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人工物

お読みいただきありがとうございます。

「皇帝陛下、ルミナスから通信が入っております。」


「つなげ。」

 目の前に立体画像が出る。


「君は確か、アルル司令だったかな。」


『覚えていただき光栄でございます。陛下にお願いがございまして、ご無礼ながら通信させていただきました。』


「クイーンのことだな。要件を言え。修飾語はいらない。」


『では、クイーンがチェイサーなしで『落ちて』しまわれました。『タナトス』絡みなのと、未熟な者を二人連れているので早急に探したいのです。』


「わかった。」

 皇帝と呼ばれた男は、即座に頷く。


「聞いての通りだ。後は任せた。」


「は、かしこまりました。」




 ルミナスの中枢は、『動く星』0-0だ。表面は水銀のような液体の形態を取る重金属で覆われている。

 その金属の中にカゴのように内核を取り巻いている。内核は二層に分かれていて、外側が宇宙船のドック、0-0自体のコントロールを司るところとなっている。外側と内側の間には、ケーブルなどが縦横無尽に血管のように走っている。内側は上下に分かれている。下部はA.R.Iアリのファジープロセスエクスキューションの独立・連動コンピュータと動力炉が占める。上は居住区と環境区、農場などがある。


 最悪の場合は、0-0ごと転移することも考えなければいけない。そう司令たちは、思っている。彼女は核だ。いなくなりでもしたら、ルミナスは分解する。


 内核の医療区のコクーンの中にクイーンのパートナーが入ってもう一時間は経つ。

 0-0の運用司令ソンとアイス司令がじっと待っている。


 シュー


 コクーンのロックが外れる音がする。


「待たせたね。一緒に落ちたものの影響だろう。同調に手間取った。」


「総司令は?」


「座標を投影してくだされば、即時ジャンプします。」


「いや、おそらくレッドの守備範囲だろう。0-0で行く必要はない。」


 二人の司令の緊張が解ける。そういうことなら危機的状況に陥っているわけではないのだ。

「お忙しいところありがとうございました。」

 ソンが最敬礼する。





「さて、そろそろ乗り込んでみるか。」


「一旦海岸へ出て、南から行ったほうがなだらかですが、どうします?」

 キャットの端末から孤島(仮)の地図を不完全ながら、作ることに成功したプリズムが聞く。


「足の遅い奴がいるからな。」


 プリズムのことだ。クイーンは

「そうだな。」肯定する。「しかしサーチは出来る。“生き抜いて、前に進む”我ながらいい組み合わせを組んだ。」


「クイーンが俺、私の相棒をこいつに決めたんですか?」

 プリスムを指差してキャットが言う。


「そう、あなたは豪胆に見せているけど本当のところは、いつも逆毛と立てている猫だったでしょう?プリズムといて大分楽になったはずよ。」


「ええ、まあ・・・コイツのそばにいるだけで落ち着きますけど。」

 キャットが渋々認める。


「プリズムはデーター解析のプロだ。だが、それだけでルミナスに青田買いしたわけではない。本当の理由は高い適応能力と懐柔能力。あのアイスでさえコロリと言ってしまうのだから。」


「カイジュウ?」


「人に警戒心を抱かせない、いやその上かな?人に親しみを起こさせてしまう能力。プリズムがいると諍いごとはなくなるわね。」

 キャットは思い当たることがありすぎる。


「初めてのところに首を突っ込む時にはそちらのほうが、むしろ役に立つ。そしてキャットの野生という生命力。いいわねえ、自画自賛。」

 クイーンは名画を鑑賞するように二人を眺める。

 二人共こそば良い気持ちになる。




 前に進もうとするクイーンをキャットが止める。

「ブービートラップがないのは確認していますが、何が起こるかわかりません。念のため先に行きます。」


「任せた。どう?」

 後ろはプリズムへの問いかけだ。


「レベル5以上の知的生命体の反応はありません。地下の構造物の分析が出ました。クレマタイト合金とよく似た組成の合金です。」


「それで、無人?」


「行ってみればわかる。」


 キャットの先導で地下への入口と思われる場所に着く。

 長年使われていないらしく、植物が繁茂してわかりづらくなっていたが、明らかに金属製の扉がある。脇に電子錠がある。プリズムにとっては簡単なものだ。むしろ、簡単すぎて家の窓の鍵程度のものだ。


「無用心ですね。」


 動力は生きているらしい。ドアが開く。

「電子錠は独立しています。ここから情報を吸い出すのはできない。」


「そうか。私が先行します。ここにいてください。」

 キャットが中に入る。通路は暗く外から入ると目がなれないが、キャットには関係ない。通路の奥にシャフトが見える。何の迎撃行動もうけずにたどり着くと二人に合図を送る。


「プリズム。シャフトの端末から中にアクセスできるか?」


「今やっている。」

 キャットの問いに既に足りかかっているプリズムが答える。クイーンは二人の作業を見守っている。


「アクセスできそうだ。見取り図をとろうか。」


「頼む。侵入者に対するセキュリティは?」


「動力は独立式。自動メンテナンス中。迎撃システムはオフになっている。」


「オフ?廃棄されたのなら、動力も切っていくのが普通だろうに。」


「そうだな。全体の地図が取れた。シャフトを動かしますか?」

 プリズムはクイーンに聞く。


「動かしてくれ。」


 かすかな起動音と共にシャフトの扉が開く。



 ビビーッ



 三人がいる通路全体に音が響く!


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