Episode:2 変わらぬ景色
視界に広がる草原。
木造の自宅から出れば、穏やかな景色が広がっていた。
太陽の光に目を細め、前を歩くエヴァを見つめる。
青い髪が太陽に透かされ、光に照らされた水のように輝いていた。
「なんか、テンション高いな、エヴァ」
僕がそう話すと、エヴァは振り返り、僕の横に並び歩き始める。
「まぁ、ねぇ」
「魔法の実技試験がそんな嬉しいのか?」
僕の言葉に、エヴァは少しだけ頬を膨らます。
「んなわけないでしょー。まぁ、ルインにはわからないかなぁ」
エヴァはニヤニヤと笑いながら、少し馬鹿にするように話した。
何かを隠している、誤魔化しているような感じはするが、彼女の綻んだ頬は、嫌味を一切感じさせない。
「言えないのか?」
「教えなーい」
僕の言葉に、エヴァはニヤニヤ笑い、大股で歩く。
まるで、何かいいことがあった時の子供のようだ。
身体は弾み、聞こえないはずの鼻歌まで聞こえてきてしまう。
それほど、エヴァは何かに喜びを感じている。
「実技試験って意味あるのかなぁ」
僕がそう話すと、エヴァが横で指を振って口を開いた。
「私たちの学校は王都にあるからね、いろいろな魔術師に見てもらって、必要であれば指導。将来のために引き抜きとかもあるし。でも、私は卒業したら、冒険者になりたいなぁ......もう十五歳だし」
「冒険者かぁ」
冒険者か......。いいかもしれない。
何にも縛られず、自分がしたいことをする。
自由だ。
「そう言えば、もう少しで王都のお祭りがあるね」
エヴァが話したその話題に、僕は首を傾げる。
「そうだっけ?」
「そうだよ、校内の掲示板にも張り紙あったじゃん」
言われてみれば、あったような気がする。
見てないというか、興味がないというか、案外情報は入ってこないらしい。
「毎年やって、よく飽きないよな」
「大事な行事だからね、王都が出来た日だし。七日後だね。ルインは行くの?」
エヴァの問いかけに、僕は少しばかり考える。
正直、気は進まない。
なぜかって?ただ、めんどくさい。それだけだ。
自宅から王都までは歩ける距離だが、それなりに時間はかかる。
祭りのためだけに行くのは、気が進まなかった。
「どうしようかなぁ。面倒だ」
「食べ物のお店も沢山出るよ?」
「別に大食いじゃないからね、僕」
どうやら、エヴァからすると僕は食べ物に釣られる人間らしい。
彼女の中ではそんな印象なのか。
エヴァは頬を膨らませ、何やら独り言を言っている。
小さな声は、はっきりとは僕の耳に入らなかった。
「ほら、もう王都に着くよ」
僕はそう言って、門番に学生証と通行証を手渡す。
エヴァもそれに続くように手渡した。
「ルインもエヴァも、遠くから偉いな」
門番がそう話す。
学校に通い始めてから、何度も話すようになった。
名前は知らないが、世間話をする程度の仲にはなっている。
「おじさんも、いつもありがとうございます」
エヴァがそう返し、小さく頭を下げる。
「よし、異常なし。通っていいぞ......。今日は実技試験だろ?魔術師の出入りが多い、頑張れよ、二人とも」
門番から学生証と通行証を手渡され、それをポケットに押し込む。
「適当に頑張りますよ」
僕はそう言って門を潜った。
門を潜ると視界に飛び込んできたのは、石畳の地面と、多彩な色を使った建造物。
人の群れと、活気のあふれる声だった。
「相変わらず盛り上がってるというか、騒がしいというか」
僕はその光景にため息を漏らしながら歩き出す。
「そう?私は好きだけどなぁ」
エヴァはそう呟いて、僕の後ろをついてきた。
目を輝かせるエヴァを横目に、僕は空を眺める。
「実技......嫌だなぁ」
小さく漏らした愚痴は、雲ひとつない快晴の空に吸い込まれた。




