表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/57

第12話 レイド主力メンバーの動き~経験値ゼロの英雄たち~ ③

6/7

 


「狼狽えるな!」


 リーダーが声をかけた。

 その声は、冷たく、乾いていた。


「ダンジョンでの意図しない殺傷は、『事故』だ。罪に問われることはない!」


『死』は、ただの数字。

『仲間』は、ただの戦力。

 それが、探索者の現実だった。”


 蘇生は・・・できなかった。

 『エリクサー』は貴重だ。


 校内で作り出せるのは高位ヒーラーにして薬師の『岩清水一葉』だけ。

 作成に必要なアイテムや魔力も尋常なものではない。

 数本しかないと言われているし、保管は一葉自身だけが行っている。


 『先駆け』を担う彼等にさえ、譲られてはいないのだ。

 実は、校外に高値で売り払われていたりするのだが、校内でそれを知っている者は片手で数える程度しかいない。


「それよりも、見ろ!」

 リーダーが指さしたのは、三度の火魔法ではびくともしなかった『ミヤマクワガタ』が、無残に潰れている様だった。


「昨日は火で一撃だった。今日は三発でも倒れない。これは、属性が反転している可能性がある。この先、敵は全て初見のつもりで対応しろ!」

 彼等は無能な輩ではない。

 事実を受け止め、対応策を考える頭があった。

 即座に状況を理解して対応して見せる。


 それは、昨日までのデータを捨てて、改めてデータを取り直すということである。

 すでに踏破したはずの階層ではなくなり、初めて通る階層を進むことになる。


 昨日までの自信が、今日の迷宮に拒まれた。

 それだけで、彼らの足取りは重くなった。

 まるで、迷宮が彼らの罪を数えているかのように。


 昨日の足跡が、今日の罠になっていた。

 迷宮は、彼らの罪を忘れていなかった。

 それは、カルマの沈黙から響く、ダンジョンの声だった。


 真っ青な顔の女メイジBを支えるように囲んで、7人に減ったパーティが進む。

 その頭上を『トンボ』が、静かに旋回していた。

 誰の背中を狙っているのかは、まだ誰も知らない。


 ◇観察者視点◇


「やれやれ、ゴミのポイ捨てはよくないよ?」


 ウィンドウ越しに一連の騒ぎを見ていたカルマは、 口元に笑みを浮かべながら首を振った。 その目は、どこか楽しげで、どこか壊れていた。


「そう思うだろ?」


 掌をゆっくりと開く。

 そこには、無数の蟲が蠢いていた。


 脚が絡み合い、羽が震え、顎がカチカチと鳴っている。

 黒光りする甲殻が、カルマの手のひらを這い回るたびに、皮膚の上に赤い線が刻まれていく。

 だが、彼は痛みを感じていない。

 むしろ、愛おしげに目を細めた。


「お前たちも、ずっと我慢してたもんな。ねぇ、そろそろ・・・遊びたいよね?」


 カサ……カサカサ……カリカリ……。


 蟲たちが、応えるように音を立てる。

 それは、歓喜のざわめき。

 それは、飢えた者たちの合唱。


「うん、いい子たちだ。あいつら、まだ『昨日の迷宮』にいるつもりらしいよ。だったら、教えてあげなきゃね。ここが誰の世界かってさ」


 カルマは、指先で蟲の一匹をすくい上げる。

 それは、目も口もないのに、まるで笑っているようだった。


「行っておいで。好きにしていいよ。・・・全部、食べていい」


 指先から滑り落ちた蟲が、床に着地する。

 その瞬間、モニターの中で、どこかの通路の壁が『脈打った』。


 迷宮が、呼吸を始めた。

 蟲たちが、目を覚ました。


 カルマは、椅子にもたれかかり、ウインドウに映る『英雄たち』の姿を見つめながら、 ゆっくりと、口角を吊り上げた。


「さあ、始めようか。『お掃除』の時間だよ──」



 カルマの意思のもと、虫たちが動く。

 肉食獣のような派手さはない。

 沈黙の狩りが、見えないところで始まった。



評価いただけると続編を書く意欲に直結します


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ