第二十三回
豪太が手に持って現れた剣は、昨日恵が山の中で見付けた物に間違いなかった。
長さは三尺(90.9センチ)ばかり、切っ先から柄頭までが一体の造りとなっていて、鍔など別個に付け加えられた部位はない。
刀身は棒のように真っ直ぐで、錆がひどいために分りにくいが、両側に刃が付いているようだ。先端は中心が三角形の頂点のように尖っている。
豪太によると珍しい型だそうだが、恵はもちろん武器の類には詳しくない。それでもたまに里の外から来た人や、何かの折に里人が腰に差しているのを目にした限りでは、緩く反りを持っているものばかりだったように思う。それに庖丁にしろ鎌にしろ刃は片側だけに付いているのが普通だろう。
「持っては来たが……長くて邪魔なばかりで使いにくいと思うぞ。山に入るなら、小刀か手斧でも持った方がよほど役に立つはずだ」
「いいの。お守りみたいなものだから。ありがと、ごうくん」
礼を言って受け取ろうとした途中、はたと恵は手を止めた。もしもまた握ったまま離れなくなったりしたら嬉しくない。
「どうした?」
「ううん、なんでも」
すぐにためらいを振り捨てる。これから両親の死の真相に迫ろうというのだ。もしかしたら魔物の痕跡を見付けるようなことだってあるかもしれない。この程度でいちいち怖じ気づくわけにはいかない。
「んっ」
柄に触れると、やはり錆だらけとは思えない不思議と滑らかな感じがした。
覚悟を決めて握り締める。まるで吸い付くかのように、掌に馴染む。
問題はこの後だ。
まずは右から左に持ち替えてみる。
左手を添えてから、右の指を一本ずつ開く。何も変なことは起こらない。当り前に柄から外すことができる。
いくらか気を楽にして、次の段階に移る。
剣を左の腰帯に差し込んで、恵は一息に手を離した。
「……ふぅー」
思わず息が洩れてしまう。幸いなことに、ひとたび手にしたが最後、自分では決して取れなくなるような呪いの武器ではなかったらしい。
「これでよし! 行くよふみねちゃん、約束通り案内してねっ」
「おー」
気合十分の恵に対し、文音はいつものごとくのんきな調子だ。だがそれがかえって恵にとっては心強い。
足を前に踏み出して幼馴染みの手を握る。文音は素直に握り返してくる。恵はさらにぎゅっと力を込める。
「もしもぼくが途中でくじけそうになったらさ、支えてくれるよね」
「もちろんだ。俺はいつでもお前の傍にいて守る」
「ありがとね、ごうくん……って、あれ、ごうくん!?」
気付けば恵を挟んで文音と反対側に、豪太の大きな体が寄り添っていた。




