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異界牧場物語 牧場の勇者  作者: ハーベスト
プロローグ
3/4

第2話 滅亡寸前の王国

 俺は色々と突っ込みながらゲームの画面を見ていた。

 牧場主データ、熟練度データ、スキルデータ、国家データ、人物データ、それから他にも様々データが乗っていたけど、やっぱりどれもツッコミどころが満載だったな。

 後は、何か検索画面っぽいのとか、説明書(ヘルプ)的な画面もあった。

 そんな色んなデータだったりを見ていると、部屋の外から足音が聞こえてくる。


「おっと、来たのかな」


 その足音で、エリーゼ(仮)が女王を連れて戻ってきたのかと思い、俺はゲーム機の電源を切るとポケット―――ではなく次元の鞄ディメンション・バッグの中へとしまう。

 それから数秒後、エリーゼ(仮)が部屋へと入ってくる。

 その服装は、質素なドレスといった感じで飾り気も色もない真っ白なドレスだ。

 素人目に見ても、それは絹とか上物のドレスではないと一目で分かるな。

 で、エリーゼ(仮)に続いて入ってきたのは、エリーゼを成長させたような、妖艶というよりはおっとりした雰囲気を感じさせる容貌の女性。

 だけど、その表情は何処か険しいものであり、本人のおっとりした雰囲気と相反する様子だ。


「お母様、この方が勇者様です」


「この方が……」


 エリーゼ(仮)の紹介を受け、女王(仮)は俺のことを見てくる。

 それは物語とかでよくあるような値踏みをするような視線ではなく、心から心配しているというような、そんな表情だ。

 俺みたいの我勇者なのが、心配ってところかな?

 まあ、何処にでもいそうな一般ピーポーにしか見えないしな。

 多分、ファンタジー世界であるこの世界では貧弱な人間に見える気もするし。

 ファンタジー世界では筋骨隆々とか、長身とかのイメージがあるし。

 いや、本当の中世だったら小さいような気もするんだけど、栄養状態的な理由で小さくてもおかしくないんだけど、やっぱり魔物とか化け物っているだろうしな。

 リアルより、ファンタジーよりな肉体をしている気がする。

 ま、それで心配するというのは当然だと思うし、やる限りはしっかりとやるつもりだし、取り敢えず在り来りでも安心させられるような言葉を掛けるべきだな。


「ええ、一応勇者として召喚された牧場 勇也だ。やる限りはしっかりやるから安心して、俺が召喚された理由について話してもらいたい」


 ……無理だった。

 とてもじゃないが、安心させられるような言葉を言えたとは思えない。

 事実、女王(仮)も未だに不安そうな顔をしてるし。

 だけれど、女王(仮)は口を開く。


「分かりました。勇者様を召喚した理由についてお話し致します」


「その前に、一つ聞きたいことがあるんだが」


「何でしょうか?」


「お名前を聞かせて頂いてないのだが」


「「あ」」


 エリーゼ(仮)と女王(仮)は揃って、忘れていたという表情で声を出す。

 うん、これは親子だなと思わせられる反応だ。

 全くの同じタイミングに、全くの同じ反応をするなんて。

 そう思って、一度頷いた俺にまずはエリーゼ(仮)が名乗ってくる。


「勇者様、これは失礼しました!私はこのミネリア王国の第一王女で、エリーゼ・アインス・シゼン・フォン・ミネリアと申します。エリーゼとでも、エリーとでもお好きにお呼びください」


「分かった、エリー。これから宜しく」


 やっぱり、ゲームの人物データは俺が会った人物のデータが乗って行くんだな。

 名前が一字一句一緒だし、王女という立場まで一緒だし、間違いないだろう。

 便利なのか、便利じゃないのかの判断が難しいところだな。

 さてと、エリーの自己紹介は聞いたことだし、次は女王(仮)の自己紹介を聞かないといけないな。


「それでは次は私ですね。私はエルシア・クイン・フォン・ミネリア、この国の女王をしているものです」


「エルシアさんで構わないか?」


「ええ、呼び方は勇者様のお好きになさって下さい」


 エルシア・クイン・フォン・ミネリア―――エルシアさんか。

 流石に女王を相手に、呼び捨てできる程には勇気がないから仕方ない。

 王女であるエリーは、何か王女様って呼ぶ感じがしないのに、どうしてこんなにエルシアさんは王族って感じがして、さん付けすることを強いられさせられている感覚がするんだ?

 いやまあ、年季の差ってやつしかあり得ないんだろうけど。

 まあ、女性の歳を気にするのは死亡フラグだからこれ以上考えるのはやめとこう。


「エリー、エルシアさん。俺のことも勇者様でなく、名前で読んでくれると嬉しい」


「名前で、ですか?……勇也様、こんな感じでいいのでしょうか?」


「ああ。エルシアさんも、そんな感じでお願いしてもらっていいか?」


「はい、勇也様」


 様付け程度はむず痒いのを我慢しないといけないよな。

 さてと、これで今度こそ話に入れるな。

 名前も知らず、これ以上長話に入るのはやめておきたかったし。

 取り敢えず、名前も知れたところで話に戻そうか。


「さてと、自己紹介をしたところで頼む。改めて、この国の現状について知りたい」


「分かりました。一から説明させていただきます」


 エルシアさんの話を纏めると、こんな感じだ。

 元々、このミネリア王国は自然豊かでお金も沢山ある王国だったらしい。

 だけど、魔王と名乗る凶悪な魔物が出現し、その魔王との戦闘によって荒れ果ててしまったとのことだ。

 テンプレートと名乗るSランク冒険者の所属するクラン、それにヴィクトル王国と呼ばれる国の召喚勇者四人+一人など、多くの戦力が集まり、このミネリア王国内の領土で魔物との戦争を行ったらしい。

 この時点で色々ツッコミどころがあるが、まずは置いておくとしよう。

 で、魔王と名乗る魔物を倒すことは成功したのだが、その爪痕は大きかった。

 領土は荒れ果て、作物もまともに育たない状態になってしまったのだ。

 テンプレートと名乗るクランだったり、召喚勇者のメンバーはこの国のことを憂い、寄付をしたりと色々今でもしてくれているらしいが、国を保つので精一杯。

 国民も別の国に流れ、今では偶に来る行商程度しか商人もいないらしい。

 残っているのは、かつては賑わった牧場であった牧場跡と、人の殆どいない城下町と、このメイドも執事も殆どいず、あまり手入れのされていない王城だけ。

 その状態を打破しようと、この国でも勇者召喚を行うことにしたらしい。

 何でも勇者召喚の魔法は各王家に伝わっており、その国を救うのに一番必要なものを持って召喚されるため、滅亡寸前のこの国を救うための最後の手段として勇者召喚を試したそうだ。

 そして、召喚されたのが俺で、出現した一番必要なもの―――勇者の武器が農具だった。

 かなり訳したが、こんなところだな。


「復興を諦め、他の国に亡命することも考えなかったのか?」


 説明を聞き、俺は純粋に思ったことを質問した。

 領土はボロボロ、国民は僅か、まともな生活も送れない。

 普通であれば、国を捨て、少しでも豊かな生活の出来る場所に行きそうなもの。

 だけれど、この国に残った。

 何か理由があるのを理解していて、俺はエリーとエルシアさんに尋ねた。


「それも考えないことはなかったです。けど、」


「この国を捨てることなんて出来ませんでした。亡き夫、この国の国王の為にも」


 成る程。

 取り敢えず、重い事情があってこの国を復興したいという思いがあって、亡命せずにこの国に残り復興しようとしていることは理解できた。

 色々とあのゲームの画面を見て、色々調べてみた限り、俺でも牧場経営は可能だと思う。

 むしろ、俺だからこそ牧場経営を出来るという自信はある。

 やってやろうじゃないか。

 俺は笑みを浮かべ、心配そうにこっちを向いてくる二人に告げる。


「分かった。俺に任せておいてくれ。時間はかかると思うが、微力ならやってやる。この国を、少しずつ復興させてみせる!」


 俺は、自信満々に二人へと言い放った。

 この絶望的な状況ではあるが、あの巫山戯たステータス画面を見て、やり方はもう分かってる。

 後は、それを実際にやるだけだ。

 そんな俺の様子に、エルシアさんは漸く安心したのか何処か柔らかい表情を浮かべる。

 本来の、おっとりとしているだろう雰囲気が表に出ているような感じだ。

 彼女は、懐から三つの袋を取り出しながら告げる。


「お願いします。これが、勇也様に最初に育てていくために用意しました種です」


 エルシアさんはその復路を机の上に載せる。

 俺はそれを自分の方へと引っ張り、その袋を見てみる。

 袋の中にはそれぞれ種が大量に入っており、これは明らかに最初に育てるべき農作物として渡されたのだと俺は理解できた。

 ふむ、最初の農作物は固定されているってわけか。

 問題はこの種、これが何かが問題だな。

 出来れば、再収穫が出来る類の野菜だと助かるんだけどな。


「アスパラガスの種袋が二袋に、白アスパラガスの種袋が一袋です。お金を節約し何とか捻り出した費用で買えた種袋です」


 アスパラガスと白アスパラガスで三袋、ふむまあまあかな。

 取り敢えず、アスパラガスの俺が勇者として育てた場合の収穫と再収穫にかかるまでの時間を確認しておく必要があるかな。

 俺はアスパラガスの種袋と、白アスパラガスの種袋を受け取り、次元の鞄ディメンション・バッグの中へと入れるとエリーとエルシアさんに告げる。


「それでは、牧場の場所に案内して欲しいんだが」


「分かりました。エリー、頼むわね」


「分かりました、お母様。それでは勇也様、私に付いて来て下さい!」


 俺は立ち上がると、元気な様子で部屋を出て行ったエリーに付いて行くことにした。

 まずは、牧場の状態を確かめないとな。

 勇者の武器(農具)を使えば楽だろうが、それでも牧場の荒れ果てくらいによっては、種を植えて水を上げるまでにかなりの時間がかかる。

 勇者の力で育てるためには、俺一人でやらないといけないらしいからな。

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