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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第35話 63階層の死闘 前編 ~殺すより、使い切れ~ ②

5/7

 



 飛んでいくのは焦げ茶色と緑の五角形。

 秋が深まると各家庭で対応に苦慮しがちなアレ。


 『カメムシ』。

 2メートルまでいかない全長だが、角ばっているせいでゴツク見える。

 何より、デカくなったアイツらが、臭い液を放出する。


 あの臭い、精神攻撃としては最高クラスだよね。

 コスパもいいし。

 風が吹けばなくなるから環境も壊さない。


 6匹しかいないが、その影響はすさまじい。

 女子を中心に戦闘どころではなくなって逃げだす者まで出ていた。


 あちらこちらで食べ物を戻して、地面にぶちまけている女子もいる。

 かわいそうに。


 食べ物が、な。


 その間にも、うちの蜘蛛さんが、それはもう忙しく働いてくれている。

 そうやって、混乱しているところへ。

 満を持して投入するのは、ある意味最強の刺客。


『アメリカシロヒトリ』。

 俗に『アメシロ』で知られる蛾の幼虫だ。


 夏の終わりなどに大量発生して、周辺の葉を根こそぎ食べ尽くす。

 その際、白い糸を吐くため、木が網をかけたように白くなることから山形県など一部地域では『アミシロ』なんて言ったりする害虫である。

 毛がモフモフしていて毛虫のように毒針があると思われがちだが、実は無毒。


 ただし、それは『リアル』の虫ならばの話。

 ここにいるのはモンスターだ。

 ちゃんと神経毒を仕込んであったよ。


 えらいね!

 先代『ダンジョンマスター』。


 こいつらを8匹、戦場へと投入した。

 白い糸がまとまりになって、霧のように噴き上がった。

 視界を奪われ、動きも鈍らせられる。

 風の魔法で防ごうとしているが、見た目の割に質量があるようで、飛ばしきれていない。


 女子の髪や服、男子にも、次々にまとわりついていく。

 それで業を煮やしたのだろう。

 埒が明かない、と魔職女が火の魔法を使った。


 これは効果があった。

 何人かが火の影響で混乱している。


 あの糸は燃えやすかったらしい。

 髪や服に張り付いていて、うっとうしそうに剥がそうとしていた者たちが燃えた。

 火の魔法を使った魔法使いは責められ、戦線の統制を乱す要因となっている。


 魔法を使った魔職女がど面にはいつくばっている。

『転んだ』らしい。


 仲間同士の助け合い、支え合いが美しいね。

 感激のあまり涙で見えなくなりそうだ。

 

「まあ、統制は乱れたけど、『ソウルポイント』は増えたから合格かな」

 ご褒美に何か上げようかしらね?


 いい感じ。


 そう思ったのだが、臭いと音で危機感が盛り上がりでもしたのだろう。

 目を血走らせた女子数人が、やけくそ感丸出しでカメムシを葬り去るのが見える。

 その勢いのままに、アメシロ先生までもが焼き殺された。

 糸を焼かないよう肉薄されて、本体を焼き捨てられたのだ。


 殺される前に放出した『網』が、いい感じに死角を作ってくれている。

 蜘蛛さんたちは、未だ健在で活躍中だ。


 追い詰めすぎたか?


 そう思わなくもないが、おかげで『ソウルポイント』が爆上がりしている。

 音と臭いで相当に苦しんでくれたのだ。

 だから、後悔はしていない。


 気が付けば、アリさんも全滅していた。

 コガネさんとテントウムシさんも半減している。


 そういえば、セミも鳴いていない。

 よく見ると、男子のタンク職を中心に、防御陣地を出ている者たちがいた。

 バッタのプレス攻撃で、「守ってばかりいてはもたない」そう判断したものと思われる。


 百合根先輩、さすがです!

 冷静で大胆な判断だ。


「うんうん。がんばってるね!」

 えらいぞ!

 無理をしている分、『ソウルポイント』の上りが増えている。


「えらいから、ご褒美上げよう!」

 ポチッとな!


 タンク職を狙って、5体の隠し『玉』を送り出した。

 黒光りする表面。

 硬質な背中を丸めた『球体』。


 『ムシ』とついているのに実は甲殻類。

 ・・・って、言いつつ『虫』の定義は昆虫を含めた『小さい生き物』全般なので『虫』がテーマの『ダンジョン』でも出ておかしくはない。


 ・・・全長がメートル越えとなるものを『虫』と言っていいのかって疑問は、『無視』する方向で!


 その全長3メートル。

 丸まっているので直系は2メートルもない。

 そんなのが転がってきたら、人間はどうなるか?


「あははっ、人間が虫けらのようだ・・・っと。言ってみたかったんだよな。このセリフ」

 うん。きれいに撥ね飛ばされていったよ。

 思わず、笑ってしまったさ。


 旧校舎には、そもそも人がいないからな。

 言いたくても、言えなかった。


 もちろん、撥ね飛ばされた者は『メガネウロ』さんが空中でキャッチして運んでいる。

 そして、そうでなかった者はどうなっているかと言うと・・・。


 マンガか?!

 ツッコミたくなるほど見事に、人のシルエットを残している。

 巨体に押され、地面に形を残したのだ。

 地面が柔らかくてよかったね!


 ちょっといろいろ損耗もあるけど大丈夫!

 死んでなければ生きられるから!

 どちらにしろ、みんな『転職』することは変わらない。

 だから、大丈夫!


 他にもいろいろと損耗激しい者たちがいる。

 だけど、それはもうどうでもいいことだ。

 椅子の足が一本折れたなら、全部折って座椅子にする。

 その心意気でいれば万事問題ない。


 とはいっても、やはり勝ちきれはしない。

 配置したモンスターの主力が壊滅した。

 大活躍した『蜘蛛』さんもいなくなってしまった。


 引き換えで奪った敵戦力は30を下回る程度。

 本格的な戦闘開始時が100だったことを考えると、4分の一は削れた計算だ。

 悪くない。


 だが、戦力を失ったのも事実。

 残りの雑魚を突っ込ませて時間を稼ぐ。

 ここで、オレは小休止をとるからだ。



 『ドレインモスキート』を呼んで、オレに『エナジードレイン』を使わせる。

 『無限魔力』を利用しない手はないからな。

 定期的に吸収させていた。


「お。いけるね」

 『ダンジョンポイント』が必要数に達した。


 『『ダンジョンレベル』が40となりました。レベル40までのモンスターを作成可能です。また、このレベル帯のモンスターの配置位置を変更できます』

 システムが嬉しい報告をくれた。


 30階層までのモンスターは、今の戦闘でほぼほぼ壊滅している。

 新たに40階層までのモンスターを出せるのはありがたい。


「さぁ。つーづけーるよー!」

 今度は、もっと『深い』ところから呼ぼう。

 もっと、濃くて、重くて、えげつないやつを。


 だって、せっかくの舞台だもの。

 幕が上がったなら、最後まで踊ってもらわなきゃ。




 戦闘に集中していく。

 ポイント集めの事務は、助手に丸投げしよう。


評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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