『名を呼ばれぬ者』
「あはははは! 悪く思わないでよね! ダンジョン攻略では人死にも出るのは承知でしょ? あなた一人の犠牲でみんな幸せになるんだから、安いものじゃない?」
「大丈夫だって。クククッ。保険も入れてやったし、慰労金も出る。ははっ。ダンジョン年金だって、ちゃんとあるぞ?」
「ふふっ。ありがたーい制度よね、お国の。私たちの懐は痛まないし──気にしなくていいのよっ! あはは!」
「そういうわけだから。あは! 静かに眠るといいぞ!」
レイドの仲間たちから、ポンポンとありがたい励ましが飛んでくる。
「あはははは!」
誰かが笑えば、すぐに別の誰かが続く。
「あはっ、あははっ、あはっ・・・・・」
その笑いは、まるで決まりきった呪文のようだった。
「ひひゃははははははははは!」
感情のない音が、空気を支配する。
「フフッ、うふふフフフふっ!」
それは祝福でも、慰めでもない。
「あはははははは!」
ただ、犠牲を受け入れる儀式の一部と化していく。
「あはっ、あはは?」
誰も目を合わせない。
誰も、カルマの名を呼ばない。
ただ、笑っていた。
まるで、儀式のように。
呪いのように。
『・・・本当に、こうするしかなかったのか?』
そう問いたかった。
でも、誰も目を合わせない。
誰も、名を呼ばない。
それが答えだった。
命を担保にされたような状態で、立ち尽くすカルマ。
爆弾でも背負わされた気分だった。
彼等は躊躇いなく、人を、仲間を、消せるらしい。
人の命を機械的に処理してしまえるようだ。
仲間・・・仮にもそう思っていたのは『オレ』だけか。
彼ら、彼女らにとっては『消耗品』だったのだ。
オレは、ただの充電池。
だから、壊れる前に捨てられるのは当然だったのか?
諦念が心の中で競り上がる。
その下には、濁った泥のような悪意が、静かに渦を巻いていた
命を奪おうというのなら、自分の命を差し出す覚悟も当然あるよな?
だったら、もう我慢はしないぞ?
俯いたまま、口元だけがゆっくりと吊り上がる──まるで、何かが壊れたように




