Phase.3 それは言われるがままに主の敵を蹂躙する。
森から空へ煙が上がる。
手元から放たれた閃光は消え、怒号が残す煙が晴れる。
守るよう頭上に構えていた右腕を下ろし、僕はゆっくりと恐る恐る瞼を開く。
鮮明になる視界。目の前には巨大な壁が!……いや、これは壁じゃない。
壁に見えるそれは何かの胴体部で、それはヒトのように地面に二つの足をつけ、力強く俺の前の立っていた。
人工的な……、金属のような……、それは差し込まれる僅かな陽光を反射する体を持っている。
ドゴーン‼︎
直後、俺の耳を全身を震わせる轟音が響く。その音にビックリしたと思えば、それの影から何かが地面に転がった。
転がったものに視線を移す。が、それが何のか分かった時、俺は思わず身を後退させる動きをした。
地面に転がるもの。それはゴブリンの頭部だった。
体を首を少し動かし目の前に立つそれの向こう側を確認する。
ちょうど、頭部を失ったゴブリンの肉体がゆっくりと倒れるところを見た。
一体のゴブリンがやられたことに離れたところにいるゴブリンたちは動揺した様子。けれど臆さずなのか?集団の中から一体のゴブリンが「キシャー」と威嚇とともにそれへ飛びかかり、持っている斧を振りかざした。しかし……
ガッキーン!
金属音が鳴ると何かの破片が地面に散らばった。散らばったそれは石の破片。ゴブリンが振りかざした斧のだったものだ。
それはゴブリンの攻撃を難なく防ぐと、その手でゴブリンの足を掴み。宙ぶらりんになるゴブリン目掛けて思いっきりのパンチを放つ。
パンチをもろに受けたゴブリンはその衝撃とともに後方へと吹き飛ぶ。
それの手に飛んでったゴブリンの足が残る。
あっという間に二体の仲間がやられたゴブリンたち。ヤケクソに斧を投げるもそれは自身の肩に備えている砲塔で迎撃する。
砲撃は斧を貫通しそれを投げたゴブリンを撃ち抜く。
三体目がやられ流石に理解したのか?ゴブリンたちは敵わない。勝てないと、恐怖・絶望の表情を浮かべては、一体また一体と背を向け走り去っていく。
逃げ出すゴブリンに俺はホッと胸を撫で下ろす。恐怖は去るひとまずは安心だ。そう心の中で思うと、
ドゴーン‼︎
再びあの砲撃音が響く。
耳を押さえつつ視線を音のほうへ移すとそれは逃げるゴブリンを撃ち殺していた。
放たれる砲撃にゴブリンたちの体が次々に弾ける。飛び散るそれらはまるで熟した果実を地面に叩きつけるようなものだった。
そして一分とたたずそれは襲ってきた全てのゴブリンを倒した。辺りにはゴブリンの残骸がそこらかしこに散乱している。
ここまでする必要があるのか?目の前の惨状にそうな言葉が一番に上る。しかしその言葉は一秒もかからずひっくり返る。
「こいつら全員、やっつけてくれー」
数分前、俺は隣に立つそれにそう言った。
隣に立つそれ。今は行動を終え制止した状態だ。
【砲機人ウルガノン】
真っ黒な鋼の装甲。両肩に備えている二問の砲身。微動だにせず仁王立ちの構えをしている。
その姿を横目で見ていると、ウルガノンは急な輝きを放つとその姿を小さくやがて一枚のカードに戻る。
カードに戻ったウルガノンがゆっくりと俺の前に降りてくる。
俺は目の前の出来事に戸惑いながらもそのカードを掴み。カードの両面を確認する。
裏面はカードゲームのタイトルロゴが、表面はカードゲームにおけるウルガノンの情報・特殊能力が記載されている。表面を確認したが、特に気になるようなことは無かった。元のカードそのままだ。
カードに描かれているウルガノンのイラストを見つつもその目を辺りに散らばっている残骸に向ける。
実体化したカード、漫画やゲームで見るゴブリン、それだけで答えは自ずと頭にあった。
ここは日本じゃない。では、何処か名前も知らない国なのか?いや違う。
直感的に理解する。
ここは俺がいた世界じゃない。漫画やゲームで聞く異世界ってやつだ。
空から僅かに陽光が差すこの森の中で俺は自分の現状を始めて理解する。
「俺は……どうすれば良いんだ?」