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第108話 門の向こうへ(2)

「じゃあ、行きますよー」

 鏡を背中合わせにして魔法陣を起動し、透明鏡状態にして掲げる。

 ヨギとヒコはボクの背後、ひより、白井さん、一矢さんは念のため門と入り口の中間あたりまで離れて待機してもらってる。

「おう」

「任せろ!」

 間ノ瀬先輩が左の扉、乙川先輩が右の扉に立つ。

「あ、オレ、タイム計ろうっと」

 ヨギが腕時計をもたもたと操作しているのをしり目に、ボクは透明鏡をカチッと石柱の上部にはめ込んだ。扉の石化を解除する魔法陣が浮かび上がり、光の線が扉の縁に沿って伸びていく。

 ゴゴゴゴゴ

 ガーゴイル像の台座が回転する音が鳴り響く。

 一瞬、上を見上げていた先輩方の眉がヒクッと動いたけれど、壁を見据える目は平静を保っている。

 光の線が扉の頭頂部で合体し、真ん中の合わせ目を下降し始める。

 いまだ!

 透明鏡を取り出して、二つに分離する。

「先輩方、お願いします!」

 パシッと二人の差し出した手に鏡を押し付け、受け渡す。

 即座に先輩方が扉に向かって走り出す。

「おっ?えっ?スタート?ちょっと、スタートボタンどれだっけ。あ、こっちか。よし。あれ?」

 壁に取り付いた先輩方は出来の悪い忍者映画のような勢いで岩壁の彫刻を登っていく。

 タッ、タタッ、タタタン、タタッッ

「よっしゃ、俺の勝ちぃッ!」

 間ノ瀬先輩がガッツポーズをかましている間に、ほぼ同時に登り切った乙川先輩がガーゴイル像の眼に片割れの鏡をはめ込む。

「俺の勝ちだ」

「あーっ、ずりぃ!」

 ガーゴイル像の体表が砂岩の灰色から黒曜石の黒へと変わり始める。

「ちょっと、先輩。よそ見してないで早く鏡をはめて!」

 カチリ。

 間ノ瀬先輩の側のガーゴイルにも鏡がはめ込まれる。

 前脚の一部まで黒くなりかけていた体表がすぐに灰色に戻っていく。二体のガーゴイルはそのまま身動きすることなく石像へと姿を変えた。

「ほい、ほいっと。どんなもんよ」

 先輩方が慣れた様子で命綱もなしに危なげなく降りてくる。

「さすがですね」

「凄かったっす。ストップウォッチ押す暇もなかったっス!」

 ヨギが興奮気味に話しかける。

「昔取った杵柄ってやつよ。天辺まで行くのだって十秒切ってたんだ。途中までなら、余裕さ」

「でも勝ったのは俺だ」

「ちっ、うるせー。油断しただけだ。次の大会では俺が勝ぁつ!」

「ふっ」

「お二方とも頑張ってください。応援します」

「しっかし、こんな仕掛けがあったとはねぇ。俺はあんまりダンジョン攻略っていうのは興味ないんだが、それでもワクワクするなあ」

 男メンバー五人は石柱の辺りに固まって黒光りする本来の姿を取り戻した門扉を見上げて語り合っている。

「ホントねー、この向こうってどうなってんの?」

 予想外に、前方から一矢さんの声がした。

「えっ?」

「ちょ、ちょっとぉ」

 いけない、説明を忘れてた。この門の攻略目的は、ヨギの進級のための称号ゲットだったんだ!

「一矢さん、まだ開けないでぇ~っ!」

「えっ?」

 振り向く動作でちょん、と扉に右手が触れる。

 たったそれだけで、何十年も閉ざされていたはずの大扉が、音もなくスルスルと開いていく。

 手ごたえを失った拍子に一矢さんがバランスを崩し、次の一歩を踏み出す。

「だぁーっ」

 ヨギの必死のダッシュも間に合いそうにない。

「なぁにしてんの、よぉーーーっ」

「ぐえっ」

 後ろから全速力で駈けて来た白井さんのドロップキックがヨギの背中に炸裂する。

 人間砲弾と化したヨギがよろめいた一矢さんの頭上を飛び越していく。

 べちゃっ、グキッ。

 顔面から着地したヨギの体が逆エビ反り状態になっている。


 リーン、ゴーン


 どこからともなく、鐘の音が響き渡る。

『封印の門が開放されました。活動領域を拡大します』

「おお」

 と感動するキャリー組。

「それで、ヨギは間に合ったのか?」

 と焦るパーティ組。

「え?なに?どういうこと?」

 と混乱する一矢さん。

「一矢さん、ステータス画面の称号欄を確認して」

 ヨギに駆け寄りながら指示を出す。

「あとでちゃんと説明してよ。えーと、『境界への挑戦者』だって。何これ?」

 ボクの称号欄も確認する。彼女と同じだ。あとはヨギの称号がどうなっているか……。

「ちょっと、あんたしっかりしなさいよ」

 ヨギは顔面と首と背中から赤いエフェクトを散らしている。背中のエフェクトが最も明るく激しい。

「『リペアー・タイム』」

 ひよりがメイスを捧げ持ち、ヨギに柔らかい魔法の光を投げかける。次第にダメージエフェクトが小さくなり、消えた。

「ふぅ。これで大丈夫だよー」

「う……うーん」

「はっ、魔物は?突然オークキングに巨大な棍棒で背中を殴られて……」

 すまなそうにしていた白井さんの表情がこわばる。

「……それは夢だ。気のせいだよ、ヨギ」

「ああ、ヒコ、コウタ。なんか知らんけどありがとう。助かったよ」

「ひよりちゃんが治してくれたんだ。それより、ヨギ。称号欄を確認してくれ」

「ん、ああ。えーと……。『封印門の開放者』?だって」

「よっし、やったな、コウタ」

「うん、ありがとう、白井さん。白井さんのフォローのおかげだ」

「まあ、ね。ちょっとやりすぎたわ、ごめん」

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