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宇宙へ 2

お読みいただきありがとうございます。

「軌道修正成功しました。」

「認識ビーコン改変済み。」

「非探知装置作動確認。」

「侵入者探知装置及び警報装置設置完了。」


 レッドたちは、“ネジ”に降りていた。プリズムたちも一緒だ。プリズムは司令に進言したとおり、コンピュータをルミナス仕様に再教育していた。


「よし、作業が終了したものから上に上がって一休みしていいぞ。」

 レッド司令は二人を指す。

「彼らの話だとちょっとしたリゾート地らしい。」

 口笛等の賛同が起きる。この司令はフットワークが軽い。報告を待つことなしに自ら聞きに行く。だから部下も手早く作業をこなすことになる。冗談も時折混ぜるし、序列にも厳しくない。


「同じ司令でもアイスとはやっぱり違うなあ。」

 プリズムがキャットに言う。

「同じところもある。」

 キャットは手元から目を離さず、作業しながら答える。


「アイスと一緒にしてもらえるとは光栄な話だ。」

 いつの間にか司令がそばまで来ている。


「司令、不意打ちはなしでお願いします。」


「君には気配でわかると思ったのだがな。」


「警戒していればの話です。それでなくても司令の方々は自分の気配をコントロールできるのですから。」

 レッド司令は腰に手をやる。悔しいくらい様になる立ち姿だ。


「クイーンは認めるが、私はそんなことはできないさ。書き換えは終わりそうかな?」


「いま、サーキットさせてますので不都合が起きなければ20分位で終わります。」


「サーキット中はついていなくても構わないだろう。君たちも上に上がって行ってきてもいいぞ。」


「いや、俺たちは。」


「そうか・・・十分に満喫した口か。」


「司令は行かれないのですか?」


「アイスだったら行くのか?」

 そんなことは想像できない。が、この司令ならそれもありかと思ったのだ。


「行ってもいいのだが、部下たちのところに上司が入るのは、彼らにとっては窮屈だろうからな。」

 そういうものだろうか?少なくともこの司令は、皆からしたわれていると思うのだが。


「聞いてもいいですか?」

 レッド司令が先を促す。

「司令はアイス司令とはまた違った分野の調整なのですよね。」


「そうとも言えるが、基本的には一緒さ。地方(イコール)惑星というように単位が大きくなっただけだ。ルミナスの精神分野発達世界担当以外は、庭師や山の管理人と同じ仕事をしているようなものだ。これは元ルミナスの人間の言葉だ。」


「元ルミナス?」


「クイーンの右腕だった人だ。実質上の副総司令だ。今はオーバーソウルに所属している。」


「・・・聞いたことがあります。シャドーと呼ばれていた人ですよね。」


「そうか、耳にしたことがあるか。彼はルミナスの仕事は不必要に食害されたり、許容範囲を超える過酷な環境にさらされすぎないように、手助けすれば十分だといっていた。伸びたいように伸ばしてやる。簡単な仕事だと。」

 司令は二人に苦笑いを見せる。

「騙されたよ。今でこそなんとかやってはいるが。苦情を言ったら逆にクイーンから『簡単な仕事とは言ってはいるが、楽な仕事とは言ってはいない。シャドーが正しい。』と逆に怒られた。」


「立ち入ったことをお聞きしますが、司令はどのような経緯でルミナスに参加することになったのですか?」


「本当に立ち入ったことだな。人の古傷をえぐるような行為だとは思わないか?」


「クイーンに会ったときのことが、古傷をえぐるようなこととは思えません。聞ける人には皆聞くようにしています。」


「何故聞く?」

 一歩引かないプリズムに、司令は逆に聞く。


「知りたいからです。」


「答えているつもりか?」


「クイーンを。」

 レッド司令は、サングラスを外してプリズムを正面から見る。目が赤い。一瞬たじろぐが自然体で見返す。逆に見られていないのに関わらず、後ずさりしたのはキャットの方だ。

「なる程。」


 再び司令は、サングラスをかける。キャットの体から力が抜ける。司令はキャットに目をやる。

「感応力があるのか?」


「いえ、野生のカンです。」


「それはすごいな。」

 レッド司令がベンダーのもとへ行く。

「飲むかね?・・・話してやろう。」




 私は、惑星から飛び立ち同じ恒星系の惑星に居住し始めた人類の世代に生まれた。父は第4惑星植民地の長官をしていた。その頃の母星は、人口の爆発で資源も枯渇、食物も充分に行き渡らない、温暖化による砂漠化が進むといった閉塞させたものだった。その中で惑星への植民は、『棄民』の意味を持っていたのは当然かもしれない。

 植民地化した惑星は全部で、衛星を含めると6つ。搾取と隷属の関係だ。そのうち宇宙に出た人類が、宇宙に適応し始めた。反応速度、知能指数様々な場面で、母星の人類を上回った。優秀な人類が、劣等な人類に隷属する。そういう不満が出てきた。互いに尊重し合う関係、それを認めさせるために第4惑星植民地は独立を宣言する。

 戦争が勃発した。宇宙空間では独立軍(母星では反乱軍の呼び名)が圧倒的に有利だった。そこで母星は切り崩しにかかった。母星に一番近い植民地である衛星の自治を認めたのだ。歩調はすぐに合わなくなる。和平論者と主戦派で内部紛争が起きる段になっては、独立軍の旗色が悪くなるのは自明だ。和平条約という名の不平等条約が結ばれる。その頃父が暗殺された。後継は今際のきわに指名したと言われた主戦論者だ。彼は獅子吼した。母星が父を恐れて始末したのだと、それを知った父が血の涙を流し、独立の意志を引き継ぐようにと自分に言ったのだと。茶番さ。私はそのものこそ父を暗殺した張本人と思った。

 身元を隠し、独立軍で出世をする。そして逆に近づき首を掻いてやる。そう思った。手段のために戦争を利用したわけだ。

 独立軍は手段を選ばなくなった。母星を疲弊されるために隕石を落とす。恒星レーザーで母星の宇宙基地を叩く。宇宙はゴミと残骸で溢れた。

 殺し合いの中で人の生の感情に触れる。物事はそう単純なものではない。復讐ではなく父の目指した理想を実現するのが、私の役目かとも思った。そんなときだクイーンにあったのは。

『どれもこれも中途半端だな。自分の中の宇宙に母星が存在するのでなければ、それもよし。だが、前提として宇宙のあるオアシスのように思うのなら、ちがう道もあるだろう。』

 世界を浮かべる上で、惑星は宝石のように中央に存在する。このままだと共倒れだ。



「でルミナスだ。このくらいで勘弁してもらえるかな。卑小な男だったことを話すようで、自慢できるものではないのだ。」


「ありがとうございます。」

 かなり話してもらったということになるだろう。


「誰にも言わないでくれると助かる。部下に足元を見られるからな。」

 そんなことはないだろう。この司令は時折本心を隠すためた、茶化した言い回しをすることがある。


「さて人使いが荒くてすまないんだが、中域にサーチャーを話したが戻ってきたらデーターの解析をしてもらいたい。うちのものだけでは、時間がかかりそうだ。」


「了解しました。サーキットが終了しました。オールグリーンです。」


「よし。」司令は通信機に向かう。


「諸君、くつろぎの時間は終わりだ。」


『了解です。クイーンおすすめのパンの実を見つけたのですが、司令にお土産にお持ちしますね。』


「それは楽しみだが、違う実はやめてくれよ?」


『大丈夫です。キャットに確認を撮りますから。』


「15分後にここを出るぞ。」


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