第78話 中間考査
「えっ?もう調査方法の目途がついたの?」
「はい、ひよりに相談してその場で潜水服を作るっていう話になって」
「なるほどねぇ。まず道具を作ろうっていう発想がひよりちゃんらしいわね」
「ええ。それで前に倉庫番同好会の部室に行ったときに古い潜水具を見たのを思い出して、さっそく使い物になるかどうか見に行ったんです。で、だいたい修理の方向性も決まったので部品を発注して……」
「いやいやいや、ちょっと待って。お願いしたのってついさっきだよね?」
「まあ、そうですね」
「まさか、今日の今日で目途がつくなんて……」
「目途がついたと言っても、専用のガラスを作ってもらったり魔法陣を修復したり、やることはいくつかありますからそんなにすぐには動けないですよ。たぶん、一週間はかかるんじゃないかな」
「きみねぇ。一週間なら十分早いわよ。一ヶ月くらいはかかると踏んでいたんだけどなあ」
「でも調査が進まないと水泳部の人達も練習できなくて困るだろうし、早いほうがいいんじゃ?」
「それはそうだけれど、もうすぐ中間考査でしょ?しばらくの間は部活動禁止になるから時間はあるのよね」
「あ」
「おやおや~?もしかしたらコウタくん、中間考査のこと忘れてた?」
「うう……」
「コウタくんは九月から転入だからここの定期考査は初めてだよね。ウチのテストは難しいぞ~」
ど、どうしよう。ここのところずっとドタバタしていてすっかり忘れてたよ。
はっ、そういえばヨギが七不思議のことで誘ってきたのって、中間考査の勉強をしたくないとかそんな理由だったっけ。
「あはは、冗談よ。普通に授業を受けていれば赤点取ることはないわよ」
美宮先輩、大袈裟に言っただけか。よかった。思わず胸をなでおろす。
「でも、もし赤点取ったらダンジョン入場禁止だからね。生徒会としては情状酌量なしで厳しくいかせてもらいますよぉ」
ひぃー。上げて下げるのは無しだよー。これは今からでも気合入れて試験勉強しないとだよ、ひよりぃ。
「というわけで、来週から試験勉強期間で部活できないんだよ」
「そっかー。勉強も大事だもんね。じゃあ、潜水服のほうはわたしが進めておくから」
「へ?試験期間終わるまで部活禁止だから、ひよりもここには来れないんじゃ?」
「わたしは一学期の成績良かったら特別許可をもらってダンジョンに入れるんだよー」
うぐっ。ひよりが優秀なのは知っていたけどそこまで成績が良かったとは。
「まいったな。ひよりに勉強教えてもらおうと思ったのに当てが外れたかな……」
思わず心の声が漏れる。
「じゃあ、放課後は図書館でいっしょに勉強する?」
「いいの?」
「うん、コウくんにはいつもお世話になっているし、お返ししないとね」
それはこっちの台詞だよー。神様、仏様、ひより様。よろしくお願いしますー。倉庫番同好会の先輩方の気持ちが少しわかった気がするよ。
次の週から放課後の部活動は禁止、授業でも試験範囲が告げられて教室の雰囲気は中間考査に向けた追い込みムードに変わってきた。せっかく潜水作戦?の準備が始まったと思ったら中断になってしまって残念だよとひよりに溢していたら、潜水服の覗き窓のガラスや金属部分の補修は工房や倉庫番同好会の先輩方ががんばってくれることになっているから大丈夫なんだって。三年生は選択科目が多いから試験期間中もダンジョンに入れるらしい。だからコウくんは自分の勉強にしっかり集中して良い点数を取らなきゃだよーと釘を刺されてしまいました。南無三……。
放課後の部活は禁止だけど朝練は許されているそうだ。ヒコはいつも通り毎朝の日課をこなしてから教室にやってくる。文武両道がモットーらしく、普段からもきちんと勉強をしていて成績はいいほうだと聞いたよ。ボクは自信がないから朝練はしばらく中止。一応、毎晩夜遅くまで勉強しているから登校時間も今までより少し遅めになっている。ヨギはというと……。
「よーっす」
「おはよう。ヨギも最近遅いね。勉強頑張ってるんだ」
「モチのロンよ。こういうのは日ごろの積み重ねが大事だかんな」
はぇー、ヨギもやるときはやるんだね。ちょっと見直したよ。
「でも今の時間だと通勤ラッシュに当たっちゃうから大変だね」
「んなわけねーじゃん、朝から混み混みの電車に乗るとか考えらんないし。むしろ早いのに乗ってる」
「あれ?じゃあ何で最近遅いの?」
「もちろん、信心パワーの強化よ。オレ、毎朝早く家でてこの近所の神社の境内、掃除してんだぜっ」
びしっとサムズアップするヨギとは裏腹にボクの表情はポカンとしていたと思う。
あー、そういえば前に信心パワーを強化して赤点を免れるとか言っていたっけ。
「それって勉強してないってことじゃ……」
「もちろん勉強もやってるさ。母ちゃんに見張られてるしな。ほれこの通り、予想問題集もバッチリだ。おーっと、こいつは見せるわけにはいかないなあ」
「過足進、双子座。引き続き運気は好調。賭事には高打率を期待できる。ただし過信は禁物。堅実な行動を。出口には暗雲が待っている暗示」
「よしっ、来週の中間考査、いける気がしてきた。オレの予想問題集が火を噴くぜぇ~」
大丈夫かな。思わずヒコの顔見ると、やれやれと言った表情をしている。
「それって山を張るだけだろう?ちゃんと範囲を通して勉強しろよ」
「わーってるって。オレには勝利の星がついている~」
浮かれているヨギの横で小声で山根さんに確認する。
「山根さん、出口に暗雲って、幸運期が過ぎたら痛いしっぺ返しがくるってこと?」
「うぃ」
ってことは、ヨギのテスト結果は……押して測るべし。




