治癒魔法《ヒール》で伝説の魔竜《バハムート》が爆誕!?
前回のあらすじ。
銅貨一枚しかない。
宿に泊まれない。
食べ物もない。
どうしよう?
「この街に来て4行じゃないか」
私は頭を悩ませると、ラクエルは杖の姿のまま怒っている。
「知らないわよ。本当これからどうするつもりよ!」
「この世界にダンボールがあれば河川敷で雨風耐えることはできそうじゃが」
「夜までまだ時間があるから働かない?」
「生まれてから働いたことがないからのぅ。ラクエルは働いたことはあるのか?」
「ないわね」
「そもそも、これのせいで、私の魔法は使えぬ。魔法が使えぬ私は自分でいうのもなんじゃが、役立たずじゃ」
「性格もクズだしね」
「杖の分際で、ゴミに出されたいのか!?」
「でも魔族生き返らせてなかった?」
「忌々しいレミットの魔法のことか? まぁ法衣のせいで聖なる魔法は使えるらしい」
「それなら回復魔法で治癒院開けるんじゃ?」
「あんな奴の魔法を使って、しかも人間なんか助けたくはない」
チセリはプイッとそっぽを向く。
「じゃあ晩御飯と宿は諦めるしかないね」
しばしの沈黙。
「仕方がない。治癒院を開こう。ラクエルよ。協力してもらうぞ」
人混みの多い街中。
「あっ!」
幼女が通行人にぶつかり転ぶ。
「大丈夫か。おや。これはもう超ウルトラスーパー複雑骨折じゃ。エリクサーでしか治せん」
ふりふりの法衣を着た女が、ただの打撲を大袈裟に言う。
「わたし、そんなおかねない」
「大丈夫じゃ。私のどんな怪我も治せる回復魔法はニコニコ安心価格! なんと、どんな怪我も金貨十枚じゃ!」
「やすーい!」
見事な演技じゃ。これを見た通行人はきっと依頼をしてくるだろう。これで今夜は高級宿間違いなし。
「誰も来ないじゃない」
「おかしいのぅ」
しばらく二人で座って様子を見ていると、
「おまえがどんな怪我も治せる魔導師か」
声をかけてきたのは、ゴスロリドレス、黒髪のツインテール。背中には物騒な大鎌を背負っている。どう見てもやばい。
レベル察知をすると、765。またもやゲーム業界みたいな数値である。
「私が仕える偉大なる魔王様が飼われているポチが怪我をしたから治してほしい。ほら、金貨十枚だな」
魔王?
「そう怖がるな。魔王様はお優しい方。有能な人材は重用される。役立たずはすかさず処刑だがな」
「チセリ。これって」
ガクガク震えるラクエルと、
「ウム。まさかの悪魔的ビジネスに魔王が釣れてしまったのじゃ」
「何を言っているかわからんが早速行くぞ、あぁ失礼した。私の名はオカリナという。あなたの名は?」
「チセリです」
「ラクエルです」
レベル17とレベル10では、どう頑張っても765に勝てないので、おとなしくついていくしかなかった。
東の森にたたずむ城。
「これがこの世界の魔王城か。でかいのぅ」
「すごい立派なんだけど」
素直な感想を述べるチセリたち。
「オカリナである。魔王様に謁見したい」
「悪魔大元帥、オカリナ様、御帰還!」
まるで軍隊である。
「魔王様。回復術師を連れてきました!」
「わざわざすまんな。これ、ポチを連れてこい」
しもべたちがポチを連れてくる。
「レッドドラゴンではないか」
「ポチの要素ないわね」
「で、オカリナ殿。ポチはどこを怪我しているのじゃ?」
「ここよ」
よく目を凝らすと、小さなかすり傷が見えた。
三日くらいすれば治りそうじゃが、怖くてそんなことは言えん!
仕方なく、治癒魔法を唱えてみる。
レッドドラゴンが光り輝く。
身体がさらに巨大化し、まとっていたオーラが飛躍的にあがるのがわかる。
「これは、バハムート! 馬鹿な! 伝説級の魔竜じゃぞ!?」
「治癒魔法でなく進化魔法唱えてどうするのよ!」
「間違えたのか!」
「ポチよ、おちつけ!」
魔王が必死に暴れる伝説の魔竜を宥めようとするが、簡単に踏み潰されてしまった。
「魔王様!」
慌てるオカリナ。
「魔王が天に召されてしまったのぅ」
「なんか長老から言われた目的達成したっぽくない?」
「よく考えたらそうじゃな」
帰ろうとした二人に、
「貴様ら! ポチだけでなく魔王様まで。よく見たらその格好。聖女じゃないか!」
「今更気づいたのか!」
「八つ裂きにして切り刻んでやる!」
「ひぃ!」
悪魔大元帥オカリナ(Lv.765)は、背中の大鎌をチセリに向けて振り下ろした。
その一撃は、Lv.17のチセリはおろか、魔王城の石壁すら一刀両断にする威力だ。
「逃げるぞ、ラクエル!」
チセリは咄嗟に大鎌を避けると、全速力で魔王城の出口に向かって走り出した。呪いの法衣は脱げないが、聖女の機動力は悪くない。
「当たり前よ。変身!」
杖の姿になったラクエルが、チセリの背中で激しく揺れる。
ドォン!
オカリナの大鎌が床を砕く音が、追いつくように響く。
その時、巨大化した伝説の魔竜が、地鳴りをするような遠吠えを上げて、チセリの後ろから大股で跳ねてきた。
「な、なんじゃ!? ポチ!?」
バハムートは、爪の傷を治してもらった恩人であるチセリに懐いているようだった。しかし、その巨体で跳ねるたびに魔王城の壁が崩れ、天井が抜け落ちていく。
「伝説の魔竜が懐きながら追いかけてくるなんて、最悪のシチュエーションじゃ!」
「待て、逃がすか」
オカリナは鎌を持ち直すと、扉が開いて
「いい気持ちで寝ていたのに何の騒ぎよ?」
「姫様! 実はポチがバハムートに進化し、魔王様が倒されました。今その元凶である聖女たちを八つ裂きにするところです。
「へぇ。でもいいわ。ほっときなさい」
「は?」
「うるさいお父様がいなくなってせいせいしたわ。これで世界を遠慮なく破壊できるってものよ。その聖女?とやらも、そのうちまとめて殲滅してあげるわ」
「......かしこまりました。ミナエ姫様」
城から森に走り続けて半日。
「なんとかバハムートやオカリナから逃げれたのぅ」
「でも、バハムート旅立ちの街に向かっているわよ」
「多分、街終わったの」
「これからどうすんのよ」
「最終回で考える」




