漆黒の杖が拗ねた!? ラスボススキルでLv.5魔族を殲滅するも、絶体絶命のピンチ
古の悪魔姫と呼ばれたチセリ。この世界を支配する者。
彼女が支配できた理由。その一つに最強スキル「レベル察知」があげられる。
自身がレベル999とはいえカンストしているわけではないし、レベル差など対策によってはすぐに埋まる。常に敵の強さを知り対策の対策を練る戦い方で勝利を積み上げてきた。
聖女レミットに敗れるまでは。
17歳の聖女に生まれ変わったチセリは自分の姿をレベル察知をし、レベル17だと勘違いしてしまう。
老人(80歳)をレベル80と錯覚し、闇の力もふりふりドレスを着ているため使えない。
彼女の運命はいかに!?
「ここら辺一帯が農地でございます」
老人は言う。実は逃げ出そうと思ってもいたのだが、こんなかかとの高い靴では走りにくいし、レベル差を考えればすぐに捕まえられ、悪魔姫だと自白するまで拷問されるに違いない。
人間だと思って油断していた。この靴を履かせていたのは脱走させないため。まさかここまで先手を打っていたとは。さすがレベル80。
「チセリ様。見ての通り大地は瀕死なので、作物もほとんどとれませぬ」
「瀕死ならば回復させれば問題なかろう」
チセリは悪魔姫だった頃の癖で、当然のように言い放った。大地が荒れているなど、魔力で満たせば一瞬で解決する問題だ。
老人は目を見開いたが、すぐに深々と頭を下げた。
「な、なんと……! さすがチセリ様。神の力を持つ聖女様の発想でございます! しかし、私どもに大地の回復など、そのような高度な術はございません……」
こやつ、こんな簡単なことすらわからぬのか? いや、きっと私を試しているに違いない。
それにしても、おなかがすいてきた。この身体食べ物が適度に必要らしい。
魔力を使えば簡単に解決するのだろうが、この呪われたドレスのせいで使えるかどうかわからない。
まぁレベル察知が使えるのだ。多分だけで使えそうではある。
「よし。大地を回復させるぞ。ドレスを脱ぐ」
「チセリ様。脱いでしまっては聖なる魔力が半減してしまいます!」
いや、そんな魔力はいらん。というか聖なる魔力なんぞ0だ。半減って何?
「おそらく枯れ果てた大地に恵みの雨を降らせたいのはわかります。しかしあれは一度使うと10年は使えなくなる大魔法。この辺境な街のために使うのはおやめ下され!」
聖なる魔法って不便じゃな。前回いつ使ったか忘れそうだ。闇の魔法なら好きなだけ使えるのに。
「ならば水路を開拓するしかなかろう」
「ですが湖まで距離があり人手が足りませぬ」
文句ばかり言う老人じゃ。
本来であれば私の言葉に素直に従わない者は死刑に値するというのに。
少しイラついてきたところで、
「魔族だ!」
民衆が空を飛ぶ人型の魔族を指差した。
数はザッと100か。
まずスキル「異常警告メッセージ」を使ってみる。何が私に問題が出た場合、自動で教えてくれる便利なスキルだ。
次にレベル察知をする。
ほとんどがレベル5。話にならぬな。
このレベル17の身体でも余裕だろう。それに見渡す限り人間とはいえレベル20以上もわんさかいる。
空飛ぶ魔物への対策がないのが痛いが仕方がない。いざとなったらドレスを脱ぎ捨てれば良い。
いや、この際正体を明かし魔族に組した方が良いか? しかしレベル17だと下等魔族だ。奴隷のごとく働かされるのもいかがなものか?
葛藤をしていると、
「チセリ様。お助け下さい!」
一方的に攻撃される民衆。
レベル5の魔族にボコボコにされているレベル60の白髪混じりのオッサン。
よっぽどおなかがすいているせいか、人間どもの動きが悪い! 泥人形のダンス以下ではないか。
なるほど。腹が減っては戦はできぬというのはこのことか。
「まぁ良い。おい。魔族よ。私が相手になるぞ」
同士討ちは避けたいが、生きるために仕方がない。人間についた方が今後の生活が楽になると思った。そもそもこいつら知らんし。
「おい。人間の娘が異性のいいことを言ってるぜ」
数体の魔族が一斉に襲いかかってくる。
そのうち一体が毒のブレスを吐いてきた。
「ムッ」
私はブレスに包まれる。
「チセリ様!」
悲壮な顔をする民衆たち。歓喜する魔族。
「なんじゃ今のは」
何もなかったかのようにチセリは言った。
毒耐性、麻痺耐性、即死耐性などなどラスボスとして君臨した私に効くわけなかろう。
「聖女の法衣の加護のおかげじゃ! あの法衣はありとあらゆるデバフを無効にする!」
なんか解説し始めた老人だが、
え? そうなの?
私はどちらかわからなかった。
「チセリ様。聖女の杖を呼び出し下され!」
老人に言われて、杖の具現化をイメージすると、
「なつかしいの。漆黒の杖じゃ」
「皆よ見よ! あれこそが聖女の杖じゃ!」
え? そうだったの?
数百年勘違いしてきた。確かにどこかの神殿に突き刺さってたのを勝手に引き抜いてきた物だから勝手に名前をつけたしな。
よりによって忌々しい名の杖を使ってきたとは。
あぁ、へし折りたい気持ちでいっぱいじゃ。
スキル「ダメージ量視察」を使い、
「闇雷光」と言い杖を振ると、杖の先から漆黒の閃光が魔族数十体を一瞬にして灰にした。
ダメージ量は平均2,500か。まぁまぁじゃな。
「あれこそ、聖なる稲妻! 生で見られてもう死んでもいい!」
なんか老人が感動しているが死んでいい。お前さえいなければ杖があれば逃げ出すことはできそうだから。
「なんだこの魔法は。魔王様クラスじゃないか?」
おどおどする魔族たち。
この程度で怯えるとは魔族として恥ずかしい。魔族として死ねることを誇りに思ってほしいところだ。
もう一発打ったら退散するだろうか。威力は抑えて範囲を広げるか。
杖をかざすと、
『漆黒の杖(通称)が拗ねたため使用不可です』
状態異常メッセージが目の前に表示された。
「は?」
『先程、チセリが杖をへし折りたいという思考を杖がひろい、モチベーションをなくしてしまいました』
いや待て。思い違いじゃ! 数百年共に過ごしてきたではないか! 考え直せ! てか、せめて今だけは私の力になれ!
『都合のいい杖だと思われたくないそうなので使用不可です」
乙女かおまえは!
魔族に囲まれ大ピンチ。なんかチュートリアルの戦闘な気もするが、チセリはどう立ち向かうのか? 次回に続く。




