第9話 『ダンジョンマスター』 ~処刑の鐘~ ②
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「出せるモンスターは『蟲』だけか?」
『その通りです。カタログをご覧になりますか?』
「見せてくれ」
3Dウィンドウに、虫型モンスターの一覧が表示される。
サイズ、能力、特性、すべてがカスタマイズ可能。
表示されたのは、羽音、毒牙、群れ、擬態、孵化、寄生── どれも、静かに、確実に、侵食する者たち。
「・・・悪くない」
派手さはない。
だが、確実に蝕む。
それは、オレのやり方に似ていた。
だが、すべては『ポイント』次第。
「魔力上昇は毎時80ってことだけど、それ以外に手に入れる方法は?」
『異物が魔法を使用した際、余剰魔力を吸収できます。不発や外れた場合も同様です』
──なるほど。
無駄撃ちを誘えば、こちらの糧になる。
「よし、方針は決まった」
魔法を撃たせる。
マナポイントを蓄える。
ダンジョンを育てる。
「・・・いや、待てよ」
73000のマナポイント。
つまり、730ダンジョンポイント。
「レベルを上げるのに必要なポイント数は?」
『レベル5までは1レベルにつき30。5から10は50。10から20は100。以降は5刻みで、レベル数×50ずつ加算されます』
「よし。レベルを10まで上げてくれ」
合計400ポイントを消費。
残り330は、今後の布石に。
「さて・・・虫だけで、どうやって終わらせる?」
主力とは戦えない。
消耗するだけだ。
新たな強敵も作れない。なら──
「主力は足止めする。絶対に。ここで時間を稼ぐ。彼らが『勝利』を信じている間に、『敗北』を仕込む」
それが、唯一の勝ち筋。
奴らが再突入するまでに、こちらが『未知』を作る。
「システム。64階層のモンスターに変更を加えてくれ」
『変更内容を提示してください』
「三段階に分ける。序盤は得意属性と弱点属性を入れ替え。中盤は現状維持。終盤は完全ランダム」
モンスターそのものは変えられない。
だが、ステータスの変更はコストなし。
そこを突く。
『変更完了しました』
「よし。続いて──敵戦力を削る戦略を考えるぞ」
主力を避け、他の者たちでポイントを稼ぐ。
魔法を撃たせ、無駄撃ちを誘い、魔力を吸い上げる。
ダンジョンは、もう『彼らの舞台』じゃない。
ここは、オレの世界だ。
そして、オレはもう──『ただの人間』じゃない。
◇
朝が来た。
それは、祝福ではない。
ただ、処刑の鐘が鳴るまでの静寂だった。
レイド本隊が、再び64階層へと突入していく。
彼らは、勝利の余韻を引きずっていた。
英雄譚の続きを、当然のように期待していた。
だが──この迷宮は、もう彼らの知っている場所ではない。
配置は変わった。
属性は逆転した。
罠は、彼らの記憶を裏切るように潜んでいる。
『知っている』という油断が、最も深い罠になる。
本気の死闘。
オレは、もう誰のためでもない。
自分の意思で、この戦いを始める。
その幕が、静かに──切って落とされた。
あいつらが戻ってくる。
オレを捨てたまま、勝利だけを拾いに。
「何人、たどり着けるかな?」
オレは、待つだけでいい。
この迷宮の主として。
この世界の支配者として。
迷宮は、静かに呼吸を始めた。
それは、カルマの鼓動と重なっていた。
そして──その答えは、静かに、確実に刻まれていく。
迎撃という反撃が始まる。
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