スカートの中には男のロマンが詰まってる
トイレから出てハンカチで手を拭いていると、どこからか女の子特有の高い悲鳴が聞こえてきた。
黄色い悲鳴じゃなくて普通に驚いた時とかの悲鳴。
気にはなったけど面倒くさいので教室へ戻ろう。
そう思い教室へ足を向けると悲鳴の元凶に出くわした。
「きゃあ?!」
隣のクラスの可愛いと有名な女の子の、スカートめくりをしている男子生徒。
小学生か。
いや、今時の小学生でもそんな幼稚なことはしないだろう。
「あれ、若王子さん乙ー」
へらり、と軽薄そうな笑みを浮かべてこちらを見る男子生徒。
一部女子に人気である意味有名人の鷹だ。
金髪をワックスで無造作に固めている髪は、完全なる校則違反である。
それに「乙ー」じゃない。
馬鹿なのだろうか、話しかけないで欲しい。
彼が私に意識を移したことで女の子は小走りで教室に戻っていく。
彼はというと呑気に「ばいばーい」なんて言いながら手を振っている。
「何してたの」
取り敢えず弁解はあるのかと聞いてみると、彼は茶色っぽい瞳を私に向けて首を傾げた。
「スカートめくり」
さも当然のように、何事もないように告げられた。
そして八重歯を覗かせながら笑う。
「スカートの中には男のロマンが詰まってるんだよー
馬鹿みたいに語尾を伸ばしてそんなことを言う。
何だ、男のロマンって。
ただの変態じゃないか。
私は嫌悪感を露骨に表し顔を歪める。
しゃがみ込んだままの彼を見下ろしながら「スカートの中にはパンツでしょ」と告げた。
女の子がパンツとか言うのどーなの?なんて彼が笑うが、スカートめくりをしてるあんたに言われたくないと、心の中で悪態をつく。
曲げた膝に肘をついて私を見上げながら「夢がないなー」と言う。
スカートめくりに夢がどうのって何。
パンツに夢がどうのって何。
「若王子さんってどんなの履いてんの?」
は?
私が疑問に固まっているとぴらり、スカートがめくりあげられた。
突然のことに動けないでいると彼は「うわぁ…パンツ見せられるよりスパッツのがエロいよ」と言う。
その言葉で我に返った私は、迷うことなく彼に蹴りを入れる。
しゃがんでいた彼はみっともなく倒れた。
「死ね」
彼にその言葉を投げつけて教室へ足早に向かう。
だがそれくらいじゃ彼はヘコたれずに、起き上がって私についてくる。
「教室に戻んの?俺と行こーよ」
肩を抱いてくるその手を払い除け「やだ、スカートめくりをしている奴と、同類に見られたくないから」と言って走り出す。
だが何故か彼まで走り出した。
そして私の後ろから「仲良くしよーよ」なんて言葉が聞こえる。
誰がお前なんかと!と私は更に踏み出す足に力を込める。
廊下にいた生徒達が何事かと私達を見た。
当たり前だ、だって今私達は追いかけっこをしているように走り回っているのだから。
「あと次はパンツ見せてよ」
爆弾投下。
はぁ?!と生徒達がこちらを振り向く。
私はギュッと急ブレーキを駆けて、彼の方へ駆け出し飛び蹴り。
「いっぺん死ね!!」




