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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
マイルド(全年齢)版

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第16話 63階層の死闘 前編 ~殺すより、使い切れ~

5話投稿します

 


 百合根先輩が防御を固めた。

 自力で防御陣まで辿り着けなかった者は完全無視の構えだ。


 戦術としては正しい判断。

 だけど、人間味はないね。

 いまさらだけど。


「では、はーじめーるよー!」

 意味もなく声を張り上げ、ウィンドウ上のモンスターを動かした。

 タッチ操作で画面上のユニットを動かすと、リアルのモンスターも連動して動く仕様だ。


 先行している『蟻』と『コガネムシ』。

 コガネムシが魔法を無効化してしまうせいか、人間側は弓が主体の攻撃に切り替わっている。


 予想出来ていたので、物理防御の『テントウムシ』さんを召喚。

 弓も無効化してやる。

 コガネさんと連携してアリさんを守ってあげてくれ!


 これで、下準備は整った。

 全面攻勢に入る。


 始まりの合図は『蝉』。

 それも、ボリュームのある音で知られる『クマゼミ』だ。


 敵陣を囲むように6体配置して、一斉に鳴かせる。

 仲間同士の連携が取りにくくなり、敵の動きを察知しにくくなるのが必定の環境に置く。

 単純に耳も頭も痛くなり、集中力も乱れることだろう。


 そこへ行うのは、守る側にとっては悪夢の惨劇だ。

 真上からのプレス攻撃。


 主体は『オンブバッタ』。

 全長3メートルに達するメスの上に、1メートルないくらいのオスがのったカップルのモンスターだ。

 これが5組、アタックした。


 外から跳躍、真上から落ちてくる3メートルの巨体。

 必死になって壁を作ったり、物を積み上げたりしていた人間の努力を無造作に踏みにじって真上から落ちてくる。


 土魔法や氷の魔法で防壁作った魔職の方々!

 ご苦労さん!

 そして、ゴチ!

 『マナポイント』の寄付、助かります!


 まさかの防壁内への攻撃。

 慌てた人間たちが、右往左往する中。

 静かに働くのは『蜘蛛』。


 『ムツトゲイセキグモ』。

 粘球というネバネバの球を付けた糸を飛ばして、狩りをする蜘蛛だ。

 通常種の主な狙いは『蛾』だそうだ。


 もちろん、ここにいるのだからモンスター。

 大きさは2メートルくらいで6体いる。

 狙うは当然『人間』だ。


 攻めてくる敵に備えていただろう遠距離専用の魔職。

 これを一本釣りならぬ、一本縄で捕えて引き寄せている。


 糸に絡め取られた魔職は、叫ぶ間もなく引きずられていく。

 周囲の仲間は気づいているはずなのに、誰も動けていない。

 それが、今の戦場の『現実』だった。


 中央部では、プレス攻撃を敢行した『オンブバッタ』のメスと、背中から降りて尖った身体で暴れまくるオスの対応で大騒ぎ。

 セミの声で悲鳴は届かない。


 捕えたら、『メガネウロ』に『巣』へ運んでもらう。

 魔力の高い者が優先的に『転職』させられていく。

 それは、カルマにとって効率的な選択だった。


 密やかな希望を胸に戦場を見渡せば・・・。

 耳を両手で抑えて、真っ青な顔でうずくまる女子とか。

 命にかかわりそうな傷を押して這いずる男子とか。

 彼ら、彼女らに似合いの現状が見られた。


 ちなみに、死亡確定のはみだし男君たちは『メガネウロ』や『キラーヴィー』に端っこの方からゆっくり静かに、『お役立ち』として回収していく。

  その過程は、あまりにも静かで、誰も目を向けようとしなかった。


 コンパクトな『資源』として『巣』へ運ばれている。

 ゆっくりとなのは『ソウルポイント』を貯めるため。


 死亡が確定的だからか、誰一人見向きもしていない。

 女子の中には汚いモノとして露骨に避けている者までいた。


 それでも、誰も責められない。

 今の戦場では、感情はただのノイズだ。


 視点をずらせば、エネルギー満点女子に『オンブバッタ』(オス)がタックル決めている光景があって、さすがに同情した。

 女子とはいえ、バッタさんよりは大きい。


 苦しくないかしら?

 オスと仲良さげに見えて、メスに怒られないかしら?

 そんなことを考えていたら、体格良く育った女子はメスに投げ上げられていた。


 もちろん、『メガネウロ』がスーパーキャッチしてリリースしてくれる。

 『巣』へ、な。

 エネルギー豊富だから『みんな』にも嬉しい獲物だろう。


 ◇戦術指揮官カルマ◇


「って、早いな」

 戦況へ目を向けると、『オンブバッタ』が全滅していた。


 さすがに後方支援ばかりとはいえ、100人もいるのだ。

 中層までならメイン戦力となりえる『探索者』も含まれている。

 しかも、こちらが出している戦力は30階層以下のモノばかり。

 圧倒できないのは仕方がない。


 現状、『ダンジョンポイント』はレベル上げに全振り中。

 一部遊びに使ってはいるけどね。

 なので、先代『ダンジョンマスター』が設置していたモンスターを63階層へ引き上げて再配置している。

 戦力がいまいちなのは仕方がない。


「ってわけで、行ってください! 『先生』!」

 後詰の戦力投入だ。


 飛んでいくのは焦げ茶色と緑の五角形。

 秋が深まると各家庭で対応に苦慮しがちなアレ。


 『カメムシ』。

 2メートルまでいかない全長だが、角ばっているせいでゴツク見える。

 何より、デカくなったアイツらが、臭い液を放出する。


 あの臭い、精神攻撃としては最高クラスだよね。

 コスパもいいし。

 風が吹けばなくなるから環境も壊さない。


 6匹しかいないが、その影響はすさまじい。

 女子を中心に戦闘どころではなくなって逃げだす者まで出ていた。


 あちらこちらで食べ物を戻して、地面にぶちまけているいる女子もいる。

 かわいそうに。


 食べ物が、な。


 その間にも、うちの蜘蛛さんが、それはもう忙しく働いてくれている。

 そうやって、混乱しているところへ。

 満を持して投入するのは、ある意味最強の刺客。


『アメリカシロヒトリ』。

 俗に『アメシロ』で知られる蛾の幼虫だ。


 夏の終わりなどに大量発生して、周辺の葉を根こそぎ食べ尽くす。

 その際、白い糸を吐くため、木が網をかけたように白くなることから山形県など一部地域では『アミシロ』なんて言ったりする害虫である。

 毛がモフモフしていて毛虫のように毒針があると思われがちだが、実は無毒。


 ただし、それは『リアル』の虫ならばの話。

 ここにいるのはモンスターだ。

 ちゃんと神経毒を仕込んであったよ。


 えらいね!

 先代『ダンジョンマスター』。


 こいつらを8匹、戦場へと投入した。

 白い糸がまとまりになって、霧のように噴き上がった。

 視界を奪われ、動きも鈍らせられる。

 風の魔法で防ごうとしているが、見た目の割に質量があるようで、飛ばしきれていない。


 女子の髪や服、男子にも、次々にまとわりついていく。

 それで業を煮やしたのだろう。

 埒が明かない、と魔職女が火の魔法を使った。


 これは効果があった。

 何人かが火の影響で混乱している。


 あの糸は燃えやすかったらしい。

 髪や服に張り付いていて、うっとうしそうに剥がそうとしていた者たちが燃えた。

 火の魔法を使った魔法使いは責められ、戦線の統制を乱す要因となっている。



 仲間同士の助け合い、支え合いが美しいね。

 感激のあまり涙で見えなくなりそうだ。

 

「まあ、統制は乱れたけど、『ソウルポイント』は増えたから合格かな」

 ご褒美に何か上げようかしらね?


 いい感じ。


 そう思ったのだが、臭いと音で危機感が盛り上がりでもしたのだろう。

 目を血走らせた女子数人が、やけくそ感丸出しでカメムシを葬り去るのが見える。

 その勢いのままに、アメシロ先生までもが焼き殺された。

 糸を焼かないよう肉薄されて、本体を焼き捨てられたのだ。


 殺される前に放出した『網』が、いい感じに死角を作ってくれている。

 蜘蛛さんたちは、未だ健在で活躍中だ。


 追い詰めすぎたか?


 そう思わなくもないが、おかげで『ソウルポイント』が爆上がりしている。

 音と臭いで相当に苦しんでくれたのだ。

 だから、後悔はしていない。


 気が付けば、アリさんも全滅していた。

 コガネさんとテントウムシさんも半減している。


 そういえば、セミも鳴いていない。

 よく見ると、男子のタンク職を中心に、防御陣地を出ている者たちがいた。

 バッタのプレス攻撃で、「守ってばかりいてはもたない」そう判断したものと思われる。


 百合根先輩、さすがです!

 冷静で大胆な判断だ。


「うんうん。がんばってるね!」

 えらいぞ!

 無理をしている分、『ソウルポイント』の上りが増えている。


「えらいから、ご褒美上げよう!」

 ポチッとな!


 タンク職を狙って、5体の隠し『玉』を送り出した。

 黒光りする表面。

 硬質な背中を丸めた『球体』。


 『ムシ』とついているのに実は甲殻類。

 ・・・って、言いつつ『虫』の定義は昆虫を含めた『小さい生き物』全般なので『虫』がテーマの『ダンジョン』でも出ておかしくはない。


 ・・・全長がメートル越えとなるものを『虫』と言っていいのかって疑問は、『無視』する方向で!


 その全長3メートル。

 丸まっているので直系は2メートルもない。

 そんなのが転がってきたら、人間はどうなるか?


「あははっ、人間が虫けらのようだ・・・っと。言ってみたかったんだよな。このセリフ」

 うん。きれいに撥ね飛ばされていったよ。

 思わず、笑ってしまったさ。


 旧校舎には、そもそも人がいないからな。

 言いたくても、言えなかった。


 もちろん、撥ね飛ばされた者は『メガネウロ』さんが空中でキャッチして運んでいる。

 そして、そうでなかった者はどうなっているかと言うと・・・。


 マンガか?!

 ツッコミたくなるほど見事に、人のシルエットを残している。

 巨体に押され、地面に形を残したのだ。

 地面が柔らかくてよかったね!


 ちょっといろいろ損耗もあるけど大丈夫!

 死んでなければ生きられるから!

 どちらにしろ、みんな『転職』することは変わらない。

 だから、大丈夫!


 他にもいろいろと損耗激しい者たちがいる。

 だけど、それはもうどうでもいいことだ。

 椅子の足が一本折れたなら、全部追って座椅子にする。

 その心意気でいれば万事問題ない。


 とはいっても、やはり勝ちきれはしない。

 配置したモンスターの主力が壊滅した。

 大活躍した『蜘蛛』さんもいなくなってしまった。


 引き換えで奪った敵戦力は30を下回る程度。

 本格的な戦闘開始時が100だったことを考えると、4分の一は削れた計算だ。

 悪くない。


 だが、戦力を失ったのも事実。

 残りの雑魚を突っ込ませて時間を稼ぐ。

 ここで、オレは小休止をとるからだ。



 『ドレインモスキート』を呼んで、オレに『エナジードレイン』を使わせる。

 『無限魔力』を利用しない手はないからな。

 定期的に吸収させていた。


「お。いけるね」

 『ダンジョンポイント』が必要数に達した。


 『『ダンジョンレベル』が40となりました。レベル40までのモンスターを作成可能です。また、このレベル帯のモンスターの配置位置を変更できます』

 システムが嬉しい報告をくれた。


 30階層までのモンスターは、今の戦闘でほぼほぼ壊滅している。

 新たに40階層までのモンスターを出せるのはありがたい。


「さぁ。つーづけーるよー!」



評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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