第129話 今日が終われば明日が来る
「なんでボクたちが追い出されるのかなぁ、もう。ひよりは気にならないの?」
「わたしは気にしてないよー。女神様の本当の役目が分かって見直されたんだから、喜ばしいことなんじゃない?」
「そりゃそうだけどさ」
「コウタは意外と女々しいところあるよな」
「うっせー、ヘタレのヨギには言われたくないね」
女神像が第五階層入り口へのテレポート・ポイントであることが分かり、うちの部室は生徒会に接収されることになった。引っ越し先は確保されているからひよりは気にしていないみたいだけど、ボクとしてはたった数ヶ月とはいえ、苦楽を共にしたこの部室には思い入れが深い。
「新しい部室は今の三倍の広さだって。道具がたくさん置けるから助かるよー」
ロマンチストは男子のほうで、女子は現実的っていうけど本当みたい。
なら感傷的になるのは『女々しい』ではなく『雄々しい』が正しいのでは?などとひねくれた考えがよぎる。
「最後のボスさ、剣術部の部長がなんでコウタの攻撃が効いたんだって首をかしげてただろ?」
「ああ、確かに。松下部長は敵の体に神話的な加護が掛かっていたんじゃないかって疑っていたな」
ケルト神話の英雄クーフーリンが『予言によって定められた運命の者』以外に殺されないとされていた、みたいな話かな。
「んでさ、オレ、考えたんだよ。何で三人の攻撃だけ通ったのか」
「ほほう」
「その三人ってさ、セイレーン戦で活躍した三人じゃん?」
「うん、そうだね」
「セイレーンって、男子は魅了スキルで無力化されてたじゃん?」
「ふむふむそれで?」
なんだか嫌な流れだな。
「だからさ、ミノタウロスの加護は『男の攻撃はノーダメージ』みたいなヤツだったんじゃないかな」
「ほほう、面白い話だねぇ過足君。そうするとボクはダンジョンの魔物に女子認定されていると言いたいのかな?」
「そうなんだよなあ。あいつら、案外見た目で判断してんじゃね?コウタってほら、じっとしていたら女の子みたいに見えるとき、あんじゃん?」
ゆっくりと椅子から立ち上がり、じゃらりとボーラを垂らす。
「え?あ?ちょっと、コウタ?」
「過足君とは少々話し合いが必要だと思うんだ」
ひゅんひゅんとボーラに回転を加えていく。
「それは話し合いの道具ではないような……」
「口で言って分からない相手に理解してもらうための道具さ。暴力という名の会話をしようじゃないか」
「ひゃーっ、お助け~。むぐぐ」
逃げようとするヨギにボーラをお見舞いする。
たちまち手足と胴体に絡みついてヨギがその場に倒れ込み、芋虫みたいに体をくねらせる。
「いいかい、過足君」
「ひゃい」
「ボ・ク・は、男だーっ」
「ぎゃん!」
まったく、これだけ冒険を重ねても、ボクの見かけはまったく男らしくないらしい。
もっとにじみ出る男臭さがほしいよ。
見てろよー、第五階層どころか、第六階層のその先も一番乗りで踏破してやる。
絶対、誰もが一目を置くような漢になってやるんだーっ!
〔Fin.〕
コウタたちのエピローグです。
魔法道具同好会の部室はお引越しになります。
今まで部屋の中心的存在だった女神像が居なくなるのがちょっと寂しいコウタでした。
作者も、荷物が運び出された後の部室をイメージして、ちょっと寂しいような、晴れがましいような気分になっています。
以前にもあとがきで書いたように、この連載は真のダンジョン攻略物語のプロローグになる話として企画しました。
典型的な「俺たた」エンドですが、自分的には書き切った感がある満足のいくエンディングにたどり着くことが出来ました。
これも皆さんが読み続けてくださったおかげです。
初めてのWeb連載を完走できたことはとてもいい経験になりました。
次の作品も準備中ですので、もしこの物語が気に入ってもらえたなら、次回作もぜひ読んでいただければ思います。
次回作の連載が開始したら、この後書きを更新して紹介させていただきますね。
ではまた!




