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キミのタマはボクのモノ 巻の一  作者: しかも・かくの
第一章 錆びた剣と四人の順列組合せについて
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第五回

 顔ががくがくと揺れて目が回る。凄い力で頭をがしがしと撫でくり回されている。

「ひゃっ、あんっ、えと、ごうくん? なに?」

 混乱する(めぐむ)があえぎながら問うと、豪太(ごうた)はすぐに振り振り攻撃を停止した。

「なんとなくな。気にするな」

「変なの……びっくりした。髪ぐしゃぐしゃになっちゃった」

「悪かった」

 豪太は短く謝罪した。詫びのつもりか、恵の髪を丁寧に梳き始める。今度は恵も嫌がらず、目を細めてされるにまかせる。

「こら、ふみねぇー、いい加減にしろーっ!」

 あちらではついに深雪みゆきが怒りの咆哮を上げた。脇腹から脇の下へと侵蝕しようとしていた文音ふみねの指を振り払い、至近距離から渾身の蹴りをぶちかます。

 くすぐられて笑いっ放しだったせいだろう、深雪の顔は真っ赤で、はぁはぁと息を切らせている。

「今日の山菜採りはおしまい、みんなさっさと家に帰る! 文音、あんたはちゃんと恵を送っていくのよ、いいわね!」

「お? おーう、おまかせー」

 深雪の足裏を胸の真ん中に喰らって、仰向けに引っ繰り返っていた文音が、転がった格好のままひらひらと手を振ってみせる。

「そうだな、もう帰った方がいい」

 豪太は恵を文音の方に押しやった。背中に与えられた力にこらえきれず、恵は前にたたらを踏んだ。

「お疲れ、剣士さん。修業の成果はどうだった? 魔物とか斬れるようになったか?」

 文音は脳天気に笑い、服に付いた汚れをはたきながら立ち上がった。

「送るよ。みゆ様のご命令だからな」

「……いい。一人で帰れる。ふみねちゃんは、みゆきちゃんを送ってけば」

「えー、だってみゆんち逆方向だし。恵ならついでだろ」

「ついでなんかいらないもん!!」

 つむじ風を起こしそうな勢いで、恵は文音から顔を背けた。ぎゅっと目をつむって走り出す、けれどたったの三歩目で。

「ありゃ」

「危なっ!」

「むっ」

 文音、深雪、豪太が三者三様に反応した。

 足をもつれさせた恵が、頭から地面へと滑り込んでいた。もしかして狙ってやったのかと思いたくなるぐらい、砂埃が盛大に舞い上がる。

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