Phase.4 異世界に来たのならこの言葉を唱えたい
「ステータスオープン!」
異世界ものの作品とかでは定番のこの言葉。試しに口にしてみると、
ブオン!
ビーム音ようなそんな音ともに俺の目の前に薄水色の画面が一枚展開した。
「マジかよ。本当に出てきた」
展開している画面を前に冗談半分で唱えた俺は思わず反応を零す。
画面には自分の名前や様々なデータが表示されている。「へ〜」と零しつつ俺は自分のそのステータスを順に確認していく。
【体力一三八〇/一四〇〇】【攻撃力一四〇】【防御力一四〇】【賢さ三二〇〇】
「ん〜……強いのか?これ」
並ぶ四つの項目とそれぞれの数値に首を傾げる。も画面にあるレベル4の表示に目がいく。
レベル4?なんでレベル1じゃないんだ。ログとかないのか?……あ、あった。
自分のステータスに疑問を抱きつつ適当に画面をタップするとステータス上昇におけるログを確認することができた。
ゴブリンを6体討伐。合計経験値六〇〇獲得。レベルが1から4に上昇しました。各ステータスが上昇しました。スキルポイントを十二獲得しました。
ログにはそれらしき事がズラッと記載されていた。
え、!?倒したのウルガノンなのに俺の経験値になってる。
記録されていること一喜一憂しつつその後も俺は、画面に記載されている自分のデータを確認した。
データを確認した事で一番分かったのは、俺の持つ職業が召喚士ということだ。
召喚士。俺の場合、腰のケースに閉まってあるデッキからモンスターを自由に呼び出したり、魔法を唱えることができるらしい。
他にもスキルポイントとか。色々あったけどどういうものなのか分からなかったから今は一旦無視することにした。
粗方の確認を終えた俺が次に目をつけたのは、辺りに散らばっているゴブリンたちの残骸だ。
試しにゴブリンが持っていた破損していない石の斧を手に取ると、さっきと似たようにステータスを表示する画面が目の前に小さく展開された。
【石の斧】攻撃値一二〇、スキル:無し
へぇ〜、武器にもちゃんと数値があるのか。スキル欄があるってことはスキルのある武器もあるのか?それとも後から付与できるのか?……う〜ん、わかんね〜。チュートリアルかヘルプでもあれば良いんだけど
出てきた画面に考えていると、目に映る攻撃値一二〇に俺はある事を理解する。
「ステータス!」
俺はもう一度さっきの画面を展開し、自分のステータスの数値を確認した。
体力一三八〇/一四〇〇 防御力一四〇
今のレベルが4で、ステータスがこれ……
自分のステータスと斧のステータスを見比べる中、空いている片手で傷ついた頬をなぞる。
頬をなぞった手には僅かな血がついていた。
頬の傷はゴブリンと遭遇した時、投げられた斧が掠めたモノだ。たぶんだが、レベル1の俺の防御力が一〇〇で攻撃力一二〇の斧が当たったから攻撃力から防御力を引いた二〇が体力から減ったってことだよな。……ヤバ!
頭の中で計算した結果に思わずビックリし、その手から斧を落とす。
たった二〇ダメージ。掠めただけだが、正しいダメージが俺の体力から減っている。
俺はその事実に動揺しながら傍で散らばっているゴブリンの残骸のステータスを確認する。
【ミニゴブリン】種族:魔族 攻撃力四〇〇
目に留まったゴブリンの攻撃値に驚愕する俺は思わず吐きそうになる。
「攻撃力四〇〇って、斧の数値足したら五二〇!?」
総攻撃力五二〇
考えている仮定が合っていれば、俺は死んでいたのかもしれない。
レベル1の体力が一〇〇〇だった場合、防御力を引いたゴブリンたちの攻撃力は四二〇。つまり三回攻撃を喰らっていたら……
そんなもう一つの結果を予測した時、俺は体は我慢できず腹にあった物をその口から吐き出していた。
辺りに散らばっているゴブリンの残骸と俺の吐瀉物の混じった臭いが鼻と精神を汚す。
一気に気分が悪くなった俺は、近くの木に背中を預けることにした。
あくまで仮定の話だ。たった三回の攻撃で死ぬ訳がない。たぶん計算の間違いだ。
不安定な精神を落ち着かせようと、俺は自己暗示をかける。
汚れた口元をハンカチで拭き取り、飲み掛けのペットボトルに入っている水で喉を洗い流す。
……やばい。……マジで辛い。
木々の隙間から差し込む陽光を遮るよう俺は自分の額を手で覆う。
それから精神が回復するまでの僅かな時間、不用心にも俺は自分の意思でその視界を閉じていた。