第三回
「はあぁーー」
恵は腰が抜けてしまいそうなほど大きなため息を放った。暫しの間、まるで根が生えてしまったみたいに固まっていたが。
「ふくちゅっ!」
冷風に鼻をくすぐられてくしゃみを一つしたのをしおに、のろのろと動き出す。
まるで重さが倍にもなったように感じられる剣を引きずりながら、初めに見付けた場所まで戻った。
地面には小さな穴が開いていた。剣が刺さっていた跡だ。
「……やっぱり、元に戻した方がいいよね。もしかしたら大切な物かもしれないし。大きな魔物を封印してあったりとか。ぼくが勝手に動かしたせいで、縛めがほどけちゃったりしたら大変だもん」
誰も聞いていないのに言い訳するような調子で呟いて、剣を穴にずぶずぶと沈めていく。
「きっと今頃、ふみねちゃん呆れてる」
見付けた時よりも深く、刃の根本まで埋めたところで、恵は柄から手を離した。
「はやっ?」
──否、離そうとした。
「ど、どーして?」
離れない。
焦りながらもう一回地面から引き抜き、大きく深呼吸して体の強ばりをほぐすと、一本一本指の力を緩めていく。
「ほらね、こうすれば簡単に……にーっ、もう、なんなの、これ!」
恵は涙目になって剣を振り回した。
離れない。
──どのくらいの間、そうやってじたばたしていたものか。
「見付けた! こら恵、なにぐずぐずしてんの、もう暗くなるじゃないの、あんたはいっつもそう、すぐひとりでふらふらどっか行っちゃって、そのくせちっとも」
「落ち着け、深雪。こうしてちゃんと会えたんだ。それでいいさ」
「……豪太がそう言うんなら、いいけど」
ゆったりとしたよく響く声音になだめられ、盛大に浴びせかけられようとしていた文句が尻すぼみに収まる。
恵は離れない剣を手にしたまま、首だけねじるようにして振り返った。
恵より少し背の高い少女がせかせかと、だいぶ大きい少年が悠然と、結果的には同じ速さでやって来る。
深雪と豪太だ。恵がちっとも待ち合わせ場所に現れないので、心配して探しに来たのだろう。
深雪は左右を見回した。
「あれ、文音は? 一緒じゃないの?」
「さ、先に下りた、たぶん」
「恵を置いて? とんでもないわね。あとでとっちめてやらないと」
「ち、違くて! ふみねちゃんは悪くないから、ぼくが」
──剣を振り回して追い払った。事実だけ取り出せば、そういうことになる。
深雪は目元をきつくした。
「『ぼくが?』」
「わ、わたしが」
恵が言い直すと、深雪はよろしいというように頷いた。
「あのね、恵はすっごく可愛いんだから、ちゃんと女の子らしくすれば、って何持ってんのよ、あんた」
緩みかけていた目尻がたちまち吊り上がった。恵は慌てて剣を遠ざけようとしたが、深雪がいち早く手を伸ばす。
「待って、みゆきちゃん、駄目、触ったら」
取れなくなる、と恵が口にすることはなかった。
「……ほへ?」
ぽかんと目を丸くする。