孤高の深海 1ー3
サンディースとイージスター島の農民は人造人間と戦う為に立ち上がった。その島の権力者と人造人間ホムンクルスが繋がっている事実を知ったサンディースは怒りの姿ウオーウルフに変身するのだった。彼はホムンクルスであり、対抗する為に人間社会に送られただけだった。サンディース自身まだその事実を知らない。
[使えそうな武器はあるか?][それが、無いんだね。農具位しか。全部権力者に取られている。逆らえばホムンクルスを呼ぶぞと][農具か。戦いの経験は?][それも無いんだね。全て管理されていたから。じゃがね、奴等に一泡吹かせたい。それは変わらん]
………同志よ。我らを導いてくれ。支配の無い世界に………
サンディースは天を仰ぎ、昔の戦友に呼びかけた。ガチャッガチャッガチャッ。金属音が山の向こうから聞こえた。農民は双眼鏡を渡す。[大将。数は知らねーが、大軍だ。いけそうか?]サンディースは双眼鏡を覗いた。
………砂煙で煙幕を張っている。蜃気楼の様にぼやけて定まらない。この数なら煙幕に負かれて同士討ちもやむを得ない。そうか!砂煙だ!………
[水はあるか?後、ホース。一斉噴射するんだ。一点で構わない。皆はその一点から攻撃を仕掛けよ][イヤ。届かん。距離にして10キロはある。届いた頃には終わりだそれより落とし穴が良かろう。皆の者。農具で落とし穴を作るんじゃ][村長さん。それは良い。あれだけの大軍だ。揃うまで1日はかかるだろう。連中が分散しなきゃ時間は取れる。こっちは二班に別れる。落とし穴を作る班と誘い込む班。誘い込む奴等は高台から狙え!俺が指揮を取る][ワシらは早く作ろう][任せろ。一人も殺さん。全員生きて還す。だから俺に小隊を][ウム。また後でな。こちらも手薄なんじゃ]
サンディースと農民の反乱の噂は島全体に知れ渡っていた。
[オイ!俺達も行くぞ!黙ってられるか!][アア。少しでも良くなればな。連中だけ殺させはしないさ][必要な武器をかき集めろ!船で港に付ける。後は補給物資も。ありったけ積めろ!]
島の住民の鬱憤は貯まっていた。そんな事とは知らずにホムンクルスは行進を続けた。[止まれ!野郎共!日が暮れる。今日はここで宿にする。後、明日ぐらいには着くだろう。前祝いだ。休め]サンディースはその光景を高台から見ていた。
………しめた!今夜を逃したらチャンスは無いぞ………[皆、一ヵ所に集まれ。作戦会議だ][良いか?日が暮れるまで待つ。松明が目印になり工作班にも場所が知られるだろう。松明でテントを狙え。火事になり陣形も乱れるだろう。混乱に乗じある程度は捌ける][大将。船は呼んだかい?][イヤ。何故だ?][港に集まってるだよ。見てみい]一人の農民が海を指差した。[補給物資みたいですな。大将。この島の住民が集まってきている。ワシら農民を援護しに][そうか。ここで待て。俺が戻るまで動くな。サンディースは海岸へ急ぎ船を止めた。[あんたら救援か?][左様。作戦を伝えてくれ。我等も加勢致す][…………そうか。我等も奇襲部隊に加わろう。即席部隊だか無いよりはマシだろう]一軍は日暮れまで待機した。酒と料理と宴の夜をホムンクルスは過ごした。[大将。好奇じゃないですかね?奴等、すっかり勝った気になっている][そんな者だよ。大軍なんて。意外と足元はお留守なんだ。勢力はあるかも知れんがな。夜中、奇襲をかける。交代で少し仮眠をしておけ][だがよ。サンディース。向かってきたらどうするね?][俺が前線に立つ。一人も殺させはしないさ][万が一の為に四班に別れよう。1つは東から。1つは西から。囲むような陣形で奇襲をかける。後は第2軍だ。高台から待機しろ]
その日は早く寝静まり、警備も手薄だった。
続く