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第85話 パーティを組もう

「第四階層に挑戦したい?」

「もちろん、ソロじゃないよ。第四階層に挑戦するにはどんなパーティを組めばいいのか教えてほしいってこと」

「なるほど。何か目的はあるのか?」

 さすが、ヒコは鋭いね。目的によってはパーティの方向性も変わってくるってことか。

「第四階層に岩壁に彫られた扉があるんでしょ?『岩壁の門』だっけ?ボクも見てみたいな、と思って」

「見るだけ、ねぇ。おまえ、何か隠してるな?」

「うっ」

 門の向こう側に行く方法を探している、なんて本音は言えない。生徒会に口止めされているし、第一突拍子が無さ過ぎて信じてもらえないだろう。

 いや、待てよ。嘘をつくときは本当のことだけを言うといいって聞いたことがある。

「岩に刻まれた石扉を開ける方法がないか、探ってみたいんだ」

 これなら向こう側のことに触れていないからギリギリセーフだよね?

 少し驚いた顔で、それでもこっちを探るような目で見てくる。

「そんな大げさな彫刻があるんなら絶対何か秘密があるって考えるだろ?なのに誰も謎解きに挑戦していないっていうからさ、ワンチャン、ボクが一番乗りできるかなーって」

 うう、ちょっと苦しい言い訳じみてるか?でも一番乗りしたいのは事実だし。

「誰も挑戦していないんだから何もないって思わないのか?」

「えっ?そんな意味ありげなものが何の謎も持っていないわけないじゃん」

 思わず素っ頓狂な声が出てしまう。向こう側を知っているとか知らないとかそういう次元じゃなく、見上げるほどの巨大な彫刻があったら普通何かあると思って挑戦するでしょう、するよね?

「ふふっ、コウタは純粋にダンジョンを楽しんでるんだな」

「当り前じゃんか。ヒコは違うの?」

「いや、違わない。もともと俺も勇者になりたくて剣道を始めたんだ。今のダンジョンには弱い敵しかいないから技を磨くほうにばかり注力してしまっているが、本来は冒険こそがやりたいことだったな。自分のことなのに、忘れちまってた」

「へぇ、ヒコがねぇ」

「オホン、さて、パーティ構成の話だったな」

 ひとつ咳ばらいをして話題を変える。ヒコも自分語りは恥ずかしかったようだ。

「お願いします、先生」

「先生ってほどじゃないが、まあいい。話を進めよう」

 第四階層に主に出没するのはゴブリンの集団らしい。

 ゴブリンは小柄ですばしっこく、割と知能も高くて連携を取ってくるそうだ。集団の員数は五体から七体ほど。一体ずつの戦闘で負けることはないが、狭い通路で背後に回られると厄介らしい。武装は盾とショートソードとショートボウが主体でときおり短い槍を突き出してくるタイプもいるとのこと。魔法は使ってこないが、中距離攻撃を効率良く織り交ぜてくる戦闘スタイルは手こずると長期戦になってこちらの損耗も激しくなる。

「攻撃力はさほどでもないから、怪我の治療はポーションで十分だ。だけど連戦を考えると数をそろえておく必要がある。第四階層にはセイフティーエリアはないらしい」

「なるほど、遠征には十分な下準備がいるっていうことだね」

「ああ。あとは『岩壁の門』まで行くとなると、その手前のスライムも相手にする必要があるな」

 スライムはランダムエンカウントではなく定位置に出現するタイプらしい。『岩壁の門』までの通路の途中に出現ポイントがあるので、避けて通るのは難しいとのことだ。

「攻撃力的にはスケルトン以下なので心配無用なんだが、スライムに触れられると装備が劣化するんだ」

 へー、それは初耳。ダメージが通らないっていうのは聞いていたけれど。

「とにかくダメージが通らないから手数で押し切るしかない。だが、何度も切りかかると剣はなまくらになってしまうし、触れられると鎧も劣化してしまう。コウタの飛び道具なんかは相性最悪だな。大したダメージを与えられないうえに弾は溶かされてしまって回収できないからな」

「いやすぎる……」

「とにかく第四階層は消耗戦との勝負だ。複数の武器、複数の攻撃手段、十分な量の回復薬。だからストレージは戦利品を持ち帰る余裕がない。戦闘訓練にはいいが、うろつきまわって調査するにはちょっとキツイところだな」

「そうすると、人数は多いほうがいいってことか」

「そうだな。最低でもアタッカーが三人、うち一人が盾持ちで一人が魔術師ってところか。ゴブリンの隊が最大七体として二対一以上で相対あいたいすることを考えると、中距離攻撃の手段を持ったサブアタッカーがあと一人必要かな」

「じゃあ、ヒーラーなしのタンク一名、戦士一名、魔術師一名、スカウト一名ってところか」

「そうなるな」

「……ところで、ヒコって部活が暇な日ってある?」

「ははは、ここまで話をしておいて抜けるわけないだろ。第四階層は俺も探索してみたかったんだ。ダンジョンに潜るのは部員以外のパーティとのときでも部活扱いになるから大丈夫、タンクは俺がやるよ」

「助かるよ。正直、信頼できる先導役がいないと難しいなって思ってたから」

「ああ。それに第四階層にはちょっとした事情もある」

「えっ、なに?不吉な話?」

「不吉っていえばそうなんだが、例の正体不明の魔物さ。まだ討伐できていない」

「あれか。あんなに大人数で行ったのに成果が無かったんだ」

「それどころが数名がやられてね。かなり知能が高いらしく、地形を利用してこちらを分断してハメたり、最後尾の者に忍び寄って一人だけを狩ったりとやりたい放題さ。今では大人数の隊を組む方が不利になるということで、少人数のパーティで分散して捜索に当たっている」

「それなら第四階層は立ち入り禁止とか?」

「いや、実際に怪我をするわけじゃないし、あくまでもダンジョン活動は自己責任さ。だから第四階層に行くのは止められない。ただ、正体不明の魔物、剣術部ではアンノウンと呼んでいるが、ヤツの活動範囲に入らないように案内することはできる。幸い、『岩壁の門」に続くルートは活動範囲から外れているから大丈夫だ」

「ほんと助かるよ」

 さて、スカウトの役割はボクがやるとして、残るは戦士と魔術師か。ずっとソロだったしダンジョンでも人が来ないエリアばかり攻めていたから知り合い居ないんだよね。はっ、もしかしてボクってぼっち?

 などと、ほとんど白紙の脳内アドレス帳をめくっていると、聞き覚えのある泣き声が聞こえてきた。


「ヒコぉ、コウタぁ、助けてくれよぉ~」

 ヨギ、ボクはキミのどらいもんじゃないよ。


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