第111話 幕間(2)
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リーン、ゴーン
鳴り響く鐘の音に、何事かと緊張が走る会議室にアナウンスが響き渡る。
『封印の門が開放されました。活動領域を拡大します』
がたっ
「なんだ?一体何が起きた?」
椅子を鳴らして立ち上がった敷島副会長が声を上げる。私はかろうじて動揺を抑えて席にとどまる。会議室を見渡すと唐金と目が合った。
早すぎる。姫野荒太が『岩壁の門』に向かったのはここ二、三日という話ではなかったか?
昨日の今日で攻略だと?!ありえない。
「楓ちゃん、管理者モードで称号の取得状況を確認して」
「わかりました」
笠取が手早くステータス画面を開き、何かのコマンドを入力する。
「出ました。『封印門の開放者』。固有称号です。取得者は、過足進」
「あれ?コウタくんじゃないの?」
「姫野荒太……彼は一般称号ですが『境界への挑戦者』を受領しています。こちらは他にも七名ほどが取得していますね」
「へぇ、コウタくんが一番乗りじゃなかったのか。友達に譲ったのかもね」
彼が封印門を攻略したことは間違いなさそうだ。しかし、鍵もなしに一体どうやって?
混乱した頭に先日の報告会での会話がリフレインする。
どのような変化が訪れたとしても、そこで舵取りをするのが私の役目だ。
「すぐに調査隊の編成を。それから、姫野荒太との会談を前倒ししてくれ」
「承知しました」
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「いやはや、おみそれしたよ。まさかこの短期間で本当に封印門を攻略してしまうとは」
影から報告を受けた金今眞秀が手を叩いて褒め称える。
「それにしてもあんな手があったとはねぇ。我々が鍵を複製しようと数十年間に渡り奮闘した努力を、腕力で超えて来たか」
眞秀がしばらく遠い目で黙り込む。
「足りない鍵の数をスピードクライミングで補う、か。フフフ、私では到底思いつけないな。筋肉で問題を解決するという点においては正しく脳筋。だが発想は頭脳的。彼は新しいタイプの脳筋だな。筋肉も進化しているということか。ハハハ」
眞秀の頬に笑みが浮かぶ。それはいつも浮かべているような心の内を読ませないアルカイックスマイルではなく、心底楽し気な表情だった。
「さて、懸案だった障害が取り除かれた。いよいよ仕上げに入るとしよう。アレに連絡をつけてくれ。もっとも、アレは言わなくても勝手に奥へ向かうだろうがね」
再び無機質な笑みをまとった眞秀が影に指示を出す。わずかに了承の首肯をして影の気配が消えた。
***
「で、コウタ。これからどうする?今日はもう残り時間も少ないが」
「んー、帰ったらたぶん生徒会に捕まると思うんだよね」
「確かにな。あれだけ派手な号鐘が鳴ったんだ。大勢に知られているだろう。ガーゴイルはともかく、セイレーンの存在は剣術部としても報告義務がある」
「わー、面倒臭そう」
「説明は称号持ちのヨギに任せるとしても、調査だとかなんだとかでしばらくは立ち入りを制限されるかもしれないし」
「え?オレ?」
「そうだねー。石化の状態異常とか新しい魔物とか、ヨギ君は研究系の部活にも引っ張りだこになると思うよー」
「ちょっ、まっ」
「なんせ、開かないはずの扉を開けた英雄様だもんねぇ。逃げらんないわよねぇ」
「でも、開けたのはコウタのアイデアだし、実際にやってのけたのはボルダリング部の先輩たちだし」
「いやいやー、ご謙遜なさらず。『封印門の開放者』さま」
「過足くんだっけ?あなたの進級のためにみんなに頑張ってもらったんでしょう?あきらめなさい」
「そんなぁ。一矢さんまで……。代償が大きすぎるよぅ」
「とまあ、そんなわけで、このメンツでダンジョンを探索できるのはしばらく先になりそうじゃない?だから今日のうちに行けるところまで行っちゃおうよ」
「そうね。もともと時間切れになる覚悟で帰り支度はしてきたから、下校時間で転送されても問題ないし」
「下校時間なら生徒会に見つかっても帰宅優先で帰してもらえるからね」
「じゃあ、説明要員も決まったことだし、残り時間は未知の領域を探索しましょう。腕がなるわ」
「オレの明日は?明日はどうなるのー?」
がんばれ、ヨギ。見えない明日に戸惑いながら進むのが青春だよ。
おっと、忘れちゃいけない。片割れの鏡を回収しておこう。もしも後から来た誰かが、ガーゴイルの封印を解いてしまったら厄介だからね。
第五章終演、次回からいよいよ最終章、最後の扉編に突入です。
半年に渡った連載も完結間近です。
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