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超える

寄っていただきありがとうございます。

 ジョゼは約束の時間より早めに来た。顔を見るだけで、自分が反応してしまうのがわかる。


(そうか、一目ぼれか)


 ジョゼはそんなプリズムの顔を見ると

「大丈夫ですか?一日経って体調が今頃悪くなってきたりとかしてますか?」


「え?い、いや別に・・・」


「顔が赤いですね。熱でもあるのではないですか?」

 額に手が当てられる。

 ますます、体温が上がりそうだ。


「まあ、大体は普通通りだな。」

 キャットが面白そうにとなりから言う。


 ジョゼはキャットとプリズムを交互に見ると、やや興奮気味に

「今朝私宛にクイーンから、本人からですよ!メッセージが入っていたのですよ。『ビント=アームのバイタルサインがおかしい。危機的状況ではないが、振れ幅が大きすぎる。要因があれば分析、報告して欲しい。』」


「俺がおかしい?」

 自分を指差す。


「ああ!」

 キャットが手を打つ。


「何です?心当たりが?」


 自分ではさっぱりだ。

「何だよ?」


「い、いや・・・」手を打ったくせに口ごもる「俺が問題はないと言っていたと返信してくれるかな。」


「問題がないなら良かったですけど、あの方がわざわざメールをよこしたということは、理由をお聞きになりたがりますよ?」


「そうしたら、俺から説明しておくよ。」


「私からだと何か不都合でも?」

 ちょっとムッとしたように言うジョゼもまた可愛い。


「俺にもクイーンへメールをしてみたいなと。」


 冗談っぽく言うキャットに対し

「では転送いたしますので補足添付をお願いします。」顔がシリアスになっている。「お忙しい身の方です。無駄にお時間を取らせてしまうことは賢明ではありません。」


 カシミランの元で細かな情報のやり取りを管理しているだけのことはあって、可愛いだけではない毅然としたところもある。またそれも新鮮だと自分のことなのに、どこか遠いプリズム。


「もっともだ。じゃ、こう返信してくれ『バイタルサインの変化はビント=アームが新しい環境への順応中であることが一点、ある特定の個体に対して情動が激しく刺激された結果の二点が上げられるが、どちらも身体的にマイナスになるものではないと、推察できる。』」

 真面目に言うキャットの言葉にまずジョゼが反応する。


「・・・・」

 真っ赤になる。


 さらに一拍置いて、

「・・・特定の個体?・・・」上目遣いにプリズムを見るジョゼと目が合う。「・・・いや!そう!」


「わかりました。そのように返信いたします。・・・プリズム、光栄です。今後共期待に反しないように、行動できれば良いのですが。」


「・・・申し訳ない。・・・今後はまず友人として付き合ってくれるかな?」


「もちろんです。」


 朝から、顔から火が出そうになったが順調にその日は滑り出した。





「これから超えます。チェイサーはつけていますね?第一級装備も大丈夫ですね。」


 昨日に比べて物々しい。

「また、気持ち悪くなるのか?」

 思わず泣き言を言いたくなる。


「・・・もっとひどいです。」


「なれるさ。」


「早くそうなって欲しいよ。・・・チェイサーって何のため?」


 ごつい腕輪が巻かれている。これがチェイサーだ。


「『超える』時にたまにこぼれるやつがいるんでな。“命綱”さ。」

 遭難かよ。


 改めてきちんとついているか点検する。


「ルートが決まっている場合は『道』を作ってありますので、確率は低いですけどゼロではないので、念のためです。」


「こぼれたら、知らない世界ってのもあるのか?」

 二人して頷く。


「そのための一級装備だ。大気がなかったり重力がきつかったり、人の住める環境ではないところに『落ちる』可能性もあるからな。」


 装備品の方も点検する。


「その世界に落ちてもお前はすぐに順応してしまうのだろうな。」


「いや、流石に空気のないところに順応は無理だろう。」

 ジョゼ、頷かないでくれ。


「でも『事故率』が一番高いのはなんといっても、クイーンです。気軽に転送装置を使わずに飛べる方ですから、ブレ幅もおおきいのですね。皆心配で0―0から動いてもらいたくないというところですが」


「そうなると、自分たちのところには来ていただけない。」


「はい。司令以下頭を抱えています。当のご本人は返って落ちる方が面白いなんておっしゃられているから困ると司令がぼやいていました。」


「あの指令がな~・・・ところでこの間クイーンのための特別製のチェイサーが出来たって、噂に聞いたんだが?」


 ジョゼはクスクス笑い出した。

「あれはデマです。クイーンのパートナーであるあの方が『事故』を察知して居場所を『サーチ』できるということで、ルミナスとの直通オンラインの開設をこちらからお願いしたそうです。」


「ジョゼはお会いしたことがあるのか?」


「カシミランの補佐官ですので、遠くからですけどお見かけしたことはあります。」

 ジョゼの顔がポッとなる。


(え?その反応は何?)


「話を聞くたびに、あの方もだんだんクイーンに似て人間離れしてくるな。」


「そうですね。すごくお似合いで羨ましいです。」


(どういうこと?)

 後でキャットに聞くところによると、ジョゼの理想のパートナー像なのだそうだ。夕食を一緒にとった時に言っていたぞ、聞いていなかったのかと付け加えられた。



 心構えはしていたが、気持ち悪い。今度は本当に吐きそうだ。『落ちる』こともなく、超えられたようだが無事とは言えないのはこの状態だからだ。


 キャットに連れられて洗いざらいぶちまけて、例の飲み物を飲んで肩にすがりながら帰ってくると、ジョゼが見知らぬ男と待っていた。

 その横顔は整っていて気品さえ漂う。灰色の髪に灰色がかった水色の目、長身で無駄な肉のないムチのようにしまった体つき、どこか硬質的で幾何学的に彫り込まれた感じのする男だ。


 ジョゼがこちらに気づく。

「もう戻ってこれたのですね。」


 男もこちらを見る。


 !


 端正な右と違って左の顔はやけどと思われる古傷によって、皮膚がひきつれていて、それが頭皮まで及んでいた。


「ニック=ナハル。ルミナスの司令のひとりだ。」

 キャットが耳元で言う。


「ビント=アームのメディカル・チェック」

 にっく=ナハルの口が開く。声も硬質的だ。


『オールグリーン』


 人工音声の方がよっぽど人間的に聞こえる。

「当然か。キャット、君の話は聞いている。一度コンタクトをとってみたいと思っていたところだ。」


「ありがとうございます。」


「ジョゼ、ご苦労だった。確かに預かったとカシミランに伝えてくれ。」

 ナハル司令はジョゼに声をかけるが視線はプリズムの上だ。視線に圧力があるようだ。対してやけどの顔をさらされているので、目線を顔に合わせづらい。


「はい。」


「確かプロメテでは武術をしていたはずだが?」

 これはプリズムに対する質問だ。


「やっていました。」


「今はやっていない。技能は磨かねば錆び付くばかりだ。」


 ルミナスに入ってからはそう時間が取れない。後回しにしていたことを初見で指摘されてしまった。


「私の管轄は惑星単位だ。ひと月は各惑星の大筋の特色や課題の把握に努めたまえ。」


「適応検査はどうしますか?」

 キャットが聞いている。プリズムは司令の視線に耐えるのが精一杯だ。


「しばらくは地上には出ないから、無用だ。」


「はい。」


「では、私は帰還します。」

 司令の視線がやっと離れる。


「いや。2、3日ゆっくりしていけ。女性にジャンプ2回は影響が大きすぎるからな。」


 その言葉に一番感謝したのは、プリズムだろう。


「何か質問は?」

 プリズムは聞いてみたい誘惑に駆られた。が今はやめておいたほうがいいだろう。


「いえ、ありません。」





「司令はなんか感じがちがうな。」

 新しい住まいは、二人の個室の間に居間がある広々としたものだった。今までいた地上の家と比べてもかなり広い。荷物は既に運ばれていたので、荷解きをしつつ、プリズムがキャットに言う。


「そう思うか?」

 キャットは面白そうだ。


「ニック=ナハル。別名はアイス=マンだ。常に冷静。」


「表情が変わらないし、言葉もそっけない。厳しいのか構わないが、ああもよそよそしいのは今まで合わなかったタイプだな。」


「俺も始めてお会いしたが・・・苦手なのか?」

 プリズムに苦手があるとは信じられないという口調だ。


「苦手・・・どうかな?キャット、なぜ司令は顔をあのままにしておくんだろう。ルミナスなら綺麗に治せるはずだろう。片方の皮膚が引っ張られているせいで表情が動かなければ、余計人に警戒されないか?」


「さっき、本人に聞けばよかっただろう?」


「初対面でか?・・・知っているのか?」


「知らない。クイーンが直せと言わないからという噂もあるが、そんな理由ではないと思うな。元来表情は変えない人だと聞いている。俺には表情豊かだけどな。」


「どういう?」聞いて気がつく。「声か!」


 キャットの聴力は意識すれば飛躍的に上がる。

「さっきの司令は結構面白がっていたぜ。きっとビビっているのがおかしかったんだろう。」

 先程からのキャットのニヤニヤ笑いはそれが理由か。


「だが、面白がっていてあの態度なら、起こった時なんて氷点下40度の冷気並だな。」


「そう言うなよ。司令だってお前のことを取って食おうと思っていない。現にジョゼの帰りを伸ばしてくれたじゃないか。」


「女性に連続しての移動は負担だって。」


「それも、理由の一つ。だが、『帰還します』と言われた時のお前の顔をみれば、大抵察しがつくだろう。」


「ああ~」

 何かもう最初っから頭が上がらなくなりそうだ。


「ところで、ジョゼにこのベースを案内してもらうことにしたんだが、行くか?」


「もちろん!キャットは留守番しててもいいぞ。」


「いや、お邪魔する。お前だけだと何も覚えていなさそうだからな。」


ニック=ナハルはモデルが居ります。

実在の人物です。でも昔の人なので覚えている方はいないかも・・・

やはり顔にやけどの跡があります。

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