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白く世界で

作者: 片結 あるふ

 灰色に染まった曇天の下、風に乗った純白が頬に溶け、つたう雫が反射する。

 僕を閉じ込めた雫を指でなぞる君は、凍える僕に微笑みかける。

「だいじょうぶだよ」

 何一つ根拠のないその言葉でも僅かばかりに安心を生み、優しいその声が心を温める。

 白く白く続く大地は僕らを飲み込むばかりで、僕はひたすら凍っていくのに、いまだに暖かい君はそうやって僕を溶かそうとする。

「あなたまで凍ってしまったら、わたしは誰をあたためたらいいの?」

 本当はもう僕も手遅れであることを察しているだろう君は、僕に縋るようにそんなことを言う。

 僕だって、君だけをこの世界に残して凍るなんてことはしたくない。

 でも僕も、君とは違って、君以外の誰かたちと同じ。

 もうこの世界は、君だけを助けるために出来上がってしまったんだ。

 

 世界は灰色に染まっている。

 世界は白く白く塗られていく。


 世界が望んだ君は白くなる世界を愛して、世界が拒んだ僕たちは灰色の世界を恨んだ。


 世界は唯一愛してくれる君を望んで、僕たちを白の中に隠した。

 君の記憶まで白くして、世界を愛していることだけを覚えさせた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「僕」を覆い隠してしまう白、美しさと同時に全てを飲み込む支配力を持つ色。色の捉え方がとても興味深いです。自分も白や灰色をモチーフに物語を書いているのですが、感覚的に伝わってくるのがすごいなあ…
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