのことに触れないが、幸せそうな表情や、会社の話をする時の話し方で分かる。
僕は彼女が大好きだ。
どこにも行くあてもないときに、「一緒に住む?」と言ってくれた。
その優しい表情に一目惚れした。
彼女が嬉しそうな時や会社の辛さから涙を流した時も、ずっと傍にいた。
そんな僕にいつも「ありがとう」と感謝の言葉を言う。
感謝をするのは僕の方だ。
彼女は、可愛くて、素直で、本当にいい人なんだ。
翌朝
6時のいつもの時間に彼女を起こしてあげる。
彼女は「おはよう」と「ありがとう」と僕に言い、朝食を作り、会社に行く準備をした。
7時30分
いつもの時間に彼女は家を出ようとした。
ぼくも出迎える準備をして、玄関まで一緒に来た。
―――ピンポーン
チャイムが鳴り、彼女はドアを開けた。
「朝早くにごめんね。昨日は、会社で部長にひどい扱いをされていたから、心配で・・・」
黒のスーツに白いワイシャツをキッチリと着込んでいる。
髪はムースでまとめられ、真面目そうだ。
顔も目鼻立ちがはっきりしていて、かっこいいという部類に入るだろう。
だからといって、気取っていない。
彼女は、彼の登場で驚いた顔から、穏やかな優しい笑顔になっていった。
どうやら、彼が“誠司さん”らしい。
―――この人なら大丈夫
僕は直感でそう思った。
彼女の笑顔に見惚れていた彼は、ハッとした顔になり、ようやく僕の存在に気づいたようだ。
「ゴールデンレトリバー?なんて名前なんだい??」
「優よ」
「優くんか。よろしくね。」
彼の差し出した手を、甘噛みしたあとに舐め、
「よろしく。彼女を泣かせたら許さないから!」
と意味を込めてワンと吠えた。
意味を理解してくれたかは分からないが、驚いた表情をした後に、笑顔になり、頭をなでられた。
彼女と少し話した後で、二人そろって家を出て行った。
彼女が大好きなことは変わらない。
永遠に結ばれることはないけれど、いつも傍にいるんだ。
この思いを捨てる事はしない。
彼女が心から幸せになることを永遠に祈り続けよう。
読んで頂いてありがとうございます!!
初めての投稿作品です。
実際に書いたのは今年の1月ぐらいですが、少し書き直しました♪
小説を書くこと自体初めてなので、おかしな点も多々あると思いますが、よろしくお願いします(*^^*)