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沐浴後の椅子

作者: アラベル

僕はサウナが好きだ。サウナが好きな方ならわかると思うのだが、サウナ好きには行きつけとなる銭湯などが存在する。そんな行きつけの銭湯に行った時の、誰にでも起きえるちょっとした悲しいお話。


一番交感神経が高まり、副交感神経との切り替わりが起きる一発目のサウナ後の沐浴が大好きで、そこにサウナに行った時の8割の価値があると思っている。だからこそ一番大切にしている時間なのだが、その日は年末で、一年の疲れを落とそうとするおじさんの群れで溢れかえっていた。

僕は周りの方々と比べると一回り、二回りほど年齢差があるため、少し肩身が狭い環境だったが、同じ釜飯ならぬ同じサウナ室に入ったもの同士、できるだけその時間を良いものにしようと思った方たちが集まった、プロフェッショナルな空間がそこにはあった。ちょっと狭すぎておじさんの肌に僕のお尻が触れてしまい、ぬりゅっとした感触を感じた瞬間もあったがそれはご愛嬌。お互いに頭を下げ、すぐに自分の時間に集中する。


サウナから出た後は出来る限り早く汗を流し、水風呂へと潜り込むのが僕のルーティンだ。あまり時間が経つと体が冷えてしまい沐浴時に体が震えてしまうからね。水風呂に入った後は頭の中で1、2とカウントを行い、体の周りに膜が張る感覚を味わいながら、60秒が経過したらそこから抜け出す。抜け出した後は素早く体を拭くことで、沐浴後に体が風を浴びて冷えすぎることを防ぐ。特に年末により外気温も下がっているため、ここまでの工程をどれだけ素早く行えるかが整いのためには重要だ。


ここまでは完璧だった。しかし沐浴を行う位置が悪かった。


この銭湯には体を横にできるビーチにあるような椅子が2脚、普通の椅子が8脚ほど用意されている。僕が座った場所は、銭湯の空気を外に出すために設置された換気扇のすぐ隣の普通の椅子だったのである。ここから逃れるのは非常に重要なことだったが、年末のため人がごった返しているため、座れる椅子がここしか無かったのだ。


冷たい風に吹かれる僕の体。急激に冷やされることにより、一発目の整いが発生しながらも、凍えるような寒さが僕の体を襲った。サウナ好きならこの状況の酷さが分かるだろう。ここまで頑張って整いのために全てを捧げたのに、、


整いながらめちゃくちゃ寒い。交感神経と副交感神経が脳みその中でバチバチにぶつかり合う。気持ちいいの?寒いの?僕はどっちに舵を切ればいいの?○サイドヘッドも大混乱だよ。


その時、一筋の光が差した。横になれる椅子から人が立ち上がったのだ。


これを逃したら全てが水の泡だ。僕は脳みそからエンドロフィンが大量放出している状態を投げ捨て素早く椅子から立ち上がった。自分の座っていた椅子に銭湯のお湯をかけ綺麗にし、横になれる椅子の所へ大股で足を進める。その神の椅子にお湯をかけ座ろうとした次の瞬間、とんでもない光景が僕の目には映った。


オレンジ髪のヤンキーがその椅子に寝っ転がっているではないか。こいつなんだ?バカか?○ねよ。


こんだけ口も悪くなるよ。俺が育てた椅子に横入りで座っているやつに是非もないわ。

こんなことする奴らって大体こういう見た目してるんだよな。派手な髪色で短髪。ついでにピアスもしてたら確定。こいつらの地雷の確率があまりにも高すぎる。

見た目で判断するなって人たちいるじゃん。その前にそういう見た目の奴らがヤバいことしている確率があまりにも高いから、みんな見た目で判断するようになったんだよ。ステレオタイプとは訳が違うからな。


「そんなこと言うなら、その場で言えばいいじゃん」という人もいるかも知れない。だけど僕は銭湯に言い合いの喧嘩をしに来たわけじゃなくて、疲れを落しにきているんだ。わざわざ自分で疲れの原因を作りたいわけじゃないんだよ。

そのまま僕はそいつに席をあけ渡し、その場を後にした。


これにより僕の今年最後のサウナ一発目の整い時間は幕を閉じた。閉じ方えぐ。


こんな悲しいことが世の中にはいっぱいあります。でも来年もまた僕はサウナに行くでしょう。一発目の気持ちよさを感じるために。来年の自分、良いことがあると無責任なことは言わない。だけど、良いことを掴むためには自分で行動を起こして掴みに行くしかないんだよ。だから行動だけは止めないでね。今の俺からのお願いです。

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