第四話-12さい 勇者のペット
ハム(私)……この物語の主人公。生まれと頭が悪く、顔は良い。
レオンハルト……所謂勇者。マ王はすでに討伐しており、ハーレムの女たちと悠々自適に暮らしている。
勇者に『キャプチャー』された日から時計の針を前に進めよう。具体的には一ヶ月ほど。幸いにして、困惑するほど裕福で平穏無事な生活を送らせてもらっていた。
性格上、朝はいつも憂鬱だ。しかし12の体は朝日を浴びると悔しくも光合成を初め、血液を回し始める。そうすると過去の嫌な思い出が次々と撹拌されて思い出される。
違和感を感じてぺたぺたと肌を触る。一カ月かけて丁寧にケアされた肌は摩擦や荒れによる痛みがまったくなく、逆に違和感。ささくれていた髪の毛も、ずっと触っていられるサラサラ感。
悪くない気分になってベッドを出たが、力が入らなくってそのままカーペットに倒れ込んだ。床から芳香剤の匂いが立ち昇る。
天井を見上げると森林を模したテクスチャが、壁を見ると茶菓子や葉っぱがストックされた棚が目に入る。ていねいだ。さっきまで倒れ込んでいたベッドも天幕が付いており、機能性はもちろん品位や外観にまで配慮されている。少し前まで命が吹けば飛ぶような地べたにいたとは思えない、ていねいな暮らし。
高度50mくらいの窓から、これまで暮らしていた貧民街や薄汚い港が目に入った。
(こんな高待遇をもらえるなんて。奴隷王朝って言葉もあるくらいだし、権力者の奴隷ってのはすごいんだな)
鏡の前に立つと美少女がいる。胡座ではせっかくの美貌が勿体ないので、きちんと座り直せば人形のように淑やかで美しいおとめに見える。
股を広げて色々な部分を見てみる。瘡蓋や傷はあらかた直され、必要最低限の肉がつき、女性を表す部分も少しふっくらしてきた。身体のどこをじいっと見てみても、ずっと見ていられる上品さ。内面とは大違いだ。
立ち上がると、とろりとした液体が股ぐらから地面に触れる。
お腹をさすってみるとドロドロした液体を感じ、胃液が迫り上がった。昨夜のユウシャは私を自分の別荘に住まわせてから、毎日のように乱行パーティーを開いている。よりどりみどりの美少女たちに相手をさせるわけだが、その中に元男が入っているとは夢にも思うまい。感謝と謝罪を捧げよう。
しかし、ため息が出る。
『コン、コン』
不意のノック音に肩が跳ねた。
何故って、私の着衣ピンク革のハーネスで局部を隠しているだけだ。鼠蹊部のあたりにはハート型のシールまで貼ってあって、裸よりもよほど恥ずかしい。……不思議なものだ、1ヶ月前まではチラリし膨大のボロ切れを纏っていたはずだが、衣食住足りると恥じらいのようなものを覚えてしまう。
『嘘だ。お前はどんな自分でも見られたくないだろう。』
誰を相手にしてか、ベッドの中に潜ってから「うぅ」と唸る。
言葉を一切喋れない___そういう設定だ。私は権力争いとかそういったことに全く不得手、というかすごーく相性が悪いと言う自覚がある。
『嘘だ。』
だからここに来てから私は一切人語を話していない。
「失礼するわね。ハレムも50名を超え、大所帯になってきました。いろいろ立場がありますし、今夜懇親会を開きます。たくさん学びがあると思うわ。あなたも参加したら?」
部屋に入ってきたのは私を初日にとっちめたロリ女騎士だった。長髪、服装、瞳。全てが純白ゆえ、まるで天使のような印象を受ける。名前は___何だったか。何度か自己紹介をしてくれた気がするのだが、中々覚えられない。
△過去回想
『君は___本当に人に関心がないんだな』
△
不意に、前世の嫌な記憶を思い出した。苛立ちは再び唸り声に出力される。ロリ騎士は氷のように表情を変えることなく退出していった。私がその手の誘いに乗ったことはないし、想定通りだったのだろう。
△
いつも気性の荒い母親が、その日だけは優しかった。
『いい?◼︎■◼︎■”。自分より弱いものは、絶対にイジメちゃだめよ?それだけはお母さん許さないからね。』
笑わせる。私はその日ようやく母親という人間が見えた気がした。
△
朝食を置いて行ってくれた。オムレツだ。ていねいに私の似顔絵を書いてくれている。もしかしてロリ騎士さんが作ったのだろうか。急に罪悪感が湧いてきて、この世から消えたくなった。私は調味料を使えないので、できるだけ薄く引き延ばしながらゆっくりいただく。
半分ほど詰め込んでベッドに潜り込んだ。衣食住足りても、長年の不眠は治ってくれない。
「ううう、ぅぅぅぅぅぅ……ぅ」
歯ぎしり。
気がつくと、枕を食いちぎってしまっていた。衝動に後悔していると、ドスドスと野蛮な足音が聞こえてきた。私をこの生活に押し込んだ張本人だ。ピンと耳周辺に力が入るのを感じる。
「よーっ!レオンハルト様が遊びに来てやったぞーっ!」
「わ……わおぅ!」
ユウシャ……レオンハルト。整った鼻筋、逞しく灼けた肌。見た瞬間に頬が熱くなる。弱冠22歳にして、世界最高の戦力と呼ばれている男。その名声に違わず、彼の元には世界各地の資産家がこぞって財産を寄付している。それゆえ、私のようなぽっと出の奴隷にもこんな豊かな暮らしをさせられる甲斐性の持ち主というわけだ。
ずんずん、と大股に私の方に歩み寄ると、猫のように抱き抱えて膝の上に乗せる。私が言葉を使わないのでプリミティブでフィジカルなコミュニケーションが基本になる。
私も彼の前では意識して、情緒の極端な馬鹿女のように振る舞っている。本当の私は賢いのに。
甘えた声を出しながら力いっぱい抱きつき、おもむろに噛んだりする。強引な男に嫌悪感を感じるのも、離れてほしくないのも本心だ。そうすると嬉しそうに微笑んでくれて、お返しとばかりに私の浮き出た肋骨を粘っこく触る。髪をぐしゃぐしゃになるくらい強く撫でてくれる。
その最中に思ったより下着が濡れてきて安心した。
勇者ハーレムは50人くらいるため、会いに来てくれることはそこそこに貴重。元々勇者はすごく激務だろうし。そして私は私を受け入れてくれる人が好きだ。彼と肌を擦り合わせている時だけ安心感を感じ、ようやく眠ることができる。全身を使ってがっちりホールドする。性器や体液といったものがべったりとくっつくけれど、それが幸せだった。
ゆっくりと目を閉じる。
「お前はいいよなあ。俺様はやることがいっぱいあるんだがな。全く、しょうがない。」
その言葉遣いで、少しだけ爪を立ててしまったけれど。強く抱擁してくれる彼と甘い眠りにつく。
この時間だけが私の幸福だった。
……いや、幸福はもう一つあった。眠っていると、何かお腹が疼く気配がして意識が明滅する。抗議のように爪を立てる。でも、理性が目覚めると途端にお腹がきゅんとした。
トントントン。腰のあたりをレオンの手が優しく叩いていた。その手を振り払って、今度は腕にしがみついて肩に噛み付く。ユウシャというのは非常に頑丈だから、力加減の心配をしなくていいのはいい。
「ゔゔー。」
しかし、レオンは強引に私の腰に手を回し、ハーネスを局部からずらす。尻を掴まれてしまうと雌というのはもう逃げられない。
「ゔゔゔゔゔゔ……。」
もう少しゆっくりしていたかったのだが、どうにもうまくいかない。私の貧弱で未熟な性器に彼が手を侵入させてくれる。神聖なはずの乳房や■■■に平然と侵入してくる。喰むに足る少女として認めてくれる。その上で、彼とより深く一体化する快感に身を委ねた。理性を忘れ、獣のように鳴かせてくれるのは、はっきりいってめちゃくちゃいい気分だった。
前世で見たものよりずっと長く、熱く、膨張したソレを露出されると、どうしても体が震えてしまう。
これはまだ受け入れるに適さない、いやこんなに魅力的な子種をもらえるのは魅力的だ____本能がせめぎ合っている。
彼は絶倫を超えた絶倫で、コトが終わるまで三十分もないのに10回は中に出され、お腹がたぷんたぷんになってしまう。肉弾頭も内臓が破裂するかもしれないと思うくらい大きくて、獣のように唸りながら受け入れようと専念する時間は逆に忘れがたいものになった。
気がつくと彼は他の女のところに行ってしまうのが寂しいが、中に彼の暖かさを感じられるので問題はなかった。
臓器が全て白濁液に溶けて仕舞えばいいのに、と思う。
「お”っ、あぁぁ……」
エクスカリバーのように雄々しいそれを引き抜いた後、五体を投げ出して震える私の横に座った。今日はすぐに他の女の元にいかないらしい。頭を脇腹に擦り付けてみると、目論見通り抱き寄せて全身で温めてくれる。肋骨をさするのだけはちょっとやめてほしい。
「ハム、お前は俺のコトが本当に好きだな〜〜〜。」
「う〜〜!」
「うむうむ、かわいいやつめ。だがな、他のハーレムの女たちともうちょっと仲良くしないか?あまりいい評判は聞かんぞ…まあいってもわからんだろうが。」
「があっ」
力一杯手の甲に噛みついた。
「はいはい。まあ、お前なりに頑張ってるよな。しばらくゆっくりしろ。呪いの治療もあるしな。」
朗らかな笑いと共に眠りにつく。もしかしたら、私が枕を破壊するくらい荒れてるのを聞いて、ペット程度の愛情を恵んでくれたのかもしれない。
(優しい、なあ)
彼と接するほど、最初に感じていた感情は減っていった。
即ち___若くして成功したものへの嫉妬。私が前世から何度も何度も努力しては転んできたのに、どうしてあなたはそんなに苦労もしてなさそうな風貌で順風満帆なの、という具合だ。私にも成功する権利はある、と心の中でいつも火種が燻っている。
でも、最近『もういいじゃないか』って思えたのだ。
____『頑張ったんだな』って。そう言ってくれる男が同じ寝室にいるのだから。
太い腕枕の中で、私は眠りについた。
サブタイが気に入らないので案募集中です よろしくお願いいたします