表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/129

第99話 岩壁の門(1)

「ついたぞ。ここが『岩壁の門』だ」

 通常より広めの開口部を抜けると、闘技場に匹敵する広さの大空間が広がっていた。奥行きも十分に広いが、横はその二倍以上の幅がある。高さ方向も五階建てのビルがすっぽり入るようなサイズ感だ。縦にも横にも広い空間の正面に、岩壁から直接掘り出したかのような門が刻まれている。

「思ったより広いね。それに、魔物の気配もない」

「オレも久しぶりに来たけど、こんなに広かったかなーって思っちまった」

「そうだな。こんなに遠くなければ剣術部の大規模戦闘訓練にちょうどいい場所なんだが」

「どんだけ戦闘好きなの、剣術部。ダンジョンで一番広い場所で練習って、本番がそれより狭いんじゃ意味なくない?」

「まあ、アレだ。もしもダンジョンの外で戦うとしたら、っていうことさ」

「だからそれが矛盾してるってーの。剣術部は現実世界での戦闘は禁止だろ?なのに何で『外』で戦うことなんて想定してんだよ?現実世界以外の外ってどこよ?」

「さあな。でも古い『操典』っていう資料があって剣術部の一部の幹部には必修って言われているんだが、その中に野外での戦闘訓練に言及があるんだそうだ」

「ふーん」

 ボクには『外』が何を指すのかわかる気がする。ここより広い空間は見たことがあるし、建物の『外』があるなら、洞窟の『外』もあるはずだ。それがボクらの現実世界を示す「外」とは限らない。そんな妄想が頭をよぎる。

「ねえ、近くに行かないの?あの門を開けるのが目的なんでしょ?」

 そうだった。


「はえー、でかいなぁ」

 一度は来たことがあるメンバーでさえもこの感想だ。初めて実物を目にしたボクは門の大きさに圧倒される。

 門の姿は大ヶ谷内さんの描いたスケッチの通りだった。いくつもの魔物が絡み合うように描かれており、互いに喰らい合っているようにも見えるし、我先にと上を目指しているようにも見える。ただ、大ヶ谷内さんのスケッチでは描かれていなかったものが二つあった。

 一つは門の手前、五メートルほどの位置に立っている腰ほどの高さの石柱。

 もう一つは門の上にいる二体のガーゴイル像だ。

 どちらも門そのものより少し新しい感じがする。浮いているというか、タッチが違うというか。例えて言うなら巨匠が作った作品に、後から弟子たちがモチーフを追加したような感じだ。

 同じような材質、同じような作品系統だけど、微妙にずれがあってマッチしていない印象を受ける。大ヶ谷内さんもそれを感じて敢えてスケッチから外したのではないだろうか。

「このガーゴイル像って初めからあったの?」

「俺たちが初めて見たときからあるぞ。まあ初めて見たのって五月くらいだからまだ半年も経ってないけど」

「ふーん」

 ガーゴイル像は門の扉の最上部に左右に一体ずつしがみ付いていて、互いに向き合っている。まるで扉が開かないように抑え込むかのように、右の腕をお互いに向けて伸ばしている。尖った口吻は遠吠えをする猿のようでもあり、硬いくちばちのようでもある。丸みのある額からはこぶが伸びたような醜い角が二本生えてる。背中には蝙蝠を思わせる翼が折りたたまれており、手足にはふしくれ立った長い指と悪魔のような曲がった爪を備えている。決して自然界には存在しない獣とも鳥ともつかない姿だが、最も違和感があるのは顔の中央にあって相手を睨み殺すような大きな眼だ。このガーゴイル像は単眼ひとつめなのである。

 どうしてひとつ目なんだろう。この像を作った人は何をイメージしたんだろうか。

 高いところを見続けて首が痛くなってきた。見上げるのをやめて、今度は扉の合わせ目や縁の部分に目を近づけじっくりと観察する。

「うーん」

「どうだ?開きそうか?」

「うんにゃ、これは完全に一体化してるね」

「だろう?だってこれ、彫刻だもん。絵にかいた餅は食べらんないって」

 扉の隙間に当たる部分をナイフの切っ先で擦ってみたが、土が詰まっているというより岩に溝を掘った感触だった。つまり継ぎ目ではなく模様ということ。

「まあ、それで困るのはヨギなんだけどね」

「はっ、そうだった。どうすんだよ、コウタぁ」

「大丈夫。まだ全教科満点を取るっていう最終手段が残されているから」

「しくしく」

「ひよりー、そっちはどお?」

 ひよりは地面から突き出した謎の石柱のほうを調べている。

「そうだねぇ。ここに魔法陣が刻まれているよ。でも半分しかないから起動するには何か鍵のようなものが要るみたい」

「鍵?」

「うん。家に入るときの鍵じゃなくて、割符みたいな感じのものかなー」

 ひよりが近づけていた顔をどけてボクに石柱の上部を指し示す。

 ギザギザの断面で切られた半円形のくぼみ。半円のくぼんでいないほうには薄く紋様が刻まれていて、それが魔法陣の一部を構成しているというのがひよりの見立てだ。

「ここにピッタリはまるメダルみたいなのがあると思うんだよねー。で、そのメダルの表面に魔法陣のもう半分が刻まれているっていうのが妥当な線かなー」

 確かにそんな感じだ。

「このギザギザの半円って、見たことある形だよね」

「うん。片割れの鏡と同じ形だと思う。でも魔法陣の形は一致しないと思うんだよ」

「とりあえずはめてみよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ