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第107話 門の向こうへ(1)

「えーと、では紹介しますね。こちら、ボルダリング部二年生、間ノ瀬先輩と乙川先輩」

「はい、こんにちは。女子が多いパーティだね。さすが姫野君」

「……」

「こっちのチャラいほうが間ノ瀬先輩で、寡黙なほうが乙川先輩です」

「おいおい、チャラいってどういう紹介なのよ?まあ、あってるけどね」

「どもっす」

「よろしくお願いします」

 ヒコは同じ闘技場エリアで練習しているからか、面識があるようだ。他のみんなは戸惑いつつ挨拶を返している。

「先輩たちは『岩壁の門』攻略作戦のかなめです。途中の戦闘は基本的には参加せず、ボクたちでキャリーする形になります」

「頼りにしているよ、みんな」

「うぃっす」

「ちょっと。あたしの紹介は?」

「いまからするところ。あー、彼女はA組の一矢いちやさん。弓術部なんだ。今回から新しくパーティメンバーに入ってもらうことになりました」

「姫野君に勧誘されて参加しました、一矢いちや七香ななかです。よろしくー」

「ほえー、弓術部か。空中戦対策ってわけだ」

「あら、空中だけじゃないわよ。乱戦だって弓は使えるわ。試しに後ろから援護してあげよっか?」

「あー、いえ、はい、結構です」

「信用ないわね。まあいいわ。あとで魅せてあげる」

 一矢さんがニヤリと笑う。

「ちょっと」

 小さい声で白井さんにこいこい、と呼ばれる。

「どういうこと?新メンバーなんて聞いてないわよ?」

「この前の遠征で思ったんだけどさ、この先敵の攻撃パターンが変わってくると思うんだ。だから攻撃手段は多いほうがいいと思うんだよね」

「それはわかるけど、このタイミングって……」

「コウくん、あかりちゃんは空の敵に無力だって悩んでるんだよ?そんなときに弓使いをスカウトしてくるなんて、デリカシーなさすぎだよー」

「あー、いや、そんなつもりは……。『岩壁の門』の攻略に関しては一矢さんには見ててもらうだけの予定なんだ。一矢さんにはそのあとの探索での助力を期待して参加をお願いしたんだよ。門から先は何が出るかわからない。もちろん、白井さんの対人戦闘スキルにも期待しているから」

「ふうん、じゃあ、今日のトライアルは彼女も見学だけなのね」

 釈然としない表情のまま、とりあえず引いてくれた。うー、危ない危ない。ずっとソロだったからパーティ運営のノウハウなんて持ち合わせてないよー。誰か代わってくれー。

「えー、というわけで、ちょっと大人数のパーティ編成ですが、基本は前回と同じ五人パーティで戦闘をこなして、あとの三人には少し引いた位置で待機してもらいます。一矢さんには離れた位置から援護してもらう可能性もありますが、基本は先輩方の護衛をお願いします」

「わかったわ」

「で、肝心の『岩壁の門』はどうすんだよ?」

「今から説明するって。えーと、今日の作戦はこうです……」

 もう。ヨギといい、一矢さんといい、せっかちなんだよ。それともボクの説明の仕方が悪いのかな。はぁ。


 ダンジョンを降りて実際の遠征になると指揮はヒコが取ってくれるので助かる。今日も途中のちょっとしたエンカウントをそつなくこなし、大したダメージもなくスライムのところまでたどり着いた。

「だいぶ元に戻っているね」

 スライムは九割がた体積を戻している。人ひとりなら何とか通り抜けられる感じだ。

「材料に欲しいから、ちょっと狩っていこうよ」

 ひよりのリクエストでスライム炙り大会が始まる。

「はい、このへんもういいよー」

「ほいっと」

「ヒコくん、ありがとー。次、コウくん、このへんに当てて」

「はいよー」

 ボクとヨギでUVライトを照射し、ヒコが切り出すという作業を繰り返す。切り取ってアイテム化したスライムの断片はひよりがストレージに収納する。あかりは一応、周囲の警戒役だ。

 ボクたちの流れるようなスライム刈り取り作業にボルダリング部の先輩たちも一矢さんも目を丸くしている。

「なんだかあなたたちって、変わっているわね。それとも姫野君の影響かしら」

 そうかな?自覚はないけど。いまやっている作業はどちらかというと魔法道具同好会の活動だから、変わっているのは同好会のせいかも。ってことはひよりのせい?

「ウチの変わり者担当はこいつだけどね」

「ちょいちょいー。何でオレに飛び火するの?」

 スライムを片付けて先へ進む。途中、一度エンカウントしたものの、前ほどの大所帯ではないのであっさりといちターンで倒しきる。

 そして、『岩壁の門』に到着した。


「久しぶりだなあ」

 門を見上げながら間ノ瀬先輩が感慨深げに息を吐く。

「ああ」

 お、乙川先輩がしゃべった。

「去年はよく来たんだよねー。二年に上がってからは大会のほうの壁にかかりっきりで、すっかり来なくなっちゃったけどね」

「ボルダリング部ってやっぱりこの壁で練習するんですか?」

「いや。俺たち、部活に入る前からここを登ってたんだよね。最初はどっちが高く登れるかを競っていて、その次、どっちが先に天辺まで登るかを競って、な」

「ああ」

 乙川先輩が相槌を打つ。

「天辺まで登れるようになったら今度はどっちが速く登れるかを競うようになったんだ。で、それも甲乙つけがたくなってきたころ、噂を聞きつけた今の部長がボルダリング部にスカウトに来たっていうわけ」

「なるほど。生粋のスピードクライマーってわけですね」

「ああ、だから今日の作戦も任せろ」

「途中のガーゴイル像までとはいえ、十秒しかないんですけど、大丈夫ですか?」

「問題ない」

「俺たちを誰だと思ってんだ?『御陵森のスピードスターズ』だぜ?」

「それ、ダサいからやめろ」

 おお、乙川先輩が三語以上喋ってる。先輩たちも久しぶりの挑戦にテンションが上がっているみたいだね。

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