第56話 生徒会定例会(3)
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「その後、砂騒動のほうはどうなっている?」
「砂の売買を購買部の専売とすることで混乱は収束いたしました。買取に関しては会長のご指示通り一定価格で継続しております。現状、在庫超過ですが資金的にも収納スペース的にも余裕はあります。当面は買取方針を継続可能です」
「騒動は下火になりましたが手軽な金策手段として定着しつつあり、継続的に買取の利用があります。ユニーク指標も高めでダンジョン活動の活性化という面では一定の効果を上げていると言えるでしょう」
「非戦闘の金策として生産系部活動の生徒がダンジョンに降りる傾向が強いです。ただ、完全に戦闘無しというわけにはいきません。彼らには火力が出せる戦闘系部活動部員によるサポートが必要と愚考します」
「そうだな。剣術部と魔術部には護衛依頼があったら積極的に引き受けるよう協力を要請しよう」
「戦闘スキルが未熟な生徒の防御力底上げが必要ではないでしょうか。あまり損耗が大きいとトラウマになって足が遠のくリスクがあるかと」
「それなら当面の間、希望者には大盾の無償貸し出しを行うか。期間限定にすれば迷っている生徒を後押しする効果も期待できるだろう。購買部で差配してくれ」
「承知いたしました」
「棚から牡丹餅の策だったが、ダンジョンの活性化に効果的な手段だったようだな」
「ですが会長、当面はキャパシティに問題がないとはいえ、このままでは遠からず無理が出てくるでしょう。砂の在庫を消費する方策も必要かと」
「ガラスの需要はあるんでしょう?だったら、ガラスをじゃんじゃん作ればいいじゃない」
「それができないから困っているのだろう。冶金鍛造研究部からは工房に人手も設備も足りていないからこれ以上の増産は無理だと突っ張れられたじゃないか」
「なら工房に人手の斡旋と設備導入の資金援助をすればいいじゃないのさ」
「うぐ」
頭が固いなーと言わんばかりの唐金の視線に敷町副会長は反論できずに黙り込む。
「具体的にはどのような策が考えられる?」
ここは生徒会の、ひいてはダンジョンの運営について有益な意見を出し合う場だ。互いに攻撃しあう場ではない。妙法院会長はそれを思い出させるように議論を誘導する。
「そうだねぇ。魔工部に出稼ぎに行っていた鍛冶屋の連中はほとんど出戻ったでしょう。そうなると、他からガラス作りに興味がある人を募るか、お金で釣るかだよね」
「直接的な資金投入は公平性に欠ける。現状ではそれは避けるべきだ」
「ならガラス作りに興味がある人で、手が空いてそうな人にお手伝いをお願いするしかないか……美術部なんかどう?」
「ふむ」
「ずっとは無理だろうけど、数週間くらいならガラス作り体験ができるっていえば興味を持ってくれると思うんだよね」
「なるほど。だが短期的な対応では根本的な砂の在庫消費という問題が解決しないぞ」
「だから並行してガラス製品量産のための設備を準備させちゃうんだよ。省力化が図れれば人手が減った後でも少人数で量産が可能になるでしょ?あとはまあ、そういうのが好きな人が徐々に集まればうまく回るようになるんじゃない?」
「最後の部分は根拠としては弱いが、試してみる価値はありそうだな。ガラス量産の省力化は魔法を活用する余地もあるだろう。魔法陣研究部に技術協力をするよう要請してくれ」
「すぐに手配いたします」
笠取が手元の紙にメモを取る。
「例の一年生はどうなっている」
「剣術部の時任はあの事件以降、部活に顔を出していないそうです。我々を避けているようで、ダンジョンの入り口で待ち受けていても姿を見せません。入場記録は確認できるのですが……。いつの間にか入場していつの間にか退場してしまうのです」
誰かが手引きしているとしか思えない。
だが生徒会としては推測だけで金今眞秀を追及することはできない。
「歯がゆいな」
「申し訳ありません。全力を尽くしているのですが」
「いや、君たちを責めているわけではない。引き続き彼の事情聴取に努めてくれ」
「はっ」
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