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キミのタマはボクのモノ 巻の一  作者: しかも・かくの
第一章 錆びた剣と四人の順列組合せについて
3/42

第三回

「はあぁーー」

 (めぐむ)は腰が抜けてしまいそうなほど大きなため息を放った。暫しの間、まるで根が生えてしまったみたいに固まっていたが。

「ふくちゅっ!」

 冷風に鼻をくすぐられてくしゃみを一つしたのをしおに、のろのろと動き出す。

 まるで重さが倍にもなったように感じられる剣を引きずりながら、初めに見付けた場所まで戻った。

 地面には小さな穴が開いていた。剣が刺さっていた跡だ。

「……やっぱり、元に戻した方がいいよね。もしかしたら大切な物かもしれないし。大きな魔物を封印してあったりとか。ぼくが勝手に動かしたせいで、縛めがほどけちゃったりしたら大変だもん」

 誰も聞いていないのに言い訳するような調子で呟いて、剣を穴にずぶずぶと沈めていく。

「きっと今頃、ふみねちゃん呆れてる」

 見付けた時よりも深く、刃の根本まで埋めたところで、恵は柄から手を離した。

「はやっ?」

 ──否、離そうとした。

「ど、どーして?」

 離れない。

 焦りながらもう一回地面から引き抜き、大きく深呼吸して体の強ばりをほぐすと、一本一本指の力を緩めていく。

「ほらね、こうすれば簡単に……にーっ、もう、なんなの、これ!」

 恵は涙目になって剣を振り回した。

 離れない。

 ──どのくらいの間、そうやってじたばたしていたものか。

「見付けた! こら恵、なにぐずぐずしてんの、もう暗くなるじゃないの、あんたはいっつもそう、すぐひとりでふらふらどっか行っちゃって、そのくせちっとも」

「落ち着け、深雪(みゆき)。こうしてちゃんと会えたんだ。それでいいさ」

「……豪太(ごうた)がそう言うんなら、いいけど」

 ゆったりとしたよく響く声音になだめられ、盛大に浴びせかけられようとしていた文句が尻すぼみに収まる。

 恵は離れない剣を手にしたまま、首だけねじるようにして振り返った。

 恵より少し背の高い少女がせかせかと、だいぶ大きい少年が悠然と、結果的には同じ速さでやって来る。

 深雪と豪太だ。恵がちっとも待ち合わせ場所に現れないので、心配して探しに来たのだろう。

 深雪は左右を見回した。

「あれ、文音は? 一緒じゃないの?」

「さ、先に下りた、たぶん」

「恵を置いて? とんでもないわね。あとでとっちめてやらないと」

「ち、違くて! ふみねちゃんは悪くないから、ぼくが」

 ──剣を振り回して追い払った。事実だけ取り出せば、そういうことになる。

 深雪は目元をきつくした。

「『ぼくが?』」

「わ、わたしが」

 恵が言い直すと、深雪はよろしいというように頷いた。

「あのね、恵はすっごく可愛いんだから、ちゃんと女の子らしくすれば、って何持ってんのよ、あんた」

 緩みかけていた目尻がたちまち吊り上がった。恵は慌てて剣を遠ざけようとしたが、深雪がいち早く手を伸ばす。

「待って、みゆきちゃん、駄目、触ったら」

 取れなくなる、と恵が口にすることはなかった。

「……ほへ?」

 ぽかんと目を丸くする。

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