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Phase.6 最初の村

「はぁ、はぁ、はぁ、やっと……出れた……」

 

 立ちはだかるモンスターを倒しまくること数時間、俺は遂に森の出口へと辿り着いた。

 既に空は暗くなっているが、視界の先には広い平原とその向こうに町の門と思われる大きな壁が見える。

 広がる光景を前に安心感からか俺の目元には涙が浮かび上がっていた。

 度重なる戦闘によって疲弊した体。何度もぐちゃぐちゃになった精神。装備していた斧は砕け、今は持ち手の木の棒だけとなっている。

 レベルも9まで上がったが精神的限界を迎え、俺はふらふらと千鳥足な状態で町のほうへと歩いて行く。

 徐々に、徐々に、町の門へ距離を詰める。

 体力はまだ半分くらいある。……けど、やっぱり無理だ。

 そう感じた俺は妙な浮遊感に襲われた直後、その体が勢いよく地面に倒れた。

 ……痛って〜!思いっきり転けた。

 地面に倒れた時の衝撃が体全体に響く。

 早く立たないと、……だめだ。力が入らね〜

 ステータス上の数値より精神面が諦めてしまった。

 もういいや。このまま寝よう。

 俺は目的地である町を前にして、倒れたままその瞼を閉じることにした。

 平原にもモンスターはいるかもしれない。もしかしたら夜行性のモンスターに寝込みを襲われるかもしれない。けどいいや。

 痛いのは嫌だけど。諦め状態のこの状態でどうこう出来るとは自分で思えない。

 

「さらば異世界。神様、生まれ変われるならまた現代でお願いします」

 

 死に際の神頼み。そんな世迷言を最後に俺の意識は途切れていった。


 スゥ〜、スゥ〜、スゥ、……ん?

 重たかった瞼がゆっくりと上がる。パチパチと繰り返し、その目に映る光景を鮮明にする。

 目の前の広がるのは、淡いオレンジ色の光で照らされた見慣れぬ木製の屋根。

 あれ?俺、平原でぶっ倒れなかったけ?何で建物の中にいるんだ?

 ベッドの上?毛布がふかふかだ〜。……違う。そうじゃない。ここは何処だ?

 現状を理解しようと寝たままの姿勢で辺りに目を配る。

 移り変わる視界。あるところで俺の目は動きを止めた。

 俺が横になっているベッドの傍に彼女がいた。短く整えられた綺麗な黒髪。寝巻き姿に羽織り物を一枚。片目にはメガネ?のようなレンズを掛け、両手で持つ本に彼女はその視線を集中させている。

 こちらからの視線に気づいたのか?

 本から視線を外す彼女の目と彼女を見る俺の目が合う。

 視線の合う彼女は、優しげな微笑みを見せる。

 微笑む彼女の可愛さに俺の思考が一時停止する。そして再度動き出し結論がでた。ここは……天国なんだと。

 目が覚めて、目の前にこんな綺麗な子がいるんだ。天国なんだよここは!……うん?てことは俺、死んだのか?

 道端で寝てたんだ。モンスターどもに襲われて当然だよな。

 うんうん。と頷きながら俺は頭で考えていることに自問自答する。

 

「あの〜」

 

「……はい!」

 

 自問自答する俺の耳に彼女からの呼びかけがかかる。

 

「大丈夫ですか?何処か痛いところなどはありませんか?」

 

 ベッドに寝転がる俺を覗き込むようにして近づく彼女。手で自分の耳に掛かって髪を避けつつ俺からの返事を待っている。

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

「本当ですか?痛いところがあったら無理せず言ってくださいね」

 

 そう返す俺の言葉に彼女は疑いつつも覗き込むようにその綺麗な顔を近づけてくる。

 

「でも良かった〜。村の門前で貴方を見つけたときはビックリしたよ!」

 

「え、君が助けてくれたの!?」

 

「ええ、と言ってもここまで運んだのは村の人たちだけどね」

 

「そうなんだ。助けてくれてありがとう。俺は鋼大(こうた)千場(せんば)鋼大(こうた)


「あたしはアルマ・バーミリオン。よろしくコータ!」


「よろしく!アルマ」


 助けてくれた彼女の名を聞いたからか?直後、俺の体は急に重くなったようにふらつく。


「大丈夫!?」


「うん、大丈夫大丈夫」


 安心したからだろう。無意識に脳が体に休むよう指示を出したんだ。


「今日はもう休んで。朝になったらまたお話しましょ。眠るまで一緒にいてあげる」


  そう言いつつアルマは俺をベッドへ寝かし、傍の椅子に腰掛け、俺のことを見守る。


「ありがとうアルマ。おやすみ」


  寝る前にもう一度感謝の気持ちをアルマへ伝え、俺は再び瞼を閉じる。さっきと違って今度は安心して夢の中へと落ちていく。

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