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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第19話 末路② ~音と糸~ 

6/9

 


 カサ……カサカサ……カサカサカサカサ……!


 背後から、乾いた波音のような脚音が追いかけてくる。

 それは、風でも水でもない。

『命の音』だった。


「追ってくる──!?」


「さっきのだ! 出口塞げ!」


 双子が魔法使いの襟をひっつかんで振り返させる。


 パチ……パチパチ……カサ……カサ……。


 通路の闇の奥から、何かが跳ねる音。

 ぶつかる音。

 這いずる音。


 それは、『見えないのに確実に近づいてくる』音。


「ひっ!」


 魔法使いの喉が引きつる。

 それでも、震える手で杖を構えた。


「【ファイアウォール】!」


 ボウッ! ゴォォォォ……!


 通路の出口と中央に、炎の壁が立ち上がる。

 その瞬間、黒い波が火に触れ、爆ぜるような音を立てて弾けた。


 パチン! パチパチッ! ジジジ……ッ!


 焼け焦げる音。

 弾ける音。

 それでも止まらない、カサカサという音。


「や、やったわ! 57階層ボスのGよ!」

 震え混じりの声に、かすかな安堵が滲む。


「よくやった!」

「Gにはやっぱ火よね!」

 双子がすかさず囃した。



「ね、ねぇ。いなくなったんだけど?」

 そこへ、震えながら歩み寄ったのは回復役だ。


 いなくなった、というのは剣士のようだ。

 先頭切って走っていったはずなのに姿がない。


「勢いづけて行き過ぎたとか?」

「ありそうかも」

 Gの恐怖で、息が続く限り走ったというのはありそうだ。


「仕方ない、わね。迎えに行ってあげようか?」

 Gの焼死体でいっぱいの通路から目を逸らして、魔法使いが提案した。

 いずれは水で洗い流さなくてはならない(風で飛ばすと灰が空気中に散って吸ってしまう)だろうが、今はやりたくなかった。


「そう、だね」

「しゃーないなー」

「世話が焼けるわー」

 四人が、そろって62階層を進み始める。



 彼女たちは知らなかった。

 剣士もそこにいたことを。


 ただ、高さが違っただけだ。

 剣士は頭上にいた。

『オニグモ』さんによって、吊り上げられていたのだ。


 60階層ボス、『オニグモ』。

 蜘蛛のモンスターということで、誰が名付けたのか愛称はアルケミーだ。


 大きな体と強靭な糸を持つ蜘蛛。

 そのモンスターだ。


 剣士は、天井から吊るされていた。

 糸に巻かれ、身動き一つ取れず、ただ震えていた。


 口も塞がれ、声は漏れない。

 だが、目は見開かれたまま。

 助けを求める視線だけが、虚空を彷徨っていた。


 糸の隙間には小さな蜘蛛がいた。

 糸の隙間を、カサ……カサ……と這い回る小さな影。

 背中に赤い斑点を持つ、無数の小さな蜘蛛たち。


 チク……チク……チク……。


 手足の先から、針のような痛みが走る。

 それは、刺すのではなく、埋め込むような感触だった。

 背中の赤い蜘蛛だ。

 59階層ボス、『セアカゴケグモ』である。


「ぐッ、ンググッ!」

 声も出せぬ状態で、剣士は手足の先からゆっくりと噛まれるのだ。

 手足の先から広がる痛みに、剣士は意識の境界をさまよっている。


 全身に広がる激痛、発熱などなど。

 いろんな症状があるらしいが・・・。


「ゴフッ、ぐッ、ウゥゥゥゥ……」


 糸の奥で、剣士の体が震えた。

 熱と痛みによる嘔吐。

 糸の隙間から、濁った液体がぽたぽたと滴り落ちる。


 床に広がるそれは、甘く、鉄のような匂いを放っていた。


 それは、命が焼ける前に流す『最後のしるし』だった。



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