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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
序章:平和な日々

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Episode:2 変わらぬ景色

 視界に広がる草原。

 木造の自宅から出れば、穏やかな景色が広がっていた。


 太陽の光に目を細め、前を歩くエヴァを見つめる。

 青い髪が太陽に透かされ、光に照らされた水のように輝いていた。


「なんか、テンション高いな、エヴァ」


 僕がそう話すと、エヴァは振り返り、僕の横に並び歩き始める。


「まぁ、ねぇ」


「魔法の実技試験がそんな嬉しいのか?」


 僕の言葉に、エヴァは少しだけ頬を膨らます。


「んなわけないでしょー。まぁ、ルインにはわからないかなぁ」


 エヴァはニヤニヤと笑いながら、少し馬鹿にするように話した。

 何かを隠している、誤魔化しているような感じはするが、彼女の綻んだ頬は、嫌味を一切感じさせない。


「言えないのか?」


「教えなーい」


 僕の言葉に、エヴァはニヤニヤ笑い、大股で歩く。

 まるで、何かいいことがあった時の子供のようだ。

 身体は弾み、聞こえないはずの鼻歌まで聞こえてきてしまう。

 それほど、エヴァは何かに喜びを感じている。


「実技試験って意味あるのかなぁ」


 僕がそう話すと、エヴァが横で指を振って口を開いた。


「私たちの学校は王都にあるからね、いろいろな魔術師に見てもらって、必要であれば指導。将来のために引き抜きとかもあるし。でも、私は卒業したら、冒険者になりたいなぁ......もう十五歳だし」


「冒険者かぁ」


 冒険者か......。いいかもしれない。

 何にも縛られず、自分がしたいことをする。

 自由だ。


「そう言えば、もう少しで王都のお祭りがあるね」


 エヴァが話したその話題に、僕は首を傾げる。


「そうだっけ?」


「そうだよ、校内の掲示板にも張り紙あったじゃん」


 言われてみれば、あったような気がする。

 見てないというか、興味がないというか、案外情報は入ってこないらしい。


「毎年やって、よく飽きないよな」


「大事な行事だからね、王都が出来た日だし。七日後だね。ルインは行くの?」


 エヴァの問いかけに、僕は少しばかり考える。

 正直、気は進まない。

 なぜかって?ただ、めんどくさい。それだけだ。


 自宅から王都までは歩ける距離だが、それなりに時間はかかる。

 祭りのためだけに行くのは、気が進まなかった。


「どうしようかなぁ。面倒だ」


「食べ物のお店も沢山出るよ?」


「別に大食いじゃないからね、僕」


 どうやら、エヴァからすると僕は食べ物に釣られる人間らしい。

 彼女の中ではそんな印象なのか。


 エヴァは頬を膨らませ、何やら独り言を言っている。

 小さな声は、はっきりとは僕の耳に入らなかった。


「ほら、もう王都に着くよ」


 僕はそう言って、門番に学生証と通行証を手渡す。

 エヴァもそれに続くように手渡した。


「ルインもエヴァも、遠くから偉いな」


 門番がそう話す。

 学校に通い始めてから、何度も話すようになった。

 名前は知らないが、世間話をする程度の仲にはなっている。


「おじさんも、いつもありがとうございます」


 エヴァがそう返し、小さく頭を下げる。

 

「よし、異常なし。通っていいぞ......。今日は実技試験だろ?魔術師の出入りが多い、頑張れよ、二人とも」


 門番から学生証と通行証を手渡され、それをポケットに押し込む。


「適当に頑張りますよ」


 僕はそう言って門を潜った。


 門を潜ると視界に飛び込んできたのは、石畳の地面と、多彩な色を使った建造物。

 人の群れと、活気のあふれる声だった。


「相変わらず盛り上がってるというか、騒がしいというか」


 僕はその光景にため息を漏らしながら歩き出す。


「そう?私は好きだけどなぁ」


 エヴァはそう呟いて、僕の後ろをついてきた。

 目を輝かせるエヴァを横目に、僕は空を眺める。


「実技......嫌だなぁ」


 小さく漏らした愚痴は、雲ひとつない快晴の空に吸い込まれた。

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