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第61話 魔工技術共同機構

 アリバス商会の奥の部屋に通される。さしずめ応接室といったところだ。

 途中でひよりから手早く説明があった。アカデミーというのは生産系の部活を取りまとめている組織で、ダンジョン内の自治を司る生徒会の下部組織ということらしい。つまり、部長であるひよりの上司ってことになるみたい。

「改めまして、魔工技術共同機構アカデミー代表、金今眞秀です。本日、お時間をいただいたのは先日の生徒会の呼び出しの件です」

 そっちの件ね。それなら謝罪される心当たりがある。この人じゃないけれど。

「トラップリシンダーを接収するように生徒会に進言したのは私なんです」

「!」

「あれは少し強力すぎるマジックアイテムです。一つの部活で管理するには危険すぎると判断しました。ダンジョン内の自治を預かる立場としては致し方ない処置だと考えています」

「それについては生徒会長にも納得していることをお伝えしました。気になさらないでください」

「ですが、事前に相談なく話を進めてしまったのは私の落ち度です。不意打ちのような形になり申し訳ありませんでした」

「いえ、そんな。それこそ気になさらないでください。当事者に事前に知らせてしまっては隠蔽工作をされてしまう危険性があることくらい、ボクでもわかります」

「ご理解いただきありがとうございます」

 ほっ、偉い人にこんなに謝られるとかえって落ち着かないよ。これ以上謝られなくてよかった。

「さて、私から魔法道具同好会へ、貴重なマジックアイテムを取り上げてしまったことに対する補填を差し上げたいと思います。何かご希望はございますか?」

「えっ、謝罪していただいた上に代表にそこまでしてもらうなんて、そんな」

「本来、接収に当たっては対価を提供するものなのです。魔工技術共同機構としては構成メンバーに対して生徒会のフォローを行う責任があるのですよ。これは私個人としてではなく、魔工技術共同機構アカデミー代表としての行為とご理解ください」

「……」

 ひよりと目を合わせる。二人とも目をぱちくりさせていた。

「突然補填と言われても戸惑いますよね。そうですね、これなどはどうでしょうか」

 少し砕けた口調で微笑みながら手を上げる。いつの間にか後ろに控えていた受付のお姉さんが見事な細工をされた小箱を持って近づく。そのままテーブルを回り込むとボクたちの前に小箱の蓋を開いて置いた。

「これ……」

 ひよりが驚いた顔で小箱の中の大振りな宝石を見つめる。ただの宝石ではない。魔石だ。これだけ大きいと魔結晶と呼ばれるらしい。

「錬金工房で錬成した最大級の魔結晶です。光系統魔術の術式が施されています」

「これを、ボクらに?」

 シロウトでもわかる。これはレア中のレアなマジックアイテムだ。

 金今代表はコクリとうなずいた。

「トラップリシンダーのレアリティには及びませんが、錬金工房の技術の粋を集め長い時間をかけて生成した逸品です」

「ありがとうございます!ちょうど強力な光源になるものを探していたんです。これならできそうだよ、コウくん!」

「あ、いや、でもいいのかな、こんな高そうな物、タダでもらっちゃって」

無料ただではありませんよ。トラップリシンダーの対価です。これでも足りないくらいなんですよ。申し訳ありません。ですが、私に用意できる最高級のものを提供したつもりです。いかがですか?」

 これ以上遠慮するのは失礼に当たりそうだ。ひよりも喜んでいることだし、このへんで収拾をつけよう。高価といっても現金が掛かっているわけじゃないしね。

「わかりました。ありがたく受け取ります」

「よかった。私は魔法道具同好会の活躍に期待しているのですよ。ファンデルワールスの靴。あれは素晴らしい発明品ですね。あのような新しいものを、今後もどんどん世に送り出してください。アカデミーとしても構成メンバーへの協力は惜しみません」

 魔法道具同好会で発明した品はその製法をアカデミーに報告している。そうすることで希少な技術が失われることを防ぎ、第三者とのトラブルを調停してくれるそうだ。金今代表はひよりから上がっているレポートに目を通しているらしい。

「はい、ありがとうございます」

 そろそろおいとましよう。堅苦しい席は疲れるし。

 ひよりをうながして退席する。去り際に金今代表が声をかけてきた。

「姫野君、誤解しているようだが、最近生徒会がダンジョンの入り口で目を光らせているのは君を監視しているわけではないよ。詳しくは話せないが、別の生徒が問題を起こしていてね。その者を監視しているんだよ。だから君には委縮することなく、今まで通りにダンジョン攻略を楽しんでほしいな」

 振り返ると金今代表が暖かい微笑みを浮かべて見送ってくれていた。

「ありがとうございます。中間考査のあとになると思うけど、がんばります」

 いい人だな。いろいろと気遣いしてくれるし、フォローも手厚い。ちょっとなんでもお見通しっていう感じが引っかかるけれど、それだけ優秀な人なんだろう。生徒会とは険悪になっちゃったけど、アカデミーの人とはうまくやっていけそうだよ。

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