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第96話 土魔法(1)

 スライムは全体の三分の一くらいの体積を削った段階で光のパーティクルになって消えた。手元にはかなりな量のスライムの欠片がアイテムとして残った。それらをひよりのストレージに収納する。どうやらひよりは最初からスライムの一部を持ち帰る気満々だったらしく、ポーションを一本持っているだけで残りのストレージ欄は空きスペースになっていた。

「さて、どうしようか。ここまで特にダメージは受けてないけど、ひよりの目的は済んだみたいだし、一旦戻るか?」

「ううん、わたしも岩壁の扉まで行きたい」

「わかった。じゃあ、このまま進もう。隊列は今のままで」

「「「了解」」」「ラジャー」

 ヨギよ。おまえは合わせる気がないのだね。


 カチャカチャと装備が当たる音を立てながら通路を歩く。ここまで戦闘らしい戦闘もなく来たのでちょっと気が緩んでいるみたいだ。

「なあ、スライムの壁のこっち側ってどんな魔物が出るんだ?オレ、一回しか来たことないし、そのときも特に戦闘はしなかったからなあ」

「こっち側もだいたい同じさ。ゴブリンがでる」

 なんだあ、という気の抜けるような空気が漂う。

「だが、一隊の数は多めだな。だいたい七、八体くらいの固まりで来る。それと、魔法攻撃がが追加されるな」

「なんと、ゴブリン・メイジがでるのか」

「そういう名前で呼ばれるのかどうかは分からないが、杖を持ったゴブリンがいたら最初はそいつから倒したほうがいい」

「わかった」

「しっ、噂をすればって奴だな。この先の広場にいるぞ」

「了解。偵察行ってくる」

「慎重にな。ちらっと動く影が見えたから気づかれている可能性がある」

 ヒコの忠告に無言でサムズアップして了解の意志を伝える。

 忍び足で広場の入り口に近づく。残り二メートルくらいのところで立ち止まって気配を探る。入り口の角で待ち伏せしている気配はない。

「『スティック』」

 小声で魔法陣を起動し、両手両足を使って通路の壁面を登る。ボクの偵察方法の定番になりつつあるけど、ゴブリンは低身長なので高いところからの視線には気づかれにくいという利点は大きい。

 そっと入り口の上のほうから覗き込む。中は大きめの会議室くらいの広さになっている。天井はさほど高くない。第四階層ではこのような大部屋状の広場が多い気がする。

 いた。

 ゴブリンは部屋の中央で隊列を組んで待ち構えている。完全にこちらの存在を知られている隊形だ。正面に手斧や棍棒を構えた四体、中盤に剣と小盾を構えた二体、最後部に棒状の武器を立てて構えた一体がいる。

 ボクは戻ってヒコに報告した。

「気づかれてるよ。敵はゴブリン七体。前衛四、中衛二、後衛一。たぶん後衛は魔術師だね」

「うむ。お互い奇襲は無しか。倍近い相手と真っ向勝負になるな」

「大丈夫。わたしも自分の身くらいは守れるから」

「心配ない心配ない。オレ様の魔法で一気に蹴散らしてやっから」

「じゃあ、先頭で入ってもらおうかしら。そのほうが魔法の邪魔にならないし」

「えぇ。そこは先にお願いできますか」

「ったく、ヘタレるなら最初からイキがるんじゃないわよ」

「そこはほら、定位置っていうか隊列っていうかね。役割分担的な?」

「そうだな。前衛右の二体は俺が引き受ける。白井さんは左の敵を頼む」

「了解よ」

「コウタは奥の一体を狙ってくれ」

「わかった」

「オレは?」

「おまえは状況を見て狙えるところを頼む」

「オーケー、そんじゃあ、土魔法デビューと行きますかね」

 ヨギがストレージ画面を操作して右手にワンドを、左手に革の巾着を取り出す。

 役割分担を確認したところで前進する。

 広場の入り口に立つとしっかりと準備をして待ち構えているゴブリンたちと正対した。

「いくぞ!」

「ギャー」

 互いの前衛が突進する。

 戦闘開始だ。

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