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第45話 砂の鉱脈

 そこには広くて静謐な空間が広がっていた。

 四方の壁は遠く暗がりになっており、存在を感じさせない。

 視線が中央に立つオベリスクに吸い寄せられる。そこだけは天井に開いた空間から昼間の日差しのような明るく暖かい光が降り注いでいる。

 神々しさを感じさせる構造物にゆっくりと歩いて近づく。魔物の気配はない。

 身長の倍以上の高さにそびえ立つ石柱は光を浴びて白亜に輝き、地下であるにも係わらず見る者に天をめざせと指し示しているように見える。天井の開口部を覗き込んでみたけれど眩しすぎて目を開けていられなかった。ただ、一瞬抜けるような青空が見えた気がする。

 オベリスクに視線を戻すと、石柱の四つの面すべてに水晶のような透明な鉱石で文字とも模様とも判別し難い紋様が描かれているのが見える。さらに下のほうへ視線を送ると、オベリスクの根元を囲んで四角い枠が掘られており、大量の砂で満たされていた。

「ダンゴムシたちはここで砂を取り込んでいたのか」

 手ですくってさらさらと指の間からこぼす。滑らかで少し粗い砂粒だが、よく見るといろんな色の鉱石の粒で構成されている。白い粒、黄色い粒、半透明の粒。黒くて光をきらりと反射して見えるのは雲母だろうか。赤く透明な粒はまさかルビーってことはないよね。

 そうやって観察していると、目の端にドロップ品の存在を示す輝きが見えた。

「砂袋、十袋か」

 ストレージにしまうと、オベリスクの根元のほうにある開口部から砂がさらさらと流れ出てきて空いたスペースを埋める。どうやら、ここは砂を無限に採取できる場所のようだ。

「これはガラス作りがはかどるね。テツさんに教えてあげなきゃ」

 でも、これだけ?

 実はこの砂の中にお宝が埋まっているとか?

 ザクザクと手を入れて一周探ってみたけど特に何もなかった。小石一つない、サラサラの砂場だ。ちょっと拍子抜け。入るのにあんなに苦労したんだから、宝箱の一つくらいは欲しいよね。

 ボクは砂場の調査を切り上げて、暗い奥の壁に目をやった。何かありそう。

 途中の床は多少の砂と埃が覆っているだけで、目を惹く物は何もなかった。

 けれど、正面奥の壁際には鉄の鋲が打たれた蒲鉾かまぼこ型の大きめの木箱が置かれていた。

「あったよ、宝箱!これがなくっちゃ、ダンジョンじゃないよね」

 ダンジョンで初めて見る宝箱である。断言しよう。これを見てテンションの上がらない男子は居ない。

「ムフーッ、鍵は……当然掛かってるよね」

 通常なら残念がるところだけれど、ボクは嬉しさのあまりキモチワルイ顔でにやけてしまう。なぜなら、ボクにはこれがあるからだ。

「トラップリシンダー♪」

 てれってれー。おっと、このネタは二回目だ。

 わくわくしながらエストをチャージ、トラップリシンダーの棒状のパーツを引っ張り出して鍵穴に突っ込む。トラップリシンダーと鍵穴が淡く発光し、解錠の音が響く。

 がちゃり。

 うーん、いい音。

「さて、何がでるかなー?」

 ほくそ笑みながら宝箱を開ける。

 ぎぃ、と軋む音に続いて目に飛び込んできたのは、深紅のビロードの上にうやうやしく置かれた棒状の白い大理石の塊だった。それなりに重みがある。

「なんだこれ?……指っ!」

 思わず取り落としそうになる。石だとわかっていても、人間の体の一部をかたどっている物を見ると、ついビクッてなるよね。

 先端部分は指を揃えた手のひらの形になっていた。宝箱の中身は石像の右腕のようだ。

「これって……」

 部室の女神像の腕だよね、きっと。なんでこんなところに?

 てっきり自然に風化して壊れた石像だと思ってたけれど、こうして一部が隠されているところを見ると、誰かが故意に破壊した可能性もでてくる。

 まあいいや、ダンジョンで入手した品の扱いはひよりに決めてもらう方針に変わりはない。本当に女神様の腕なら、ひよりも喜ぶと思うし。

 そのままストレージに収納する。こういうの、荷物がかさばるときに助かるよね。

「あれ、これは?」

 女神像の腕を収納して空っぽになった宝箱の底に、紙切れが置かれていることに気付いた。手を伸ばして紙片を手に取る。

 紙片はここを訪れた者へのメッセージだった。


 ***


 あとに続く君たちへ。

 ここは偽りの世界。現実は外にある。外にはすべての物がそろっている。

 いたずらに幻想を追うな。夢想が現実となることなどないのだから。

 この先の道は失望と喪失をもたらすものだから。

 君たちが報酬なき挑戦という罠に囚われぬよう、ここを封印する。

 不毛の時間を消費することなく、現実での栄達を願って。


 ***


 他にも何かの紋章のような記号が書かれている。

 なんだろう、このメモ。

 『ここ』はダンジョンのことだよね。『外』っていうのは現実社会のことだろう。ダンジョンはゲームみたいなものだから遊び惚けるなってことかな?

 むう、つまんないこと言うなあ。学校公認なんだから別にいいじゃんね。

 とりあえず紙片を折りたたんでベルトポーチに収納する。


 ほかにも何かないかと広い部屋を一通り確認して回ったけれど空振りだった。何体かダンゴムシを倒してみても砂袋以外のドロップ品は無し。ちょっと残念。

 隠し部屋ならもっとこう、伝説の武器という感じのアイテムが眠ってるんじゃないかと期待したんだけど。やっぱり第三階層は掘りつくされちゃってる感じ?メモがあったってことは先に入った人がいたってことだし。

 第四階層ならお宝、期待できるかな。その分、敵も強いんだろうけど。

 第四階層、ソロで行ってみる?

 それとも、そろそろ誰かと固定パーティ組んだほうがいいんだろうか。うーん。

 考え事をしながら部屋を出たので、通路に出るときに背後でこっそり隠し部屋のほうに入っていく複数の生徒がいることには気づかなかった。


【本日の獲物】

・スケルトン×三体

・ダンジョンクロウラー(ダンゴムシ)×多数

・ダンジョンクロウラー(ヤモリ)×一匹


【入手アイテム】

・片割れの鏡(二個目)

・砂×十五袋

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