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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
マイルド(全年齢)版

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第20話 レアモンス ~カエル、妖怪になる~

5/5



 『タオシテキタゾ』

 サブマスが戻った。

 意気揚々とした態度だったが、どこか抜けている。


その直後、キアゲハの群れが襲いかかってきた。

短絡的だが、さっきよりも数が多い。

勝利してきたことで力を得たらしく、サブマスターが下剋上を狙ってきたのだ。

 

『キャハハハハハ! ニンゲンヲカテニ、ワレハアラタナチカラヲエタ。ワタシコソガ『ダンジョンマスター』ニフサワシイ!』

 『人間』を倒して経験値を得たようだ。

それで力が上がったので、『勝てる』と踏んだのだ。


サブマスの反抗。

ありがちな話だ。

だから、裏切られることに慣れたオレは驚かない。


「『電気ラケット風蠅叩きソード』!」

55階層奥の宝箱に入っている神話級武器だ。

対虫攻撃時に攻撃力2倍で敏捷性1.5倍という優れものの装備である。


見た目は一回り大きくなった『蠅叩き』でしかないが、なんと雷魔法付きでインパクトと同時に電気が走るという魔法剣でもある。

いわば,『決戦用装備』だ。


『最深部モンスター』の討伐を目的としていた今回のレイドでは、各階層の探索は二の次で駆け下りていた。

そのため、本来は有効なはずの装備品の類があちこちに放置されたままとなっていたのだ。これを、いくつか回収しておいた。


こんなこともあろうかと!


「『バグズキラーストラッシュ』!」

厨二病っぽい必殺技名を叫んで、蠅叩きを振り下ろす。


スパン! バリバリッ!


小気味のいい音がして、キアゲハの翅が散った。

胴体が床に落ちたが、立て直す余裕を与える慈悲はない。


『ムシミツブシ』。

58階層の宝箱に入っていた品だ。


対虫型モンスター用足装備の・・・スリッパ。

これを装備して、虫型モンスターと戦闘状態になるとある技が発動する。


「喰らえ! 『ペストパウンダー』!」

そのままずばり、『害虫を叩き潰す』技である。


 足の下で、何かが潰れる感触がした。

 一瞬後、経験値が入って来る。


 『『サブマスター』を討伐しました。『迷宮の複座に座すもの』の称号を獲得。既得の『首座簒奪者』と統合され『迷宮の再誕者』の称号が与えられます。これにより、不可能だったダンジョンの組み換えなど各種権限が解放されました』

 「おお。そうか。サブマスターが現存していたから勝手にはできないって話だったのか」

 それが、サブもいなくなったからフリーハンドで弄れるようになったと。


 『サブマスターが取得していた魔力の回収に成功しました』

 かなりの魔力が手に入ったようだ。


 『ダンジョンレベル』を60まで上げられる量である。

 そりゃ調子に乗って下克上も狙うわ。

 もちろん、速攻で上げた。


 『『迷宮の再誕者』取得により、『構造変容(アーキ・シフト)』が解禁されました。ダンジョンの構造変更が可能になります。『禁種錬成フォービドゥン・フォージ』が解禁されました。レアモンスターの作成が可能になります』

 おお。一気にできることの幅が広がったな。


 「といっても『ポイントがあれば』、なんだろ?」

 『その通りです』

 やはり、そこは制限付きか。


『システム』があることから、薄々わかっていた——言われていた——ことだが『ダンジョン』は何者かの意志で創生された何らかの『ゲーム』なのだ。

あるいは『試練』か?

そうでなければ、モンスターやトラップはともかくドロップアイテムや宝箱の存在に違和感が出る。

なぜ、わざわざ侵入者の力を上昇させるようなものが用意されているのか? とな。


「今考える事じゃないな」

頭を振って考えを振り払った。


居残り組は片付けたが、主力級がここを目指して移動中だ。

『ダンジョンマスター』と『サブマスター』を討伐して、オレ自身もレベルが上がってはいる。だが、戦闘特化型の、それもパーティとの直接戦闘は分が悪い。

これを退けるまでは他のことにリソースを割くべきではなかった。


 さて。

 そうなると・・・。


 「なるべく、『ポイント』を使わないでレアなモンスターを作りたいんだけど。効率よく作る方法ってある?」

 強力なモンスターを作るのは当然として、『ポイント』消費は抑えたい。


 『現存するモノを利用する方法があります。現有のモンスターやアイテム、『お客様』でも可能ですね』

 「え?」

 ちょっと待て。

 『お客様』って人間のことだよな?


 「倒した『お客様』を素材にするのか?」

 『肉体の再利用や既存の能力付与、思考力の形成など。生成工程を簡略化できるため効率的です』

 「それ。作ったあとで反抗されないか?」

 効率的というのは理解可能だけど、それはつまり殺した相手を改造して復活させるってことであるわけだから、起こり得るよな?


 『敵対行動の禁止を刻み込めば危険はありません』

 「ああ。そうか」

 ちらりとカエル女、仁科悠ちゃんの顔を見る。

 こんな状態にされているが恨めし気に睨まれるだけで済んでいるのは、反抗行為が禁止だからだ。

 

感情や意識は自由なのに、実際の行動には移せない状態。

 これを、前提として刷り込んだうえでモンスターにすればいいわけだ。


 「ためしに、悠ちゃんから変えてみようかな?」

 「えっ?」

 ギクッて顔で、後ろに飛んでいく。


 「わ、わたし、い、生きてるよ。い、一応かもだけど!」

 焦ったように反論してきた。


 「あ。生きてるとダメなのかな?」

 『ダンジョン内のモノとして認定されている必要があります。意識レベルがある程度まで減衰しているなどの条件をクリアしていれば問題ありません。彼女の場合は、意識の根幹に『再生虫』が入り込んでいるため可能です』

 「できるってさ」

 「ひっ、ひぃぃぃぃ!」

 

 「でも、虫かぁ。なにかなりたい虫っている?」

 聞くと、ブンブン首を振られた。

 いないらしい。


 「『虫』じゃないとだめだよね?」

 『『属性』を変えれば他のモノにも変更可能です』

 「ああ。『ダンジョン属性』か」

 そんなのもあったなぁ。

 構成を変えられるんだから、属性も変えられるわけね。


 「どんなのが有効なの?」

 『ジャンル特定のためのものですから、作成者の任意で問題ありません』

 「任意か」

 それなら、思い切り趣味に走っちゃうよ?


 「・・・『妖怪』とかあり?」

 人間を使うのなら、動物とかよりそっちの方が楽だと思うんだけど?

 隣県が妖怪王国なので、そっちの知識も豊富なつもりだし。

 妖怪天国の砂丘がある地域には負けるかもしれんけど。

 

『一つのジャンルとして確定できますから可能ですね』

 「ありだって! どうする? 魔職だし選択肢はあるよ?」

 「ヒェッ!」

 ガタガタ震えて、悠ちゃんは膝をついてしまった。

 あれは絶対にイヤらしい。


 他にも選択肢はある。

 いくつか例を挙げた上で、『妖怪化』へ向けて提案することにした。


 「んーと。『妖怪』になるなら、服も着せてあげるよ? 人間らしく」

 『元』はつけるにしても、ね。

 もう一歩譲歩してみた。


 「ふ、服? に、人間の定義って・・・服?」

 「カエルは服着ないでしょ?」

 「よ、ようかいに、なり、ます」

 「イヤなら無理しなくても・・・ほかの選択肢探そうか?」

 なんか言わされています感があるので、冷静に聞いてあげる。


 「妖怪にしてください! お願い!」

 「うんうん。新しい一歩だね」

 本人の意志は固いようだ。


 カエル女の妖怪化。

 選ばれるのは、あの『ぴったりな存在』しかないだろう。


 「服、また着れる・・・んだね」

 手足を見下ろして、カエル女が呟いていた。

それは、 かつて誰かに選んでもらった色の、かつて誰かに褒められた形の、そんな『自分』を思い出すための布だった。



服を着せた。

それだけで、少しだけ心が静かになった。


慈悲?

独善?

支配欲?


何にしても、ちょっとホッとしている自分がいた。

それは、 誰かに服を着せたことが、『誰か』を守ったような気がしたからかもしれない。



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