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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
序章:平和な日々

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Episode:1 いつもの朝

 太陽の光が瞼を貫き、暗かったはずの視界を白く染める。

 僕は布団を掴み、頭まで被った。


「ルイン!早く起きなさい!」


 僕を呼ぶ母親の声が二階まで響き、その声に眉を歪める。

 騒がしい......。

 もう少し寝ていたい。


 僕は眉を歪めながら、さらに強く目を瞑った。

 どうせなら、このままずっと寝ていたい。


 直後、誰かに身体を揺さぶられた。


 布団越しに感じる手は小さく、感覚だけでも母親の手ではないことがわかる。

 布団が引き剥がされないように、僕は布団をつかむ手に力を込めた。


「ルイン!早く起きて、今日は魔法科の実技試験じゃん!」


 少女の声が響き、僕は布団の中でため息を漏らす。

 

「遅刻しちゃうよぉー!」


 そう話しながら少女は布団を掴む力を強くして、体重を使って布団を引っ張る。

 いくら男の方が力があるとはいえ、寝転がった状態で、かつ滑る布団を掴み切るのは無理があった。


 掴んでいたはずの布団が一瞬にして手元を離れ、何かが落ち、倒れる音と共に日差しが顔を照らした。

 僕は少しだけ瞼をあげ、うっすらと見える太陽を睨む、

 そして、背後で尻もちをついているであろう少女に視線を送る。


「何でいるんだよ、エヴァ」


 僕が視線を送った先には、床に座り込んでいる少女の姿があった。

 少女の手には僕から剥ぎ取った布団が握られている。


「あ、やっと起きた」


 エヴァはそう話しながら床に手をつき、ゆっくりと立ち上がる。

 薄い青髪と、薄く青い瞳。

 空のように美しく、深い。


 エヴァは青い髪を揺らしながら、自身の腰をさする。


「あ......いて」


「あんなに布団を強く引っ張るからだろ」


「ルインがササっと起きてくれれば私は怪我せずに済んだんだよ」


 エヴァはそう話しながら洋服についた埃をはらうように、灰色の制服を軽く叩いた。


「怪我と言っても、エヴァは治癒魔術も使えるだろ?魔法科最高点のエヴァなんだから」


「はぁ......治癒魔術が万能じゃないって、ルインもわかってるでしょ?」


 エヴァはため息を漏らしながらそう答え、自身の両手に視線を落とす。

 そして、口を開いた。


「治癒魔術は簡単にハイハイって操れるものじゃないから、私は魔力が多いし、理解力もあるから、なんとか一番簡単な治癒魔術はできるけど、実際は途方もない期間をかけて得る技法よ。治癒なんて言ってるけど、実際は小規模な時間操作......都合よく傷だけ治します。なんて魔術は存在しないの」


 エヴァが話す言葉に、僕は耳を傾けながらベッドから降り、近くの制服に手をかける。


「一番簡単とは言え、難しい魔術を扱えているのは本当でしょう?すごいことだよ」


「そうかなぁ......」


 僕の言葉に、エヴァは自信なさげに肩を落とす。

 視線も落ち、肩をも落として仕舞えば進む力までなくなってしまう。


 だが......取り敢えず、着替えたい。


「エヴァ、僕着替えるから、部屋の外に行ってくれない?」


「え?あ、あぁ!ごめんね!」


 僕の言葉に、エヴァはすぐ立ち上がる。

 木製の床は滑り、黒いタイツを履いているエヴァは滑りながらもなんとか部屋の外に出た。


 バタンと勢いよく閉まる扉の音を耳に、僕はため息を漏らして制服に着替える。


 小さな窓から部屋の中を明るく照らす太陽を睨みながら、制服を整え、部屋を出る。


「お待たせ」


「ん、早く行こ」


 エヴァは壁に体重を預け待っていた。


「魔法の実技だけサボろうかな」


「ダメに決まってるでしょ?」


 階段を降りながらつぶやいた僕の言葉に、エヴァは首を振る。

 ため息を漏らしつつも、彼女は少し笑っていた。


「俺は魔術苦手だし......あぁ!やりたくねぇ」


 他愛のない会話をしながらギシギシと階段を降りる。

 リビングに着くと、母親が座って朝食を食べていた。


「行ってくるよ、母さん」


「おばさん、行ってきますね」


 僕とエヴァがそう話すと、母親は咀嚼しながら顔をこちらに向ける。


「ひっへはっひゃい」


 口にものを含んだまま話す母親に、僕はため息を漏らして歩き出す。

 玄関で靴を履き、扉に手をかけ、ガチャリと開けた。


 眩しい太陽に目を細める。

 いつもと変わらない日常、いつもの朝。

 僕たちは、学校を目指す。


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