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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
マイルド(全年齢)版

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第17話 カエル女の憂鬱◇仁科悠視点

2/5

 


『ダンジョンマスター』——『ダンマス』カルマが戦闘を指揮している。

 3Dウィンドウで、まるでゲームでもしているように。


 その横で、私もゲームをしている。

 都市開発ゲームだ。


 ダンジョンの片隅に設定された『巣』。

 これの運営をして効率よく生産するのが目的。


 なにを生産するのかって?

 決まっている。


 新世代の『虫』たち。

 そして、『魔力』だ。


 『巣』は六角形を基本に構成されている。

 簡単に言えば『蜂の巣』だ。


 機能性抜群のカプセルホテル。

 それが『巣』だ。


 大きな台座に、人ひとりがすっぽり入るくらいの間仕切りがある。

 くらいの、ではないわね。

 実際、人が入るのだから。


 人とは言うが、実際は少し小さめだ。

 身体は不要カ所のない最小限の状態に整えられ、巣の構造に合わせて収められている。


『巣』の構造に適合した人間が、間仕切りにぴったりとフィットしている。

 嵌め込まれていると言っても、密閉感はさほどないと思う。


 体の前面は解放されているのだ。

 魔力の吸収やモンスターの成長に支障がないよう設計されていた。


 その代わり、一部を粘着力のあるもので巣と一体化するほどに安定させている。

 暴れないようにと、常に『誰か』が押さえているというのは効率が悪い。

『虫』たちの自由な生活にも支障が出る。


 よって、『人間』たちを『巣』に安定的に常駐できるようにした。

 大丈夫。

 不便はない。


 食事は常に運ばれてくる。

 おっきなトンボや蜂さんが運び込んできた『栄養物』を受け取り、黒い体の『シデムシ』さんによっ供給され、不要なものは丁寧に処理される。

 すべてが循環する設計になっている。


 この配置なら、魔力の回収効率は最高。

 虫たちも快適に育つし、資源の損耗も最小限。

 ほんと、よくできてる。

『ダンジョン』の機能を大分使い慣れてきているのではないだろうか?


 排泄物の処理もお任せだ。

 親切な『シデムシ』さんがちゃんと拭き取ってくれる。

 これは、生まれた『子供』たちの成長支援用の栄養物に当てられるので、一切ムダがない。


 ああ。適合させるのに際して取り除いた部分は『栄養物』に、固くて扱いにくいモノは丁寧に砕いて『子供』たちの栄養だ。

 虫たちにとっても、カルシウムは成長に重要らしい。


 単体の『巣』のときにいた『回復役』も、今は『間仕切り』の中だ。

 回復は『再生虫』がしてくれる。

 死んでないからか私のように支配権を奪われたりもせず、ただただ魔力の塊が移動した痕を癒してもらうだけだ。


 私の場合。

 心肺停止の期間が長すぎて、脳にも支障が出ていたのだろうと言われた。

 損傷した脳を『再生虫』が補助しているから、こんななのだろうというわけ。

 そういうことかーって納得しちゃったわよ。


 この調子だと、次世代の羽化も近い。

 巣の拡張も考えなきゃね。

 もっとたくさん、育てられるように。


 って、そんなことはカルマがもう考えているんでしょうけど。

『人型資源』が増えるかどうかは、彼が決めることだから。

 私はウィンドウ越しにモンスターたちを管理し、巣の維持を行っていた。

 それは、奇妙な充実感を伴う作業だった。


 思うところがあるとすれば、跳ねることも、笑うことも、もう命令だってこと。

 でも、『命』を扱うことへの憂鬱だけは、まだ自分のものだった

 それは、 かつて誰かを守りたかった『私』の、数えるほどに少なくなった灯りだった。


「あれ?」

 そんな中、私は、ふと気が付いた。


 寄生下にあるモノたちが静かになっていた。

 幼虫が巣立ったわけじゃない。

 まだ元気に彼女らの寄生された者の中で、静かに成長を続けている。


 痒いはずだ。

 なのに動かない。


「どしたの?」

 モンスターの再配置を終えたカルマがのぞき込んできたので説明する。


「それは・・・おかしいな?」


 ◇カルマ視点◇


 どうしたんだろう?

 疑問に思ったのだが、『システム』さんが素っ気なく答えを教えてくれた。


 『魂を使い切ったのですよ』

 それが答えだ。


 苦痛や精神的ショックを与えるとことで魂を破断。

 この欠片を『ダンジョン』は『ソウルポイント』として収集している。


 この『魂の破断』によって魂が限界まで摩耗してしまっているというのだ。

 魂が『白化』した状態なのだと。

 感情も感覚もなくなり、漂白されている。

 だから、もう苦しむことがないのだ。


 『わかりやすく言うなら、転生時と同じです。死によって天へ還った魂が浄化され、まっさらになって再び地上に還る。その状態です』

 『システム』が説明を続けてくれる。


 『ただ、普通はそれでも『人』として生きた経験があるため高確率で『人』に転生します。救いがたい悪人の場合は粉々に砕かれて、破片一つ一つが動植物になったりもします。ですが、『白化』すると、確率はまるっきり0になる』

 『人』は無理で、動植物にすらなれない。

 なら、どうなる?


 『微生物からやり直しです』

 おお、生物としての原初からリスタートか。


「次に生まれて来るときは真人間になるんだよ」

 こちらも無垢な心で語りかけた。

 いつになるか知らんけど。


「あれ? この状態でも生きられる?」

 『普通なら不可能ですね。ですが、この場に限定するなら問題ありません。『ソウルポイント』はもう取れませんが、『マナポイント』は取り続けることが可能です』

「なら、このままだな」

 魔力供給の機能は残るのだ。

 それなら、役に立ってくれるだろう。


 それはそうとして。

 『転生時と同じ』か。


「詳しいんだね?」

 転生に。


「いいえ!」

 なんか激しく否定された。

 感情的になった?


「でも詳しいよね?」

「お答えできません」

 今度は取り澄まして流された。


 追及はムダらしい。

 今は諦めよう。


 白くなった魂は、もう誰かの名前を思い出すことはない。

 それは、かつて誰かに呼ばれた声が、静かに消えていくということだ。


 ともかく、機能に支障はないわけだ。

 白くなった魂は、もう苦しまない=『ソウルポイント』は手に入らない。

 でも、『マナポイント』は今後も手に入る。


 機能を残しているものならば活用する。

 それが、ダンジョンの流儀だ。



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