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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
序章:平和な日々

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Episode:4 学校

 街の中が人で溢れかえる。

 その中で一人の人間を探すのは、簡単なことではなかった。

 青い髪の人間、目立つはずだが視界には映らない。

 自身の身長が高ければ、もっと楽に探せただろうに。


 人混みに目を凝らし、小さな目印でもないかと躍起になる。

 

 ない......ない......ない、ないない!


 賑わっている街の中では耳など役に立たない、人間より遥かに背の高い種族も入り乱れ、人が織りなす壁の向こうは見える領域じゃない。

 十五歳の僕は、それを見通せるほどの身長はない。


 直後、背後から耳に馴染みのある声が聞こえた。


「ルイン?」


 僕は振り返り、正体を確かめる。

 そこに立っていたのは確かに、見失ったはずの青髪の少女、エヴァだった。


 エヴァは近くの店か、屋台かで買ったであろう食べ物を頬張りながら僕の前に立つ。


「エヴァ......」


「にゃにをふぉんなあふぇっえうの?」


 エヴァは状況が掴めていないような表情で、咀嚼しながら話す。


「なんて?飲み込んでから話せよ」


 僕がそう話すと、エヴァは少し咀嚼を早め、飲み込んで口を開いた。


「何をそんなに焦ってるの?」


 エヴァのその言葉に、僕は肩を落とす。

 彼女は確かに強い。

 魔法は優秀で、校内じゃ指折りの魔術師だ。


 だが、街中で魔法を放てるほどの非情さは持ち合わせていない。

 だからこそ、人が溢れる今の状況は危険だと、エヴァは理解していない。


「何かあったのかと思ったぞ」


「何かって......?あ、食べる?」


「いらない」


 僕の心配をよそに、エヴァは悪気ない表情で食べ物を渡してきた。

 それが嬉しくもあり、少し腹立たしくもあった。


 僕は冷たく吐き捨て、先に歩き出す。

 エヴァは小走りでついてきた。


「早く行くぞ、遅刻する」


「まっへよー」


 苛立ちを誤魔化すかのように、足を早め、学校を目指した。


 数分経てば、立派な建物が見えてくる。

 白を基調とし、金色の装飾、緑色のレンガを扱う大きな建造物。

 校門から左側。

 学校の敷地内にある純白の時計塔は、この街を代表するものの一つだろう。


「やっとついた」


 僕は無意識にそう呟いていた。

 エヴァの姿を探した代償か、気疲れをしてしまったような。

 今になって疲れが一気に体にのしかかる。


「早く入ろ〜」


 そんな僕の横を通り、エヴァは先を歩く。

 僕はため息を漏らして、エヴァを追いかける。


 玄関からはいり、土足で校内に入る。

 校内にはすでに、人間、樹人(エルフ)褐樹人(ダークエルフ)蜥蜴人(リザードマン)獣人(アニマ)鍛人(ドワーフ)など、多種多様な種族が行き交っていた。


「人が多いな......」


 僕はそう呟いて、廊下を見渡す。

 端から端まで、廊下を横に見ても奥行きを見ても人で溢れかえっていた。


「実技試験の影響か......」


 ありとあらゆる魔法に精通した樹人。

 剣のみで魔法を叩く蜥蜴人。

 交易を求める獣人。

 武具を自慢し買わせる鍛人。


 種族の欲が詰まった実技、魔法を競い、武具を競い、剣技を競い合う。

 祭りと被ったこの日は、実技試験のみではない戦いが繰り広げられる。


 教室にはいり、席につく。

 廊下では人が通れないくらい溢れていた者たちも、教室までは入ってこないらしい。

 祭りの日まではこの状況なのを考えると、ひどく憂鬱な気分になる。


「早く帰りたい」


 小さくそう呟き、チャイムがなるのを待つ。

 実技試験期間中、座学は一切ない。

 魔法、剣術、槍術、ありとあらゆる戦術を磨くための期間に切り替わるからだ。


 直後、重い金属を叩くような音が始まりを告げる。

 実技試験が......始まった。

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