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飛ぶ

お立ち寄りくださりありがとうございます

「なあ。」


「あ?」

 荷造りを黙々としている最中に気になっていたことを聞いてみる。


「クイーンのパートナーって?」


「ルミナスには性別、年齢、種族を越えたところに存在しうる2個体巻の関係をそう定義している。」


 さっぱりわからない。IQ280が泣く。

 顔に出ていたのかキャットが肩をすくめる。


「身も蓋のない言い方をすれば、『伴侶』ってところか。」


「!クイーンって結婚しているのか!」

 体中の力が抜ける。恋愛感情ではない。それほどあってもいないし、会話もしていない。ファンだった女性が結婚したと聞いたような感覚だ。


「ショックか?」


「俺は別に。」


「失望が顔全面に出ているぞ。当然だ。ルミナスの人間で力が抜けた者などいない。女も含めてな。ルミナスはクイーンが気の遠くなる時間をかけて育て上げたものだ、彼女の目を通して人は少しづつ集められた。彼女の好みの人間、彼女と一緒に生きることを選んだ人間しかいないのだから当然だ。ルミナスの者にとって、クイーンは憧れだ。そんな方が世俗のように結婚なんて考えられないだろうな。」


「想像できなかっただけだ。若くて綺麗で・・・そうか、好きな人がいるのか・・・自分がとは思わないが・・・・はあ・・・」


「手を止めるなよ。」


「ああ。・・・待てよ?クイーンのパートナーって統治者と言っていたよな。」


「ルミナスですらない。」

 プリズムはダンボール越しに身を乗り出す。


「ち、ちょっとまずいんじゃないか?」

 一般人にルミナスの施設を見られて、記憶を消されて追放された者もいるってのに。


「詳しいことはわからないが、ルミナスのことを理解はしているがルミナスより自星の民のことを優先するから、ルミナスには参加しないと言っているらしい。自分が統治する星々は自らの力で高みに押し上げると宣言したという話も聞く。」


「統治?」


「専制君主制だ。」


「いいのかよ。」


「不安に思っている者は多いらしいが、さっきのキャッチフィールドたちを見ただろう?一度会うと認めてしまうから、精神操作ができるんじゃないかって噂が実しやかに流れている。」


「されてるのか?」


「司令たちがそんなことあるわけないだろう。さてと、結構荷物があったな。」


 ひとまとめにした荷物を、トランスポーターにかける。座標指定で送られた荷物は地下のルミナスの惑星支部にある二人の部屋にそれぞれ送られていった。そこからまた転送される。


「しばらくはさよならだ。キャッチフィールド達に任そう。」


「そうだな。」


 地上と地下を行ったり来たりの日々だったが、この部屋は地上での拠点だった。がらんとした室内は少し寂しい思いにさせる。それと同時に未知の体験がまた始まるといった気持ちも起きる。

「行くか。」




 拠点での自室にいるとドアの呼び出しが鳴る。


「迎えに来たぞ~」

 キャットだ。カシミランが寄越した“若いの”も一緒だろうか。


「今行く。」

 ドアが開くと、目の前にはキャットはいなかった。代わりに美人がいた。クイーンではない。


「カシミラン銀河担当官の命によりお迎えに参りました。私はジョセフィン=バーナーと申します。ジョゼと呼んでいただいて構いません。すぐに出発したいのですが、ご用意はいかがですか?」

 ハキハキとしたモノの言い方ををする子だ。


「すぐに出られるよな。」

 キャットの言葉に頷く。


「こいつはビント=アーム。最近クイーンから、プリズムと異名をもらったばかりだ。」

 ジョゼの表情が動く。クリクリとした目が見開かれ今にも落ちそうだ。


(りす?)

 かわいい小動物のイメージだ。


「それは、羨ましいです。私はまだ、総司令と言葉を交わしたことはないんです。では、付いてきてください。“会”があるのであまり時間の余裕がありません。」

 ジョゼに見とれていたので、慌てる。


「そ、そうだ!」

 部屋に戻ると端末をポケットにねじ込む。


 その間にキャットとジョゼは世間話をしている。


「キャットは経験は?」


「一応両方ある。」


「プリズムは?」


「あいつは『飛ぶ』のも『超える』のも初めてだ。」


「やはりそうなんですか。大丈夫だからと言われてはいるのですけど・・・」


「何の話だ?・・・お待たせしました。用意できました。」


「立て続けに始めて経験する人って初めてです。」


「俺も初めてさ。」


「なんのことだ?」


「見ものだな。」


 きょとんとするプリズムにジョゼがくすりと笑う。笑顔がチャーミングだ。美人にありがちな済ましたところがないのがとてもいい。薄く頬に見えるのはそばかすだろうか。

「わ、私の顔に何かついていますか?」

 ついじっと見てしまっていたらしい。


「美人だなっと思って。」


「ありがとうございます。」

 赤くなって、ぺこんと頭を下げる仕草も可愛らしい。黙ってたっていると美人だが、動くと可愛い小動物。ビント=アームのストライクゾーンだ。


『飛ぶ』ための『転送装置』のある部屋についた。プリズムは初めての部屋だが、概論ではレクチャーを受けていた。あちこち見回って「なるほど、ここでダイラー粒子を加速して・・・」などとつぶやいている。


「ジョゼは『超える』ことができるんだよな。」


 プリズムは足を止めて、キャットの言葉に妄想する。ルミナスに所属すると年をとるのが遅くなる。司令クラスではほとんど年をとることがないと聞いたが、ジョゼもそうなのだろうか。

 20代に見えるが100を超えていたら、自分は何か大事なものを失うような気がする。


「頻繁ではないですけど、あります。」


「『超える』と“変質”するって聞いたけど大丈夫なのか?」


「え?“変態”?」


「違います!」

 妄想中に耳に入った言葉を聞き返したプリズムに真っ赤になって抗議する。


 起こった姿も可愛いが、

「違っていた?ごめん。」


 プリズムの特技『人に警戒心、敵愾心を起こさせない』が出る。


 ジョゼはもう!と言いながら

「ご心配ありがとうございます。でも総司令(クイーン)も司令の方々も日常的に『越えて』いらっしゃるのですから“変質(・・)”は悪いことではありません。むしろよりルミナスの中枢で仕事をするには“変質(・・)”が最低条件と聞いています。」

 強調して答える。


「なあ、“変質”ってなんだ?」

 キャットはプリズムの頭をはたく。


「おま!教育ちゃんと受けたよな。レクチャーされなかったか?」


「なかった。」

 覚えていないということはないだろう。天才なのだから。


「・・・遺伝子レベルでの変化ですね。新しい星、環境に行っても風土病に強い体質になるそうです。」


「じゃあ、心配することないな。かえってありがたいじゃないか。」


「・・・そうとも言うがな。」

 女性は妊娠できなくなる。ジョゼが言わない以上キャットの口からはその言葉は出せない。


「準備できました。30秒後にジャンプします。転移台にたってください。」




 プリズムは内臓の配置を強制的に弄り回されたような気持ちの悪さを感じて、しゃがみこむ。


「気持ち悪いでしょう?」


「吐くか?」


「・・・いや、気分は最低だが、吐くまでは・・・」

 少しづつだが、よくなり始めている。


「いつ見ても抜群の適応力だな。」

 呆れ返ったようなキャットの声だ。


「馬鹿言うな。気持ちが悪くてだるいんだぞ。」


「これを飲んでください。楽になります。」

 ジョゼが小さいコップをプリズムの前に差し出す。


「ありがとう。でも」

 今飲んだら吐く。


「飲むと楽になるのは、本当だ。」


「わかった。」


「うえっ、すごい臭いだな。」


「鼻をつまんで一気に行ってください。」

 心配げに覗き込むジョゼのそばかすを見つつ、コップを受け取るとあおる。

 臭いほど味は強烈ではない。


「毎回こんなに気持ちが悪いのか?」


「慣れればなんともなくなります。始めて『飛ぶ』のに、しゃべれるなんてすごいですね。」

 笑顔はチャーミングだ。

 床に手をついて立ち上がろうとすると、ジョゼが肩を入れて支えてくれる。いい香りだ。


「大丈夫ですか?無理しないでまだ、休んでいても良いですよ。」


「いや、大分楽になった。この薬は効くんだな。」


「普通はそんなに即効性はないのですが・・・立てるなんて。カシミランがおっしゃっていた通り。」


「カシミランがなんだって?」


「初心者扱いしなくていいって。ですからここへ飛んだんです。」


「確かにな。昔からそうなんだ。フォールでも意識ははっきりしていた。」


 キャットがジョゼと入れ替わる。香りが遠のいていく。

 フォールは、プリズムが落ちた穴のことだ。


「そうなんですか?」

 覗き込むジョゼに苦労して笑いを顔に浮かべる。


「すごいですね!私は結局降りれなくて二人用のフォールで一緒に降りてもらったんです。」

 二人用もあったのか!九年目にして始めて教えられたプリズムだった。


「今の転移も本当なら、初めての人は医務室にここから直送されるのが普通です。」


「まったくだ。俺も一日中トイレの中で寝てるハメになった。」


 キャットの言葉にジョゼは赤くなりながら、頷く。

「私もです。あとになってそれが一般的な反応と分かるまで、すごく恥ずかしくて」


「わかるよ。吐きながら、これで返されたらどうしようって思ったもんだ。」


「ええ。」

 二人で分かり合っているのが面白くない。


 今日の宿舎に着いた。キャットと同室だ。

「では、また明日迎えに参ります。体調が良ければ、明日『越えて』しまいます。今日はゆっくり休んでください。」


「プリズム、お前普通に食えるよな。」

 キャットがこそりと言う。

「ああ、問題ないけど?」


「ジョゼ。よかったら食事を一緒にどうかな?」


「喜んで。」


「じゃ、カフェテリアで18700にどうかな?」


「わかりました。」

 ジョゼは軽く手を振って帰っていった。


「おい、感謝しろよ。」

 キャットがプリズムを突っつく。


「何を?・・・ああ肩貸してもらってありがとう。」


「違うって、ジョゼを食事に誘ったことだよ。」


「ど、どうして俺が!」


「あからさまなんだよ、お前は。ずっと見とれていただろう?」

「誰に?」



「ジョゼに。」


「$#%&‘」


「自覚なしか?・・・確かに彼女はチャーミングで美人だ。でもルミナスの子は皆魅力的だぞ。少しは免疫をつけろよ。」


 付け過ぎのきらいがあるキャットに言われたくない。

「違う。他の子を見たってジョゼより可愛い子ははいなっ・・・!」


「一目惚れ決定か?」

 キャットが笑い出した。

「お前は大物だよ。クイーンに会っておきながら、ほかの子を好きになるなんて!」


 夕食は楽しかった・・・と思う。何を食べたか何を話したかあまり覚えていない。ジョゼの笑い顔しか記憶にない。気がつくと次の朝だった。

「大物だよ、お前は。」


サクサク行きます

なんといっても全話プロローブですから!

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