少女と憂愁
身の回りのものがゆっくり故障していくんじゃなくて、ドンガラガッシャンと滑稽な音を立てて壊れてしまえばと思う。
たとえば、私が今乗っている電車が銀河鉄道みたいに飛び始めて、何かの間違いであのビルに衝突しないかな。
手にしているスマホをへし折ってやりたい。
電車を降りる時に、耳につけているイヤホンをホームに投げ捨ててやったらさぞ痛快で最悪な気分なんだろうな。
馬鹿な考えだってことは分かってるよ。でも気が付くと、こんなことばかり考えてしまう。
今朝もずっとこの調子でいると、駅にはすぐ着いた。私は急いで電車を降りる。
目に入ってくるもの、聞こえる音、ぜんぶが煩わしい。都会の雨みたいに、私が感じるもの全てが汚れてみえる。
ホームの階段を昇っていると、すれ違う人がみんな私をちらりと見る、わけではないけれど、何人かの人間が私を見て私の顔を見て、何か得したみたいな顔で横を通り過ぎた。
知らぬ間に私の身体のどこかに特売シールでも貼ってあるのかしら。
あーあ、素直に学校に行きたくないなって思っちゃう。純粋に生きていたくないなって思ってしまう。
こういう気持ちは決して表に出したりはしないけどね。
だって一過性の不調だもの。心の重さも。身体の重さも。
壁のシミみたいなものだ。放っておけばじきに忘れる。どうでもよくなる。
そんなものに一時でも振り回されているのだと思うと癪だけど、これも今更な話だから黙っておく。
でももし私がこの気持ちを素直にぶちまけたら、周りはどんな顔をするのだろう。
たまに想像する。
お母さんは呆れて笑うだろう。お父さんは苦虫をすりつぶしたような顔をするに違いない。
ミズキは「気分転換にカラオケ行くか」とか「恋人作れ!」とか言うのかな。
そういうことじゃないのに。私はこの気持ちの紛らわせ方じゃなくて、この気持ちを綺麗さっぱり掃除する方法を知りたいのに。
こういうこと学校で教えてくれたっていいのにね。私の知りたいことの一つくらい教えてよ。そしたら貴方たちが教えたいこと、全部聞きますよ!
外に出ると、冷たい風にびくっとなった。
私はマフラーに顔を埋める。
春になればこの気持ちは醒めてくれるのかな。あるいは学校に着いたら。家に帰ったら。明日になったら――一生ってことはないだろう。
だから私は下を向いて歩き出す。じっと寒さに耐え、一歩前に踏み出す。他のみんなと同じように。
そうして今日も街に溶けていく。




