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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
マイルド(全年齢)版

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第19話 63階層の戦い 決着編 ~最後の一撃~

4/5

 


 戦いの帰趨は決した──そう思ったのも束の間。

 人間側は、しぶとく戦線を持ち直していた。


「ああ。谷垣涼香か」

 筋肉質な大剣使い。

 戦術面では脆いが、彼女には災害級のスキルがある。


『扇動者』。

 劣勢下で混乱した味方を強制的にバーサーカー化させる凶悪な能力。

 使用禁止とされていたが、今は誰も止められない。


 誘導された者は、いわゆるバーサーカー状態となり戦力が上がる半面、物を考えられなくなってただひたすら暴れることになる。

 あまりに強力であるため、使用を禁止されたスキルだが・・・。

 今となっては止める者もいないのだ。


「クソ! バカにできんな」

 ものすごい勢いで、モンスターがやられていく。


 あとは少しずつ削るだけ。

 そんな消化試合になるかと思っていたのに、しのがれてしまいそうだ。


 つまり、戦力が途切れそうってこと。

 作ればいいって言えば、そうなのだがここはレベルアップを優先したい。

 新たに『戦力』を作るとなると『ダンジョンポイント』の消費が大きすぎるのだ。


「もう一度、レベルアップだ」

 『無限魔力』のゴリ押しで、50へと到達させる。

 魔力生産器が増えているおかげで、蓄積はそこそこあった。

 そこへ上乗せすれば・・・。


「『ダンジョンレベル』が50となりました。レベル50までのモンスターを作成可能です。また、このレベル帯のモンスターの配置位置を変更できます』

 システムの声が頭に響く中、50階層までの全モンスターを63階層へ再配置。

 戦線へ投入する。


 それだけではない。

 50階層以降となれば、63階層まで13階層。

 自力で移動させても、それまでの距離だ。


「50から62までの全モンスターに63階層への移動を指示する!」

 配置変更での召喚ではなく、階段を使っての物理移動だ。

 50までのモンスターがやられたら、即戦線に出せるよう63階層入り口周辺で待機させておく。


 50階層までのモンスター。

 主力は『ヒラタクワガタ』、『コカブトムシ』、『カナブン』、『オオスズメバチ』となる。


 全体的に機動重視の軽量タイプが揃っている布陣だ。

 これで引っ搔き回して、さらなる戦力の抜き取りを行う。


 もう一息で、敵陣地の『人間』は50を切る。

 そうなれば、最後の戦力である50から62までのモンスターで片付けられるはずだ。

 魔力も体力も、もうそろそろ底をつくだろう。


 50から62までのモンスターは、『カブトムシ』、『オオクワガタ』、『アゲハチョウ』。

 そして、最終戦力62階層ボスの『大百足』と重量級が揃っている。

 畳掛けられるはずだ。


 だが、カルマは気づく。

「アゲハチョウなんていたか?」

 トンボはときおり見かけることもあったが、チョウの類は見たことがない。


 システムが答える。

『いましたよ。63階層のボスですから。職務放棄していただけで』


 『いましたよ。63階層のボスですから。職務放棄していただけで』

 システムさんがなんてことないように教えてくれた。


 いや、それ『いた』って言わないだろ?!


「そもそも、職務放棄ってなに?! モンスターだよね?!」

 『ダンジョン』——盤上——のコマに自我があるとでもいうのか?!

 そう思って気付く、そういえばこの『システム』もたいがい人間臭い。


 『ダンジョンのサブマスターです。モンスター扱いですが、思考力を持っています』

 サブマスもいたのかー。


「先代の『ダンマス』が作っていたのか」

 『いいえ。ダンジョン起動時にデフォルトでマスターとサブマスターは一体ずつ付属されています。どちらかが、どちらかを作るという関係性ではありません』

 作られたわけではないと。

 なら、敵討ちとかされたりはしないかな。


 『起動』とか『付属』という単語は、気が付かないふりで流した。


「呼べるかな? 一度話しておきたいんだけど?」

 『呼べます』



 『ナニヨウカ』


 呼べますって答えが聞こえた直後、目の前に『ソレ』は現れた。

 ほぼノータイムだ。


 見た目は・・・キアゲハ。

 黒いところがほとんどなく黄色が多い。

 大きさは翅もいれると縦100の横80くらいありそうだけど。


「はや?!」

 『テンイマホウツカエル』

 甲高い声が頭に響く。


 『システム』と同様、頭に直接語り掛けるタイプだ。

 チョウだから仕方がないのかもしれない。

 発声器官がないわけだからな。


「転移魔法か。それは便利そうだ」

 『ソウダトモ! アラタナ『マスター』ハマホウニリカイガアルヨウダ』

 心なしか、得意気な雰囲気が感じられた。

 魔法にこだわりがあるようだ。


「先代のダンマスは理解がなかったわけだ」

 『アア。マッタクナカッタ。アノ、ノーキンメ!』

 ノーキンって・・・脳筋のことか。

 価値観が真逆だったわけだ。


「だから、職務放棄していたのか?」

 『ホウキハシテイナイ。チョットハナノミツヲスイニイッテイタダケ』

 うん。ウソですね。わかります。


 『ダイイチ、ノーキンカラハ63カイソウニイロトイワレタダケダ。ソレデイテアノトオリノクウハクチ。ベツニイルイミモアルマイ?』

 63階層のボスに指定しておいて、その63階層は手付かずで放置。

 それは、こういう反応にもなるかぁ。


「そうか。なら、今は仕事できるか?」

 『シゴト?』

「あの連中を倒すんだ」

 63階層の生き残りを指し示す。

 もう、立っているのは20人いないくらいまで減っていた。

 代わりに、カルマ側の戦力は壊滅している。


 『カンタンヨ』

 キアゲハは、転移魔法で即座に戦場へと現れた。

 鮮やかな黄色の翅を広げ、空を覆うような眷属を率いて戦場へ。


 迎え撃つ人間たちは、火属性の魔法弾幕を展開。

 だが──


「リフレクションか」



 ここまで『蝶』のモンスターを見かけなかったのと同様。

『魔職』のモンスターもいなかった。

 魔法を使わないという思い込みがあったからこその全力の魔法攻撃。

 これを全部返されたわけで、無防備に受けている。


 もちろん、全滅だ。

 爆炎の中、命の輪郭が静かに消えていった。


『フフフ。コレガマホウノチカラ』

 キアゲハの恍惚とした自己満足の呟きが聞こえた。



 爆炎の中、涼香だけが立ち上がる。

 ゆらゆら揺れてはいるが、筋肉にはいまだ熱がある。

 でも、心はもう、行き場を失っていた。


「まだ、終われるかよ!」

 その声は、かつて誰かに守られた記憶を、もう一度、守り返したかっただけだった。

 それだけの、張りのない叫び。

 目的を失った棒立ち状態。


 そこへ影が差す。

 すぐに、空を飛ぶモンスター『メガネウロ』に回収されていった。


 ◇


「ようやくか。意外に負荷がかかったな」

 戦力を使い切ってしまった。


 しかも昼時だ。

 主力が64階層を踏破するのにかけた時間は10時間。

 二度目ということで早まると仮定すると最短で8時間でここに来る。


 出発してから五時間が経過した。

 あと3時間でお迎えの準備を整えなくてはならない。


「急ごう」

 勝ったはずの心に、少し冷たい風が吹いている。

 そのことを、カルマは『焦り』で誤魔化した。


 勝ったはずの心に、少し冷たい風が吹いている。

 それは、誰にも見られなかった『教室の勝利』と、何も変わらなかった。

 分かち合う『誰か』がいるわけではなかったから。



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