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キミのタマはボクのモノ 巻の一  作者: しかも・かくの
第三章 闇の奥の過去と新たなる冒険の始まりについて
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第十五回

「よっ、恵。これ、うちの親がおまえんとこに持ってけって」

 中に茸がたくさん入った竹籠を文音が差し出す。

「あ、ありがと」

 落としてしまわないよう両手で受け取り、ずしりとした重みを支えながら、恵はぶるりと胴を震わせた。

「ひゃ……」

 生まれたままの姿が、冷たい夜気に晒されていた。目の前には幼馴染みの少年がいる。

「やだっ、あわわ、んしょっ、ふにゃっ!」

 咄嗟にその場にしゃがみ込もうとして、途中で籠を抱えていることに気付いて慌てて止まり、体を伸ばして洗い場に置いてから電光石火で湯船に戻る。

 盛大に跳ねたしぶきが、文音の顔面を直撃した。

「わぷっ、熱っ!」

「ご、ごごごめん、ふみねちゃん、えっと、拭く物は……」

 湯殿の外だ。恵は一瞬躊躇し、だがやはり取りに行こうと浴槽に手を掛ける。

「恵、いいから」

 文音は着物の袖で適当に顔を拭うと、窓枠に肘を乗せて凭れかかった。

「おまえんちの風呂ってさ、広くていいよな。すげーのんびりできるし」

 しみじみと覗き込まれ、恵は湯船に深く身を沈めて縮こまった。星と小さな灯だけの薄闇でも、全身が真っ赤に染まっているのがばれてしまいそうだ。

「んー、なんかひさびさに入りたくなってきたかも」

 文音は指先を湯に沈めてちゃぷちゃぷと悪戯する。

 まだ小さかった頃には、四人で同時に浸かったりもした。

 今ではとても無理だ。豪太を筆頭に、みんなそれぞれ背が伸びた。だけど二人ぐらいなら、たとえば恵と深雪でなら一緒でも余裕だろう。

 他の組み合わせだって考えられる。

 恵はそうっと顔を上げてみた。ちょうど同じことを考えていたかのように、目が合った文音が悪戯っぽく笑いかける。

「また一緒に、なんて。どうかな?」

「いい、よ」

 恵は頷いた。

「一緒でも。ふみねちゃんとなら。ぼく……」

「いいの!? じゃあ早速明日、みゆに声掛けとくから!」

「……ぼくも、え?」

 勢い込んで窓枠から身を乗り出してきた文音を、恵はぽかんと見返した。

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