おまけ(名波咲良と)
「初めまして、名波咲良です」
爽やかな笑顔に、三人は同じ笑顔で返した。
「うわ、嘘臭い…」
思わず呟いたのに対し、それぞれ違う反応を示した。
小百合はうふふと含み笑いに変え、智哉は無表情に戻った。夏目は苦笑し、咲良は楽しそうに笑った。
「さっすが由宇の友達。人気アイドル『佐倉七海』を目の前にしてこの反応。ちょっと傷付くなー」
「キャー佐倉七海! サインしてー! って言えば良かった?」
「それは勘弁。諏訪小百合さん?」
咲良は手を差し出し、小百合は力強く握手に応えた。
この二人は似ているかもしれない。自分の容姿を自覚して、それに対する評価を知っている。そして、時と場合によって性格を演じ分けることができる。
同じタイミングで手を放し、パンッと手を合わせて離れた。
「前からファンでした、とか」
「それは冗談? それとも本気? 周防智哉くん?」
「冗談半分本気半分」
咲良は智哉と軽く握手し、僕の隣に立って様子を見ていた夏目の前に移動した。
「初めまして。よろしくお願いします」
「こちらこそ。真弓夏目くん」
お辞儀をした夏目に、同じようにお辞儀で返した咲良はにっこりと笑った。
作り物ではない笑顔と行動に、咲良が小百合たちを気に入ったことがわかった。
中学の友達が、新しく高校でできた友達と仲良くなる。単純に嬉しかった。こうやって、人が繋がっていけば良い。
まあ、友達の友達が必ずしも良い縁だとは限らないけど。
「あとは幼稚園からの幼馴染み二人を紹介したら、僕の友達は全部繋がるなー」
「あ、亜理沙なら会った。じゃああと一人だな」
そういえば、ドラマで共演したと言ってたような気がする。何の話をしたか詳しく聞かなかったけど、仲良くなったのは確かだ。
咲良が亜理沙と仲良くなったなら、きっともう一人とも仲良くなれる。
小百合たちも、きっと。
「人の好みが似ているのかもしれない」
「由宇が好きだっていう前提があるからじゃないの」
智哉が溜息まじりに言ったことに、小百合と咲良は頷いた。夏目は苦笑している。
僕を好きだと言ってくれる数少ない友人たち。数少ないからこそ、大切にできる。数少ないからこそ、本物の好意だと思える。
いつもの無表情から、自然と笑みが浮かんだ。




