第106話 スライム素材
今日はコウくんは岩壁の門の攻略方法を探るために出かけていて別行動だ。攻略方法が見つかるまではパーティ活動は一時中断だって。わたしは昨日手に入れたスライム素材がモノ作りに活かせないかいろいろと試しているところだ。
スライムから切り出した素材はどれも紫外線を当てた部分が硬化していて、そこから少しずつ柔らかい部分がくっついている。ちょっと違うけれど切ったメロンのようなイメージだ。
硬い革の部分のすぐ内側を薄く削って板状にしたものは、曲げると柔らかく曲がるけれどしばらく置いておくと元の形に戻る。
もう少し内側は、ぐにぐにとした感触で指で押しつぶすと変形するグミのような素材になる。
さらに内側になるとどんどん粘度が下がって、一番内側の部分は液状に滴り落ちる感じだ。
液状の部分はスライムの性質を残しているようで、硬い素材の上に垂らすと表面を少し溶かす様子が観察できた。だけど生きているスライムほど急激な変化ではないし、ストレージに収納しておけば反応は止まるので、机を溶かして穴が開いてしまうようなことはなさそうだ。ちょっと取り扱いに注意が必要だけど。
液体や柔らかい状態のスライム素材に紫外線を当てると硬化していく。想像したとおり、柔らかい状態で形状を整えて、仕上げに紫外線を一分ほど照射するとこで様々な形状のパーツが形成できそうだ。これはなかなか楽しい。
「ふんふふんふふーん」
「ご機嫌なようね。なに作ってるの?」
今日は遠征はないけれど、あかりちゃんが部室に遊びに来てくれている。ヨギくんはあかりちゃんといっしょだったけれど、ちょっと用事があるって言ってどこかに行ってしまった。
「えへへー。ちょっと手を出してー」
あかりちゃんが差し出した左手を裏返す。
「じっとしててね」
何するんだろう、と疑問を浮かべるあかりちゃんの腕に板状に成形したスライム素材を巻き付ける。それをぎゅっ、ぎゅっと腕に押し付けて型を取っていく。腕に沿った形状に変形したスライム素材にUVライトを当てて形を定着させる。
「はい、いいよー」
「ねえ、これなに?何となくわかるけど、もしかして防具を作ってくれているの?」
「うん、正解~。まだ試行錯誤中だからうまくいくかわからないけどね。硬化したスライム素材ってヒコくんの剣を弾いてたでしょ?だから軽くて丈夫な防刃プロテクターが作れないかなーって思ったの」
「なるほどねぇ。だけどわたし、基本的には素手で戦うからあまり身に着けるのは得意じゃないよ?」
「うん。だからね。少しずつ削ったり盛ったりしてしっくりくる形に整えられないかなって思ったんだ。革製品だとそこまで細かい調整はできないけど、スライム素材なら微調整が簡単そうだからね。お願い、あかりちゃん。モデルになってくれない?」
「もちろんよ。何すればいい?」
「完全に硬化させる前に形とか厚みとかを調整するから、動きにくいところがないか教えて」
「わかったわ。そうね、肘関節に近いほうの内側は薄めのほうがいいわ。構えたときに二の腕に当たらないように少し削ってほしいかな」
「ここね。そっか、力を入れると筋肉が変形するからそこも考慮しないとだね」
「やーね、筋肉ダルマみたいで」
「そんなことないよー。柔らかくてすべすべで。綺麗な肌を傷つけちゃ防具失格だからしっかり作り込まなきゃ。こう曲げたらここが当たっちゃうね」
「きゃ、ちょっと」
「だめだめ、いま動かないで、印付けるから」
ってフィッティングをやっていたら、部室のドアがガチャリと開いた。
「ただいまー。オレさー、今日配信のゲーム、ダウンロードしたいからちょっと先に帰る……」
ヨギくんが戻ってきたみたい。
「お帰り―」
わたしは普通に返事を返したけれど、ヨギくんは固まったまま部室に入ってこない。
「この馬鹿、なに見てんのよ。さっさと帰れぇーっ!」
顔を真っ赤にしたあかりちゃんがヨギ君のカバンを投げつけた。
「あうっ、スンマセンっしたー」
顔面にヒットしたカバンを抱えて、ヨギくんは慌ただしく走り去っていった。




